研究課題/領域番号 |
22K04290
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22020:構造工学および地震工学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
齊藤 準平 日本大学, 理工学部, 准教授 (20349955)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 塩分浸透 / 見掛けの拡散係数 / 細孔径分布 / 応力強度比 / 圧縮応力 / 弾性限度 / 拡散係数 |
研究開始時の研究の概要 |
コンクリート構造物の長期使用には,鋼材腐食の原因である部材内に浸透する塩分量の将来予測とそれに基づく的確な維持管理が重要となる。本研究は,現行予測式に圧縮応力付与の影響を考慮し,予測精度の向上を目指す。そのために,実験的検討によって,(1)圧縮応力作用下のコンクリートの応力付与条件と拡散係数の定量的関係の解明,(2)その関係の現行予測式への考慮による精度の向上,について計画的に研究する。本結果により,塩分濃度予測式の精度向上を遂げることは,コンクリート構造物の適切な維持管理計画の立案と長寿命化に貢献できるものと期待する。
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研究実績の概要 |
全研究期間における本研究の目的は,圧縮応力付与条件の違いが拡散係数にどのような変化を及ぼすのかを解明し,応力付与条件と拡散係数との定量的関係を見出すことである。当該目的の範囲内において,得られた定量的関係の要因,材料・配合条件の違いの影響,繰返し付与の影響などを解明するための研究へ展開する。 令和5年度は,令和4年度の成果にある,弾性限度を超えても弾性限度付近では塩分浸透抵抗性は高く応力強度比=0.50程度では無付与状態と同程度になること,それ以上になると応力付与が塩分浸透を加速させることを踏まえ,高応力付与時の付与応力の大きさの違いによって塩分浸透特性に不利に働く理由を解明することに着手した。試験は応力付与後30日経過後に水銀圧入式ポロシメータを用いた細孔径分布の計測を行った。応力強度比は応力付与状態0.45,0.55,0.65,0.75の4条件,比較用に設定した応力強度比=0(応力無付与状態)の1条件とした。 試験により得られた成果は,以下のとおりである。応力無付与状態から応力付与状態への変化に伴う細孔容積の変化は,すべての付与応力で約100nm~5μmの範囲での増加が顕著となった。また,付与応力が大きくなるとこの増加量が大きくなる傾向が認められた。さらに応力強度比=0.3付近から100nm~5μmの範囲の細孔容積が増加すること,そこを基点として応力強度比の増加に伴いその細孔容積が増加することが明らかとなった。加えて,3次元X線CTによる内部空隙状況や損傷状況を観察し,応力強度比が高い場合には,内部損傷が認められた。以上の試験結果より,高応力作用時の拡散係数を増加させている理由として内部空隙構造(約100nm~5μmの範囲)の変化や内部損傷が関係している可能性が高いこと見出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度の実績として,圧縮応力(低~高応力)の継続付与が拡散係数に及ぼす影響を明らかにする研究を実施した。その結果,試験はトラブルが発生することなく計画通り順調に行うことができ,想定通りの良好で妥当な成果が得られた。具体的には,弾性限度内の応力付与は拡散係数に良好な影響を及ぼし,応力の増加に伴い拡散係数が低下し塩分浸透抵抗性が向上することがわかった。弾性限度を超えると応力の増加に伴い拡散係数が増加し塩分浸透抵抗性が低下することがわかった。 令和5年度は,令和4年度に研究計画に追加して行った高応力付与による拡散係数の変化の要因として内部組織の空隙の変化や微細ひび割れの発生があることが見出されたことを受け,継続して研究を行った。具体的には,応力付与後のコンクリートに対する水銀圧入ポロシメータによる細孔径分布の取得や3次元X線CTによる内部組織の観察などへの試験条件を充実させ,高応力付与時の付与応力の大きさの違いによって塩分浸透特性に不利に働く理由を解明することに着手した。その結果,高応力作用時の拡散係数を増加させている理由として内部空隙構造(約100nm~5μmの範囲)の変化や内部損傷(微細ひび割れ)が関係している可能性が高いことを見出すことができた。さらに,申請者の既往研究結果を用いてひび割れ発生荷重(Specific Crack Area)の数値解析から内部損傷に関する検討を加えた。その結果,弾性限度付近においてひび割れが発生していることを改めて見出すことができた。 以上より,現在の進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は,応力付与による拡散係数が変化の要因として内部組織の空隙の変化や微細ひび割れの発生の追求を行い,有益な研究成果が得られた。令和6年度は,令和4,5年度に行ってきた研究結果を踏まえ,その結果における材料の適用範囲を見出すことを目的とした研究に発展させる予定である。具体的には,令和4,5年度に用いた供試体の材料がモルタルであったことから,コンクリートにおいても同様の結果が得られるかの検証,また違う結果になった場合はその理由の解明を行う。令和4,5年度の結果と比較するために,令和4,5年度に用いた供試体寸法を同一とし,材料強度も同一になるようにする。令和6年度の供試体の材料には,コンクリートの定義における粗骨材(寸法5mm以上)を用いることとする。 令和6年度の研究内容を改めて整理すると,コンクリートに対する応力強度比(低~高圧縮応力)と拡散係数の定量的関係の解明である。具体的な試験条件は,応力強度比=0.15,0.30,0.45,0.6,0.75の5条件と比較用に設定した応力強度比=0の1条件に対し,令和4,5年に実施した同じ,拡散係数(塩水浸せき試験),細孔径分布(水銀ポロシメータ)を得るための試験を実施する。 令和7年度は,令和4年~6年までの試験結果の取りまとめを行う。ただし,試験条件の一部で再試験(継続付与試験)が必要な場合,追加研究(繰返し載荷試験)の実施を要する場合などのことも想定し,それらを行う時間的余裕を見積もっている。
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