研究課題/領域番号 |
22K04293
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22020:構造工学および地震工学関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
野田 博 近畿大学, 建築学部, 教授 (30602221)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 数値流体計算 / 流体ー構造物連成解析 / エネルギーマップ / 自由振動計算 / 強制加振計算 / 空力不安定振動 / 渦励振 / ギャロッピング / 耐風設計 / 流体ー構造連成解析 |
研究開始時の研究の概要 |
超高層建物や超大斜張橋の強風による振動は,ある条件下では破壊に至る大振幅まで成長する。この現象を解明するために近年数値流体計算を用いられているが,何れも風洞実験を模擬しただけで数値流体計算の利点を活かしていない。最近,風による振動を解明する手段としてエネルギーマップを用いた手法が注目されている。このマップの作成には膨大な検討ケースを要するが,数多くの検討ケースの実行は数値流体計算の得意作業である。エネルギーマップを利用した検討は,数値流体計算の利点を活かした手法と言える。本研究では構造物のエネルギーマップ基づいた数値流体計算の利点を活かした新たな構造物の耐風設計手法を確立する。
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研究実績の概要 |
2023年度は、2022年度に購入した数値流体計算用PCを用いて正方形角柱の強制加振計算を実施し、振動振幅ならびに風速毎のエネルギーを計算した。また、同様に自由振動計算も実施して、各風速における自由振動時の振幅が強制加振計算で求めたエネルギーが0となる振幅が一致するか確認した。確認の結果、自由振動計算での振幅と強制加振計算でのエネルギーが0となる振幅が一致していなかった。2023年度はこの不一致の原因を調査することに時間と費用を費やした。 計算結果の不一致の原因を調査するために、今年度は種々計算条件を変更して強制加振計算ならびに自由振動計算を実施した。既往の実験結果は自由振動が多いため、先ずは自由振動計算を行い既往の実験結果と比較して計算結果の検証を行った。計算条件は①乱流モデル②移流項の有限化スキーム③計算領域④計算格子解像度⑤流入流出境界条件⑥構造物周辺境界条件⑦計算格子変形領域⑧圧力基準点位置、等種々について検討した。ほとんどの計算条件については改善が認められなかったが、④計算格子解像度⑥構造物周辺境界条件を適切に設定することで、自由振動計算の再現性は向上した。 この検討結果を参考に強制加振計算を実施したところ、想定する計算結果が得られず、強制加振計算から得られるエネルギー収支の結果から自由振動計算による振動振幅の予測は出来なかった。従って、更なる検討を要することになった。 計算結果の検証をするためには多くの計算ケースを要する。当初は3次元空間領域を確保した計算を実施したが、計算時間短縮のために2次元空間で計算できるSST-kw乱流モデルを導入した。このモデルは、近年の既往の研究で3次元空間の流体と構造物の連携計算に適用した際に、良い再現性を示すことが報告されている。そのため本研究においてもSSTkwモデルの導入を実施した。 、
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
自由振動計算では概ね既往の実験結果を再現することができたが、強制加振計算では不具合が解消されなかった。強制加振計算は自由振動計算方法を改良したものであるため、自由振動計算の検証で実施した計算条件の変更による改善は、強制加振計算でも見込めると想定していたが、強制加振計算では逆に計算の不一致が大きくなった。従って自由振動計算の検証で実施した各種計算条件の変更を強制加振計算でも実施を実施中である。 今年度は計算負荷低減を目的として2次元計算でも実現象を概ね再現可能なSST-k-wモデルの導入を実施した。2次元計算のSST-k-wモデルとこれまで実施していた3次元計算のLESモデルの計算結果はおおむね一致していた。2次元計算SST-k-wモデルの適用範囲は、スパン方向(2次元計算SST-k-wモデルで省略した方向)で変動風力の相関が高い場合に限ることが知られている。本研究で対象としている正方形角柱の空力不安定振動は、スパン方向の変動風力の相関が高いため3次元計算の結果を再現できたと考えられる。しかし、本研究で対象としている現象の全てでスパン方向の返答風力の相関が高いわけではなく、計算結果も3次元計算と2次元計算で一致しない場合もある。そのため2次元SST-k-wモデルによる検討は限定的になる。そのため、本研究の目的を達成するためにはあくまでも3次元LES計算を実施する必要があると考える。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況で報告した通り、考えられる計算結果の不一致の原因を強制加振敬においても1つ1つ確認し、想定される結果を得ることを目指す。今年度は種々の計算条件を検討したが、次年度は根本的な計算方法の再検討を予定している。すなわち、通常強風時の構造物の振動現象は流体の密度を一定とする非圧縮性流体として計算をしている。しかし、本計算では構造物の移動に伴い計算格子を変形しているため、流体密度を一定と仮定すると、連続の式を満たさない可能性がる。連続の式とは流体計算を行う際に解く方程式の一つであり、風速変動に伴い圧力を算出する機能を持つ。このとき、構造物に伴い計算格子が変形すると圧力算出に誤差が生じる。この誤差を少なくするために、流体密度も変数とする圧縮性流体による計算を実施する予定である。 進捗状況は当初の予定に対して遅れ気味であるが、それでもこれまでの研究活動において、新たな知見を得ている。特に2次元SST-k-wモデルによる計算と3次元LESモデルによる計算結果の差異についてはこの分野において大変興味深い成果と考えられる。これらに関しては積極的に対外発表をする予定である。 次年度は研究執行速度を速めるために、数値計算手法の改良作業の一部については外部委託を実施する予定である。
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