研究課題/領域番号 |
22K04305
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22030:地盤工学関連
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
榎本 忠夫 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 准教授 (70727180)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 年代効果 / 液状化強度 / 初期せん断弾性率 / 微小ひずみ領域におけるヤング率 / 三軸液状化試験 / 砂質土 / 均等係数 / 一次元圧縮試験 / 細粒分含有率 / 不撹乱試料 / 液状化 / 剛性 / 三軸試験 / 粘性特性 |
研究開始時の研究の概要 |
地盤の液状化強度や剛性が時間経過とともに増加する現象は年代効果と呼ばれている。しかし、年代効果に対する土質特性の影響については断片的な研究成果しかなく、どのような土質であれば年代効果をより期待でき得るのかはよく分かっていない。また、このような年代効果が進展するメカニズムも未解明な点が多い。 本研究では、様々な地盤材料を用いた系統的な室内土質試験により、地盤の年代効果に対する土質の影響を明らかにする。また、試験対象土の粘性に起因する力学的挙動も調査することで、地盤の年代効果と粘性特性との間における相関関係を分析し、年代効果が進展するメカニズムを粘性特性の観点から解釈することを試みる。
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研究実績の概要 |
2023年度は計画通り2系統の実験を行うとともに、当初計画にはなかった実験も実施した。 シリーズ1:珪砂とDLクレーを混合し細粒分含有率が15%で均等係数Ucが10~60程度になるように調整した3種類の試料を用いて、締固め度95%の供試体を作製し、土粒子間の固着に起因する年代効果を再現するため上載圧100kPaの下で50日間養生した。供試体を有効拘束圧100kPaにて等方圧密した後、微小ひずみ領域における剛性の測定と液状化試験を行った。その結果、いずれの試料においても、液状化強度や剛性に対する年代効果は確認されなかった。これは、供試体の締固め時に相当な過圧密履歴を与えたためかもしれない。 シリーズ2:土の骨格構造の発達に起因する年代効果に対する土質の影響を明らかにするため、シリーズ1と同様に作製した供試体に対して、軸ひずみ両振幅0.1%の排水繰返し載荷を250回加えた後、剛性の測定と液状化試験を実施した。その結果、Ucの増大に伴い液状化強度に対する年代効果は大きくなる傾向にあったが、剛性に対する年代効果は見られなかった。液状化履歴を与えた後の非排水せん断においては、Ucが大きいと大きなひずみ領域では年代効果の影響が残存している傾向が見られた。 シリーズ3:当初計画にはないが、シリーズ2で得られた剛性に関する実験結果のメカニズムを検討するため、一次元圧縮試験を行った。粒径の異なる5種類のガラスビーズ、2種類の礫を用いて、幅5cm、奥行5cm、高さ10cmの容器内に相対密度90%の供試体を作製した。上載圧400kPaにて圧密後、応力振幅300kPa(軸ひずみ両振幅0.1%相当)の繰返し載荷を1000回行った。当該繰返し載荷の前後には、微小ひずみ領域における鉛直ヤング率も評価した。その結果、繰返し載荷により生じる残留軸変位量が平均粒径の1/2程度以下では剛性に変化がないことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は計画通り2系統の室内試験を行うことができ、また、当初計画にはなかった実験も実施したことで、多くの知見を得ることができた。 シリーズ1では、土粒子間の固着に起因する年代効果を再現するため、一次元圧密を50日間実施した供試体を用いて三軸液状化試験を行った。昨年度は、細粒分含有率の高い試料では通水時のコラプスの影響により供試体の年代効果が破壊された可能性があったため、今年度は高密度な供試体を作製するために特殊な締固め装置を製作した。しかし、供試体作製時の締固めにより相当な過圧密履歴を与えると、土粒子間の固着に起因する年代効果は短期間では発現されない可能性があることを明らかにした。 シリーズ2では、土の骨格構造の発達に起因する年代効果に対する土質の影響を調査した。その結果、均等係数が増加するにつれて液状化強度に対する年代効果が発現しやすい傾向にあったが、剛性に対しては年代効果が確認されなかった。剛性に関する結果は、異なる条件下で実施した昨年度の実験結果と同様であった。そこで、当初計画にはなかったが、シリーズ3として、シリーズ2で実施したような液状化試験前の多数の排水繰返し載荷による骨格構造の発達に関するメカニズムの解明を試みた。その結果、排水繰返し載荷により生じる不可逆的な軸変位量が平均粒径の1/2程度以下の場合は剛性が増加しないことが分かった。実際、昨年度の実験及び今年度のシリーズ2において実施した排水繰返し載荷により発生した残留軸変位量は最大でも平均粒径の1/4程度であった。したがって、シリーズ2と3の結果を総合すると、液状化強度と剛性に対する年代効果の発現メカニズムはお互いに異なっている可能性があると考えられる。この点については昨年度も指摘したが、今年度はより踏み込んだ形で検証が進んだ。 このように、実験は概ね計画通りに進み、学術的価値の高い成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、過年度と同様に珪砂とDLクレーを混合し様々な土質に変化させた試料を用いて供試体を作製し、所定の期間、一次元圧密の作用を与えた上で、微小ひずみ領域における剛性の測定とともに三軸液状化試験を行っていく。ただし、2023年度のシリーズ1の実験結果を踏まえて試験条件の変更を行う。また、効率的に年代効果を付与し実験を進めていくため、一次元圧密用の機器数を増やすことや供試体に少量のセメント等を添加することも検討する。本実験により、土粒子間の固着に起因する年代効果に対する土質の影響について更なる調査を行っていく。 さらに、年代効果の発現メカニズムの全体像を明らかにする上で重要であると考えられるため、当初計画にはなかったものの2022、2023年度に実施した土の骨格構造の発達に起因する年代効果に対する土質の影響も引き続き検討していくこととする。本調査においても、上記のように珪砂とDLクレーを混合し土質を変化させた試料を用いた三軸液状化試験を行う。当該試験では、排水繰返し載荷前後に微小ひずみ領域における剛性も測定し、2023年度のシリーズ3にて明らかにした結果等を基に、剛性に対する年代効果についても更なる検討を行う。 また、当初の計画通り、上記の2種類の年代効果を付与した供試体を用いて、載荷の途中でひずみ速度を急変する三軸圧縮試験を行うことで粘性特性を評価し、年代効果と粘性特性の相関関係を調査する。これにより、年代効果のメカニズムの一端を粘性特性の観点から解釈することを試みる。
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