研究課題/領域番号 |
22K04391
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23010:建築構造および材料関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松川 和人 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (50709186)
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研究分担者 |
中埜 良昭 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (10212094)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 鉄骨造 / 耐震診断 / 溶接 / 地震被害 / 旧基準 / 隅肉溶接 / 露出柱脚 / 軽量鉄骨 |
研究開始時の研究の概要 |
旧基準で建設された建築物が地震に対してより脆弱であることは一般にも知られてきているが,なかでも民間の鉄骨造(S造)建築物について,学術的な検討はほとんど行われてきていない。こうした建築物を耐震診断すると,多くの場合,非常に低い数字が算定されるが,地震を受けて崩壊したという報告は少ない。本研究は,そうした「脆弱」と評価される旧基準S造建築物の「実力」を実験実測的に明らかにし,木造やRC造と同様,被害や実性能と対応する性能評価の実現を最終目標としている。
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研究実績の概要 |
2023年度は,旧基準で建設された鉄骨造小規模住宅で見られる柱梁接合部のディテールを再現した試験体の構造実験と, 耐震性能評価を行った。試験体のパラメータは梁端仕口部の隅肉溶接のサイズであり,目標脚長をそれぞれ25 mm, 50 mm, 75 mmとしている。加えて,目標脚長を75mmとしつつ日の字カバープレートを設置した試験体も1体加力した。実験結果とその分析により,以下の項目が明らかとなった。1)溶接のサイズを増加させると試験体の曲げ強度や変形能力は増加した。また, 日の字CPLの設置によってもさらに曲げ強度が増加した。2)早期に溶接破断した(目標脚長25mmと50mmの)試験体については, 溶接破断に基づく強度式による評価でも曲げ強度を過小評価した。これはダイアフラムの不在による応力負担の偏在によるものと考えられる。 3)局部曲げが卓越した(同75mmの)試験体については既往の理論式により, 実験で得られた強度を概ね適切に評価できた。日の字CPLと大きな溶接サイズにより梁フランジ全体で曲げに抵抗できた(同75mmに加えて日の字CPLを設けた)試験体については、全塑性モーメント評価式に実材料強度を適用した結果, 実験における最大曲げモーメントを適切に評価できた。4)いずれの試験体も, 診断実務で用いられる式による評価結果の2倍以上の強度を示した。 2023年度には,上記に加えて能登半島地震の被害調査を実施した。調査地は七尾市と穴水町であり,外観から確認できる旧基準鉄骨造建築物の構造被害を探索した。その結果,鉄骨造建築物の被害は木造建築物のそれと比較して軽微なものが多く,外壁等の落下は見られるものの構造被害は全体的に軽微であることが分かった。特に穴水町の市街地では,周囲の木造建築物の多くが全壊・倒壊している場所においても構造的にはほぼ無被害の鉄骨造建築物が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
構造実験を完了し,その成果を日本地震工学シンポジウムで発表した。進捗は概ね問題ないが,採択当初に予定していた鉄骨造架構の実大実験については物価高騰による試験体製作費の上昇があったため実施を見送り,2023年度の実験結果や被害調査結果を踏まえ,フレーム解析にて代替することとした。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,2023年度に得られた実験結果を踏まえたフレーム解析により旧基準鉄骨造建築物の実力を把握する。梁端仕口部にダイアフラムの不在による影響を考慮できる回転ばねを設置することで,試験体の性能をおおよそ評価できる目途は立ったため,このモデルを実大建築骨組に適用し,静的荷重増分解析や動的解析により,実性能を検討する。また,その際には同程度のIs値を有するRC造建築物との比較も実施し,当初の問題であった「著しく低いIs値となる旧基準S造建築物の実力」について,一定の回答を出す予定である。 また,地震工学分野で最大の国際会議である第18回世界地震工学会議にて2023年度の研究成果を発表し,成果の世界発信を行う予定である。加えて,2024年度の成果を査読付き論文として適切な雑誌・会議に投稿することも検討する。
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