研究課題/領域番号 |
22K04347
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22050:土木計画学および交通工学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
長江 剛志 東北大学, 工学研究科, 准教授 (30379482)
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研究分担者 |
水谷 大二郎 東北大学, 工学研究科, 助教 (30813414)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 複数均衡 / ポテンシャル・ゲーム / 集積経済モデル / ベイズ推定 / Langevin Monte Carlo / 最尤推定 / 加速射影勾配法 / Bayes推定 / マルコフ連鎖モンテカルロ |
研究開始時の研究の概要 |
CoVid19の世界的蔓延や相次ぐ自然災害,モビリティシェアやフードデリバリーの普及などに伴い,都市・交通システムの構造が大きく変化している.こうした変化を記述・分析するためには,規模経済およびそれに不可避的に伴う複数の均衡解の存在の考慮が欠かせない.本研究では,複数解をもつ均衡モデルを実際の政策立案・評価に応用する上で必要不可欠な,観測可能な情報からモデルのパラメータを推計する手法を開発する.
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研究実績の概要 |
本研究では,規模経済の存在などによって複数の解が存在し得る都市・交通均衡モデルに対して,現実に観測される情報に基づいてモデルのパラメタを推計する ための手法を開発する.特に,都市・交通均衡モデルの中で,ポテンシャル・ゲームに帰着するものに注目する.研究代表者らは,ポテンシャル・ゲーム に対して,系の動学が Langevin 拡散過程に従う時,その定常分布がBoltzmann型の解析解を持つことを明らかにしている. 昨年度は,このことを活用して,現実に観測される系の状態(交通量・立地パターン)に基づいてモデルのパラメタを最尤推定する方法を開発した.しかし,この方法では,充分な数の観測状態が得られない場合に,推定されたパラメタが真値から大きく乖離する可能性があることが判った.そこで,今年度は,パラメタを「点」としてはなく「分布」として推定する方法を開発した. 具体的には,まず,ベイズ推定の考え方に基づき,観測された系の状態を与件としてパラメタの事後分布を求める問題を定式化した.このとき,パラメタの事前分布に一様分布を仮定すると,事後分布が「対数尤度」をポテンシャルとしたBoltzmann分布となることを明らかにした.次に,この分布に対応する Langevin拡散過程を導出し,それを用いたモンテカルロ法(LMC: Langevin Monte Carlo)を用いたサンプリング手法を開発した.最後に,複数の都心形成を説明できる立地均衡モデルを対象とし,提案手法によってパラメタの分布を適切に推定できることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数解が存在する均衡モデルのパラメタの Bayes 推定手法を開発できたため.
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今後の研究の推進方策 |
第1に,最適化理論の視点からは,ポテンシャル・ゲームの「双対問題」とそのダイナミクスを考えることに興味がある.従来の研究では,各戦略を選択する 「主体数」と(各主体の利得改善行動の結果としての)ダイナミクスしか取り扱っていないため,そこで,今後は,ポテンシャル・ゲームに対する双対ダイナミクスの導出やその確率的拡張を行う. 第2に,本研究を進めていく中で,交通均衡モデルや立地均衡モデルといった一部の市場だけの均衡だけではなく,家計・企業・輸送販売業者・地主といった経済主体が存在し,複数の産業や地域間で財や生産要素を取引する多地域一般均衡モデルもまた,ポテンシャル・ゲームとなることが判った.今後は,そうした大規模なモデルに対する本研究の手法の適用についても検討していく.
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