研究課題/領域番号 |
22K04326
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22040:水工学関連
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
脇山 義史 福島大学, 環境放射能研究所, 准教授 (40594792)
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研究分担者 |
高田 兵衛 福島大学, 環境放射能研究所, 准教授 (80642347)
谷口 圭輔 津山工業高等専門学校, 総合理工学科, 講師 (80774794)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | セシウム137 / 降雨応答 / 土地利用 / トレーサー |
研究開始時の研究の概要 |
福島原発事故の影響をうけた地域内にある主要な流域を対象として、出水時の河川水の採取・分析を行い、セシウム137の濃度変化と海域への流出量を提示する。また、森林や農地などの土壌と河川水中の懸濁物質の炭素安定同位体比などの分析値を比較することにより、土砂やセシウム137が流域内のどこから供給されたかを推定する。さらに流域間や出水イベントごとの比較を行い、流域の土地利用構成の違いが、セシウム137の流出および海域での拡散にどのような違いをもたらすかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
2022年度は、阿武隈川5地点(二本松、黒岩、伏黒、丸森、岩沼)、浜通り中部の河川3地点(新田川、請戸川、高瀬川)、浜通り南部の河川3地点(夏井川、藤原川、鮫川)において、それぞれ2回、1回、1回の出水イベントにおける採水を行った。このうち、阿武隈川5地点では懸濁物質の137Cs濃度は400~1600 Bq kg-1、溶存態137Cs濃度は1~6 mBq L-1であった。浜通り南部の河川3地点に、懸濁物質の137Cs濃度は70~500 Bq kg-1、溶存態137Cs濃度は0.2~3 mBq L-1であった。これらの値は、各流域における137Cs沈着量に応じたものであった。 2022年度に得られたデータに加えて既存のデータを含めた、河川中137Cs濃度の時間パターンを支配する流域因子について解析を行った。137Cs濃度および見かけの分配係数Kd(懸濁物質の137Cs濃度実測値を溶存態137Cs濃度実測値で除した値であり、高いほど懸濁物質に137Csが相対的に多く含まれていることを示す)の平均値と有意な相関を示す流域因子は見出されなかった。しかし、地点ごとに137Cs濃度およびKdを懸濁物質濃度のべき乗式(Y=α X ^β)で近似し、各地点の流域面積との関係を見たところ、溶存態137Cs濃度とべき乗βの正負が流域面積1000 km2を境にして逆転していた。このことは、大きな流域では水流出ピーク時に溶存態137Cs濃度が低下し、逆に小さな流域では上昇する傾向があることを示している。これらの結果は、溶存態137Cs濃度の時間的パターンが流域のスケールに依存することを示唆している。今後行う出水イベント時の試料採水・分析結果を加えて、この原因の解明を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題においては、阿武隈川5地点(二本松、黒岩、伏黒、丸森、岩沼)および浜通り南部の河川3地点(夏井川、藤原川、鮫川)、浜通り中部の河川3地点(新田川、請戸川、高瀬川)において出水イベントの観測を計画している。このうち、阿武隈川、浜通り南部の河川3地点については採取を行い、分析が進捗している。そのほか、担当者との協議により、137Cs流出量計算のための水文データの整理、数値解析の準備も進んでおり、概ね計画通りに進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度も出水イベント時の試料採取・試料分析を継続して行っていく。とくに阿武隈川と浜通り中部河川での試料採取を実施し、有効な解析ができるデータを取得する。並行して、炭素・窒素安定同位体組成などの137Cs以外の分析を行い、供給源の推定などの解析を行い動態解明に繋げていく。各地域における知見を取りまとめて公表した上で、流域間比較に基づくメタ解析を進める。
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