研究課題/領域番号 |
22K04403
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23010:建築構造および材料関連
|
研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
東 康二 崇城大学, 工学部, 教授 (80320414)
|
研究分担者 |
岩下 勉 有明工業高等専門学校, 創造工学科, 教授 (10332090)
赤星 拓哉 崇城大学, 工学部, 助教 (40848454)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 建築構造・材料 / 鋼構造 / 溶接接合部 / 脆性破壊 / 接合部詳細 / スカラップ / 破壊モード |
研究開始時の研究の概要 |
兵庫県南部地震以後,スカラップ形状の改良を目的とした実験研究が行われ,多様な形状が提案されたが,建築工事標準仕様書(JASS6)において標準形状が示されて以降,開先カッターの普及と共に,それ以外の形状は殆ど使用されていない.しかし,JASS6型のスカラップではスカラップ底のひずみ集中が緩和できず,そこから延性き裂が発生・進展し脆性破壊に至ることがある.スカラップ底に発生したき裂周囲の塑性拘束は比較的高い.そのようなき裂に対しては,既に提案している評価手法で的確に脆性破壊を予測できることから,様々なスカラップ形状をもつ試験体にこの破壊予測手法を応用し,脆性破壊の発生を抑制する形状の最適化を図る.
|
研究実績の概要 |
本研究は,接合部詳細の中でひずみ集中点となるスカラップ底から進展した延性き裂を起点とする脆性破壊を的確に予測し,より正確に接合部の終局耐力を求め比較することで,脆性破壊の発生を抑制する接合部の詳細形状の最適化を図ることを目的とする. これまでの研究により,JASS6型の危険性と形状を改良することにより変形性能が飛躍的に向上することが確認でき,解析によりスカラップ底へのひずみ集中が回避されることが確認できた.但し,同一形状でも,フランジとウェブのモーメント分担率,外法一定H形鋼のフィレット部の寸法,組立H形鋼製作時の溶接サイズや溶着金属の破壊靭性値,延性き裂の発生位置と進展方向によって破壊性状が異なり,一般化に向けては,更なる改良と適用範囲の確定が必要であることが明らかとなった. そこで,本年度は延性き裂の発生位置と進展方向に着目し,延性き裂がスカラップ底から梁断面方向ではなく,梁材軸方向に進展する場合について,実験的に検証を行った.過去の研究により,材軸方向に延性き裂が進展する場合,破壊モードがせん断モードとなり,脆性破壊の発生抑制に大きく寄与することが明らかとなっているが,実構造では開口型(モードⅠ)とせん断型(モードⅡ)が混在している.そこで,本年度は破壊力学パラメータの一つである応力拡大係数を用いて混合モード比なるモードの影響を考慮するパラメータを提案し,その有効性を確認した.柱梁接合部をモデル化した組立H形試験体の漸増繰返し載荷実験においてモードⅡが卓越した試験体について,有限要素解析でき裂を再現し,混合モード比を用いて試験体破壊時の終局耐力の予測を試みた.その結果,予測精度の改善がみられたが,ばらつきが大きく,精度向上には更なる材料試験レベルでの複合モード載荷試験による評価式の補正が必要であることが明らかとなった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従い,初年度は,改良スカラップを有する組立H形試験体を用いて,漸増繰返し載荷実験を行った.スカラップ形状はJASS6推奨型を反転させものとAISC仕様規定で推奨されたものを基にフィレット残しを加えた形状とした.既に仕口部の塑性変形に対する改良形状の優位性は示されているが,延性き裂の発生・進展について課題が残っていた.それを踏まえ,本年度はスカラップ形状・寸法と延性き裂進展方向の関係を把握すると共に,塑性変形性能を確認した.また,材料試験により使用鋼材の材料特性を確認し,破壊靭性試験と有限要素モデルにより,破壊予測に関わるWeibullパラメータなど評価式の基となるデータの集積を行った. また,課題となっていた形状,寸法によるき裂進展方向の相関を有限要素解析によりパラメータスタディによって確認すると共に,モードⅡが卓越する試験体の挙動を解析的に再現した.混合モード比により修正された組立H形試験体の終局耐力はある程度実験値に近づき,混合モード比の有用性が示唆されたが,材料試験(4点せん断試験)レベルでの混合モード比のデータ量が不足した箇所が存在した.次年度中にはデータの補完を終える見通しである.
|
今後の研究の推進方策 |
研究スケジュールでは,初年度の組立H形試験体実験,3点曲げ試験,4点せん断試験を継続することとなっている.今後,破壊評価式の精度を上げるために,より多くの混合モード比を持つ材料試験を実施し,混合モード比による修正係数算定式の確定を進める.現在,算定式は簡便のため1次式を用いているが,基礎データが揃えば,その妥当性を検証することができる. 組立H形試験体の場合,ウェブ厚とサブマージアーク溶接の脚長が延性き裂の発生・進展に大きく影響を及ぼしていることが分かっている.現在,完了している試験体寸法は限定的であり,改良スカラップ形状を最適化し,一般化するには,境界値となる場合における回避策を提示することも必要となる.全ての寸法を実験的に検証することは非効率的となるので,有限要素解析に基づくパラメータスタディを実施し,形状,寸法について絞り込んだ上で,実験にて検証する.スカラップのひずみ集中点からのき裂の発生と脆性破壊を予測できれば,最大の塑性変形能力をもつものとして最適な形状が決定できると考えている.
|