研究課題/領域番号 |
22K04363
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22050:土木計画学および交通工学関連
|
研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
上村 靖司 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (70224673)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
|
キーワード | 路面融雪 / 降雪検知制御 / 残雪深制御 / 資源消費 / レーザー距離計 / LiDAR / 路面残雪シミュレーション / 表面下散乱 / 消融雪 / 路面残雪 / レーザー計測 / 高度制御 |
研究開始時の研究の概要 |
日本の豪雪地帯に広く普及する消融雪システムの資源消費量(燃料,電気,地下水など)を半減させる高度制御技術の開発に取り組む.現在主流の降雪検知制御を積雪検知制御に替えれば運転時間が半減するため,10㎝以下の路面に残った雪の深さをレーザー距離計とLiDARにより精度よく計測して運転制御に活かす.路面残雪は,新積雪,圧雪,みずべた雪,氷板など,光学特性も物理特性も多様で、かつ積雪層の表面下散乱現象が高精度測定を阻害するため,レーザー光を照射した場合の残雪面の光学特性の理解を深めつつ,安定して1㎝以内の精度で路面残雪深を計測する技術の確立を目指す.
|
研究実績の概要 |
本プロジェクトは、日本の豪雪地帯に広く普及する消融雪システムの資源消費量(燃料,電気,地下水など)を半減させる高度制御技術の開発を目的とする。現在主流の「降雪検知制御」を「積雪検知制御」に替えることで運転時間が半分以下になることが既往研究で示唆されているため,10㎝以下の路面に残った雪(路面残雪と呼ぶ)の深さをレーザー距離計とLiDARにより精度よく計測して消融雪システムの運転制御に活かすものである。 路面残雪は,新積雪,圧雪,みずべた雪,氷板など,光学特性も物理特性も多様であるため,初年度はレーザー光を照射した場合の基本特性の理解を中心に取り組んだ。まず高精度計測の障害となる積雪層の「表面下散乱」現象について,実験によって新雪、みずべた雪などの積雪特性ごとの違いを調べた。次に、モンテカルロ法によるシミュレーションプログラムを作成し、散乱係数,吸収係数,屈折率を水と氷の既知の物性値をおさえつつ,実験結果を再現できるように雪質に応じてた妥当なパラメータ値を同定した。結果として、表面下散乱現象の実験結果とシミュテーションによる計算結果が、よく一致した。「点」計測であるレーザー距離計による距離測定の知見を踏まえて、第2年度に向けて「線」計測できるLiDARユニットを導入し、冬期に予備的な実験を実施した。 また、路面残雪深によって制御を行う場合の有効性を検証するため、降雪検知制御、残雪深制御、複合制御(降雪検知でOn、許容残雪深以下でOff)の3方式について、資源消費量、最大残雪深、サービスレベルの3つの指標に基づいて路面融雪シミュレーションを行った。新潟県十日町市という世界有数の豪雪地でのシミュレーションでは、制御方法の工夫によって最大残雪深、サービスレベルは著しく改善するものの、資源消費量は3割程度の削減に留まることを明らかにした。その成果は3件の学会発表として公表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
消融雪システムの資源消費量(燃料、電気、地下水など)を半減させる高度な制御技術を開発するために、まず路面残雪深による制御の有効性検証を行った。まず、3つの制御方式についてシミュレーションを実施し、3つの指標(資源消費量、最大残雪深、サービスレベル)の評価が有効であることを明らかした。そして、適切な制御方式の選択によって、資源消費量を約30%削減できる見込みがあることが分かり、大きな進展があった。さらに、この成果に基づいて3件の学会発表を行ったことから、研究は順調に進んでいると考える。 次に、初年度に予定していたレーザー距離計による高精度残雪深計測については、計測の障害となる積雪層の「表面下散乱」現象について、実験によって新雪、みずべた雪などの積雪特性ごとの違いが明らかになった。そして、モンテカルロ法を用いたシミュレーションにおいて、散乱係数、吸収係数、屈折率の物性値を雪質に応じたパラメータ値として同定することができ、表面下散乱現象の実験結果とシミュレーションによる計算結果が一致したため、現象の理解が進んだ。ただし研究成果の公表が不十分であったため、全体的に「概ね順調に推移している」という判断をした。
|
今後の研究の推進方策 |
路面消融雪システムの制御方式に応じた有効性検証のための、路面残雪シミュレーションについては、計算対象地域を他地点に展開していく。特別豪雪地帯の中で比較的人口の多い地方都市である長岡市と、豪雪地帯の中では比較的降雪量が少ないが人口が多く密集している新潟市を対象として、同様のシミュレーションを行う。試算の段階だが、降雪量の少ない地域の方が制御方式の変更による資源消費量削減効果が大きいという傾向が見られることから、複数地点でのシミュレーションの比較により、その効果の定量化と気候特性・地域特性に応じた最適な制御方式を明らかにしていく。 次に、表面下散乱現象によって高精度計測が難しい10㎝以下の残雪深計測については、レーザー距離計による「点」測定の特性が明らかになったことから、次の段階として「線」計測できるLiDARユニットによる残雪深計測の段階に進む。昨冬に試験的な運転は行っており、今後は下記に模擬雪による斑残雪路面、冬期に実際の融雪路面の路面残雪分布の測定に進む。これにより、まだらに融解が進んだ路面においても適切に路面状況を把握して、効率よく効果的に融雪が進む制御可能なシステムの開発に向けて、その特性を明らかにしていく。
|