研究課題/領域番号 |
22K04285
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22020:構造工学および地震工学関連
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
小嶋 啓介 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (40205381)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 常時微動 / 回転速度 / 6成分観測 / 表面波 / 位相速度 / 強震動 |
研究開始時の研究の概要 |
従来の常時微動観測で対象としてきた並進3成分に,回転3成分を合わせた6成分を観測することにより,①地盤情報収集の質と量が飛躍的に高まることを示し,②6成分展開アレイ観測情報から,Love波とRayleigh波の伝播速度およびパワー比などを効率的に算出する方法を導出するとともに,③表面波位相速度や並進・回転成分のH/Vスペクトルに基づいて,地下構造を精度良く推定する方法を提案する.さらに④提案手法を福井県若狭地方や切盛造成地等に適用し,信頼性と解像度が高い速度構造・地盤特性を算出し,地震・地盤災害ハザード情報を公開し,地域住民の安心・安全性の向上に資することを目指す.
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研究実績の概要 |
従来の常時微動観測は並進3成分を対象に行われ,単点3成分観測に基づくH/Vスペクトルや,アレイ観測によるRayleigh波位相速度などを算出し,地下構造の推定などに活用されてきた.申請研究では,並進3成分に,回転3成分を加えた6成分観測の有効性と効率的な活用法の提案と実証に向けて取り組んでいる. 回転成分の観測方法として,近接した複数の観測点で並進成分を観測し,その空間微分から間接的に求める方法と,直接観測する方法がある.2022年度には,三角形および十字型に並進計を配置し,その中心に最新の回転速度計を配置し,微動,強震および加振機による振動を観測し,両手法による回転速度成分を比較した.その結果,加振機および地震を対象とした観測では,回転速度計は十分な性能を有しているが,微動レベルではノイズの影響が大きいこと,空間微分で回転速度を算出する場合は,対象とする波長を考慮した間隔で配置する必代があることなどが確認できた. モデル地盤によるシミュレーション波を用いたパラメータ解析を行った結果,水平軸周りの回転速度に基づいて到来方向を求められ,水平方向並進成分からRayleigh波とLove波を分離し,並進加速度と回転速度の比をとることによって,Rayleigh波とLove波の位相速度を求められることを確認した.また,福井大学文京キャンパスに,並進計と回転計を一組とする6成分観測点を5か所設置し,強震動を対象とする観測網を構築し,観測を継続的に実施し,能登半島付近の地震などの観測記録を蓄積している.強震動のうち表面波が卓越していると思われる後続波部分を対象として,上記の手法を適用した結果,既存資料から明らかな表面波特性と矛盾のない結果が得られ,提案法の実用化が進展した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究と過去の科研の支援を受け,4台の回転速度計とデータロガーなどの整備を行った.整備した回転速度計であるeentech社製R-2型三軸回転速度計について,カタログ値である10の-7~8乗rad/sよいう性能を確認するため,同機種と5台の並進速度計による空間微分から得られる回転速度を比較した結果,一部を除いて10の-6rad/s以下では,十分な一致が認められないことが確認された.この影響から,常時微動に起因するレベルの回転速度については,加点速度計のみでは適用が難しいことが明らかとなり,対象を強震動と起振機や交通振動などの近接振動に変更せざるを得ない状況となった. 一方,モデル地盤によるシミュレーション波を用いて,6成分を用いた表面波特性の推定法の検証を行った.すなわち,周波数ごとの振幅と速度を設定し,多様な震源位置から入射させたRayleigh波とLove波のシミュレーション波形から,成分ごとの振幅と速度を再現できることを示した.また,福井大学文京キャンパスで強震動観測を継続し,6成分観測データを蓄積するとともに,その分析から,既存情報と矛盾のないRayleigh波速度が算出できることを確認し,論文作成を行い投稿し,査読意見を反映した修正を行い再提出したが不採択となり,内容の見直しなどの対応が必要となった.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度も引き続き,キャンパス内での6成分アレイ観測を継続しており,5月5日の能登半島でのM=6.5の地震と引き続き発生している群発地震の記録を蓄積しつつある.これらの記録について,非定常パワースペクトル分析などを通して,表面波が卓越する時間帯を特定し,提案している分析方法を適用し,伝播方向や位相速度の算出を試み,既存のPS検層などによる地盤構造に基づく表面波の理論値との比較などを通し,手法の検証を行う.これらの分析を通して一定の知見を得られており,地盤工学シンポジウムや土木学会での投稿と発表を予定している. 一方常時微動を対象とする場合には,昨年度までの検証結果から,可搬型の回転速度計では十分な精度で観測することが難しいことが明らかとなったため,並進計のL字や十字型配置と空間微分を用いた解析を中心に実施する.また,回転速度計と並進速度計による単点6成分観測については,加振機を併用する現場観測を行い,従来のSPAC法などとの比較から,その有効性などを検討する. 2023年度上半期には,提案手法を福井県内の地震被害が懸念される若狭地域等の平野域に適用し,地下構造モデルの修正等に活用するとともに,宅地造成地などの水平堆積が想定できない現場にも適用し,適用性の検討を行う.以上の研究成果を広く公表し地域の地震防災の精度と信頼性向上に資するよう取り組む.
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