研究課題/領域番号 |
22K04337
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22040:水工学関連
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
丸谷 靖幸 九州大学, 工学研究院, 准教授 (50790531)
|
研究分担者 |
永井 信 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(地球表層システム研究センター), 主任研究員 (70452167)
駒井 克昭 北見工業大学, 工学部, 教授 (90314731)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 気候変動 / 水・物質循環 / 土地利用土地被覆変化 / 流域圏環境 / 人間活動 / 物質循環 / サケ・マス / 人間活動変化 / 窒素循環 |
研究開始時の研究の概要 |
近年,気候変化や社会変化が問題となっており,これらの問題は短期間で解決出来ず,持続可能な流域環境の保全には,水質汚濁の原因物質,かつ温室効果ガスの1つである一酸化二窒素の源でもある窒素に着目し,流域圏の水・窒素循環機構の理解が必要である.そこで本研究では,「流域圏における陸域-海域間の窒素循環の解明(【ST1】)」,「遡河魚遡上数と窒素還元速度の推定手法の開発(【ST2】)」,「気候変化・人間活動に伴う過去-現在-将来の気候・土地被覆データの長期的変化の推定(【ST3】)」,のサブテーマおよび,「気候・人間活動の変化に伴う流域圏窒素循環の長期変動の解明(【総合研究】)」を実施する.
|
研究実績の概要 |
流域圏環境は数年,数10年といった長期的な諸要因(気候や人間活動の変化など)の影響の蓄積により形成されるため,現在の流域圏環境が必ずしも健全(最適)とは限らない.つまり,対象流域にとって健全な環境の理解・予測には,過去-現在-将来に亘る検討が重要となる.しかし,既往の多くの研究は,陸域と海域間の循環,さらにその変遷や何が健全な環境であるかなどの検討が行われていない. また,近年では気候変動だけではなく,人間活動の変化(例えば土地利用土地被覆変化)や生態系(例えば遡河魚)の利用方法の変化に伴い,流域圏の窒素循環が変化している.窒素は,生態系の必須栄養素である一方で,水質汚濁の原因物質,かつ温室効果ガスの1つである一酸化二窒素の源でもあるため,窒素循環機構の長期的な変化傾向の理解・予測が重要であるものの,検討が不十分である.そのため本研究では,流域圏窒素循環の長期的変化予測・解明に取り組む. 2年目である本年度は,初年度に研究対象流域とした知床周辺を対象とした.初年度から進めている土地利用土地被覆に関するGISデータの解析から得られた結果として,知床周辺は人間活動の変化(土地利用土地被覆変化)が非常に小さいことに着目し,気候変動が流域圏環境に与える影響について,大規模アンサンブルデータであるd4PDFの降水量・気温を用いて,水流出機構とそれに伴う物質動態の長期予測を実施した.さらに,既往の研究により推定されている陸域-海域間の物質循環機構を維持するために必要とされるサケ・マスによる海域から陸域への栄養(窒素)還元量を推定した.その結果として,現在の陸域-海域間の物質循環機構を維持するには現在以上のサケ・マスが知床周辺に遡上する必要性がある可能性が示唆された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,過去-現在-将来において健全な流域圏環境を評価することを目的としている.初年度に取り組んだ過去-現在に亘る流域圏における気候・人間活動・生態系の長期的な変遷を基に,それらを将来に向けて維持するために必要となる条件について,気候・人間活動の将来的な変化を与条件とすることで,生態系の観点から評価出来る可能性が示唆された.本研究の目的である健全な流域圏環境の評価という点を達成するに当たり,概ね順調に研究が進んでいると考えている.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度・初年度で実施した,気候変化(降水量・気温の長期変化),人間活動の変化(土地利用土地被覆の変化),それらの影響を受ける生態系の変化(サケ・マスの漁獲量の長期変化),の検討結果の統合化は水・物質動態に関して非常にシンプルなバケツモデル的な手法で再現を行った.本年度・初年度で実施した流域では土地利用土地被覆変化が非常に小さかったため問題とはならなかったものの,他の流域では土地利用土地被覆変化が著しいことが考えられる.そのため,最終年度である次年度は本研究で取り組んできた手法の汎用性を高めるため,近年の豪雨に伴う氾濫過程を考慮可能な分布型水流出モデルに土地利用土地被覆変化の影響を考慮した物質流出モデルを構築・利用することで,過去-現在-将来において健全な流域圏環境を評価可能な手法を構築する.さらに,本年度取り組んだ研究成果を国際誌等での論文化を進め,研究成果を公表することを進める.
|