研究課題/領域番号 |
22K04406
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23010:建築構造および材料関連
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研究機関 | 宮崎県木材利用技術センター |
研究代表者 |
中谷 誠 宮崎県木材利用技術センター, その他部局等, 主任研究員 (90433143)
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研究分担者 |
森 拓郎 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (00335225)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | せん断強度 / 割裂強度 / 支圧強度 / 長期性能 / DOL試験 / クリープ試験 / せん断 / 割裂 / 支圧 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は研究期間を3年間として、木質構造のボルトおよびドリフトピン接合部の木材側の耐力発現に係わるせん断、割裂、支圧強度(めり込み)について、長期的な強度を解明するDOL試験、長期的な変形を解明するクリープ試験を実施する。本研究により、耐力発現に係わる各性能について、初期強度からの低減率(荷重継続時間の調整係数)および長期的な変形挙動を解明する。
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研究実績の概要 |
本研究はドリフトピンおよびボルト接合について、木材側の耐力発現に係わるせん断、割裂、支圧強度(めり込み)に関する長期的な強度および変形性能を明らかにすることを目的としている。現状、接合部の設計では、長期的な強度は短期強度の0.55倍であり、長期的な変形量は初期変形量の2倍とされている。しかしながら、これらの長期性能は曲げに関する研究成果を基に定められており、上記の各強度に関しても同等の性能であるかについて検証した研究例はほぼ無い。今年度は研究期間3年間の1年目として、長期的な割裂強度およびせん断強度を検証するDOL試験を開始させた。DOL試験を始めるに当たり、長期試験に適した新たな試験体形状および試験方法を確立させた。せん断強度は、JIS規格(日本産業規格)の木材の試験方法において、ブロック形状の試験体に所定の鋼製治具を用いた試験により算出できることが示されている。しなしながら、その試験方法を長期試験に適応するためには大掛かりな治具が必要になる。そこで、本研究では試験体形状を十字型とし、その両側の突起部分を試験機治具に引っ掛けて引張することでせん断破壊させる新たな試験方法を提案した。割裂強度についても、JIS規格の試験方法とは異なり、実際のドリフトピンおよびボルト接合での横引張による割裂破壊を再現した試験方法とした。DOL試験は来年度まで実験を継続していく計画であり、今後試験結果を考察することで長期性能の解明を行いたいと考えている。また、長期的な変形性能を明らかにするクリープ試験を来年度スタートさせてるために、恒温恒湿室で使用できるテコの原理を利用したレバー式の試験機を製作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間3年間の1年目である今年度は、当初の研究計画の通り、長期的な割裂およびせん断強度性能を検証するDOL試験を開始した。また、来年度に長期変形性能を検証するクリープ試験を開始できるように試験機を製作した。 割裂強度のDOL試験は、実施場所を宮崎県木材利用技術センターとし、テコの原理を利用したレバー式の引張圧縮兼用の試験装置を用いた。試験体は、事前の予備試験体による検討結果から、実際のドリフトピン接合で確認される部材の横引張による割裂破壊が生じる形状とした。長期的に負荷する荷重レベルは3条件(短期破壊荷重の90%、80%、70%)、試験体数は各6体とし試験を実施している。これまでに全18体中5体の試験が終了し、4体が載荷試験継続中である。 せん断強度のDOL試験は、実施場所を広島大学とし、テコの原理を利用したレバー式の引張用の試験装置を用い、長期的に引張力を加えることで試験体にせん断力を負荷している。試験体の形状は、長期的な試験が実施しやすい十字型とした。試験方法は、十字型試験体の両側突起部分を試験機治具に引っ掛けて引張することでせん断破壊が生じるようにした。荷重レベルは3条件(短期破壊荷重の90%、80%、70%)とし、試験体数は各6体として実験を継続している。 来年度開始するクリープ試験について、これまでの研究成果より、せん断や支圧による変形は微小であることから、温湿度が変化する環境下では木材の膨潤収縮の影響が大きく、クリープ変形の判断が容易でないことが想定された。そこで、温湿度を一定環境下に設定できる宮崎県木材利用技術センターが所有する高温恒湿室を用いて実験を実施することとし、今年度は実験に必要となる高温恒湿室内に設置できるサイズの長期載荷試験機を作製して備え付けた。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間3年間の1年目となる今年度は、当初の計画通り研究が進んだことから、来年度以降も研究計画に沿って試験を実施していく予定である。来年度は、長期的な割裂およびせん断強度性能を検証するDOL試験を継続する。そして、支圧とせん断変形について長期的な変形量の推移を計測するクリープ試験を開始する。 せん断および割裂強度のDOL試験は、載荷継続中および未試験の試験体について試験を実施する。また、解決すべき新たな課題として、長期試験で載荷する荷重の決定方法について再検討する。長期試験で試験体に負荷する荷重は、同一材料から採材されたマッチング試験体による強度試験結果の平均値を基準として決定していたが、事前試験より同一材料であっても強度のバラツキが認められたことから、荷重レベルの算定方法について再度検討が必要であると考えている。DOL試験は来年度まで実施する計画であり、得られた試験結果より初期強度からの低減率となる荷重継続時間の調整係数を、割裂強度とせん断強度のそれぞれについて明らかにする。クリープ試験は、恒温恒湿室内に設置した載荷試験機を用いて、温湿度一定環境下での支圧およびせん断の長期変形量の測定を行う。試験期間は6ヶ月間程度を想定している。試験により得られた変形量の推移から長期変形量の推定を行い、初期変形量に対する長期変形量の増大率となる変形増大係数を、支圧変形およびせん断変形のそれぞれについて明らかにする。本研究によって得られた各強度および変形量の長期性能の成果は、木造建築物の長期利用に対する信頼性の向上に大きく寄与することになると考える。
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