研究課題/領域番号 |
22K04421
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23010:建築構造および材料関連
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
宮津 裕次 東京理科大学, 創域理工学部建築学科, 准教授 (70547091)
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研究分担者 |
森 拓郎 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (00335225)
脇田 健裕 早稲田大学, 理工学術院, 客員主任研究員(研究院客員准教授) (10469025)
青木 崇 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 地震減災実験研究部門, 招へい研究員 (20870017)
五十田 博 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (40242664)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 通し面材 / 木質構造 / 損傷分散 / 接合部 / 共振曲線 / 摩擦ダンパ / CLT / 制振構造 / 厚物木質材料 / 制振ダンパ |
研究開始時の研究の概要 |
木造住宅を中心とする木造建築物の地震時の安全性を向上させるため、近年開発が進む厚物木質材料と制振技術を融合した構造システムを開発する。初めに、目的達成のために必要となる厚物木質材料のサイズや制振ダンパの性能を解析検討により明らかにする。その後、振動台実験を含む各種の実験検討により、提案システムの有効性を実証する。また、提案システムを適用するための構造計算方法の整理も進める。
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研究実績の概要 |
本年度は、通し面材としてCLT(Cross Laminated Timber)を使用する場合を対象として、通し面材と柱材との接合部仕様を提案し、その力学特性を評価するために実大部分試験体の静的載荷実験を実施した。柱材の断面は120mm角、CLTの厚さは90mmとし、規格の溝形鋼と鋼板により両者を接合することとし、昨年度実施した解析検討の結果から決定した接合部の必要耐力を有するように、接合具(木ねじ)の必要本数を決定した。実験結果から、提案した仕様は想定通りの耐力および剛性を有することが確認され、本研究でポイントとなる通し面材と軸組材との接合部について実現性の高い仕様を提案することができた。 また、理論的な検討として、本研究で提案する構造システムを有する2層木質構造物の振動特性を定常応答理論から得られる共振曲線に基づいて評価した。同時に、多数の観測地震動を用いた時刻歴応答解析によるばらつきを考慮した分析も行い、定常応答解析から得られた結果との比較検討を行った。その結果、通し面材のように損傷を建物全体に分散する機構を導入することで、全層の層間変形角を一様化できるだけでなく、入力のばらつきに対するロバスト性を高める効果も付与できることを明らかにした。 前者の実験検討から得られた成果は、提案する構造システムの部分の設計方法に対して有用な知見を与えるものであり、次年度予定している振動台実験での試験体仕様の策定にも活用される。後者の理論的検討から得られた結果は、通し面材を導入することの意義を振動論に基づいて証明した点に学術的価値がある。この成果は、同システムを用いる建物の構造設計に活用できるものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、提案する構造システムを実現する上で重要なポイントとなる通し面材と軸組材との接合方法について検討した。接合部のプロトタイプを製作し、その静的載荷実験を通して実現性の高い仕様を提案した。昨年度時点では、本年度に提案システムを適用した試験体の振動台加振実験を実施することとしていたが、その前に通し面材と軸組材との接合方法について十分な検討をしておく必要があると考え、研究スケジュールを若干修正し、振動台実験は次年度実施することとした。一方で、次年度に主に進める予定であった解析的・理論的な検討については本年度着手し、当初予定していたよりも早い段階で良い成果が得られたた。本年度得られたこれらの研究成果は、次年度の研究を円滑に進めるために極めて有用であることから、現時点での本研究課題の全体的な進捗としては「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、提案する構造システムを適用した2層木造軸組の振動台加振実験を実施し、通し面材が損傷分散に寄与することや制振ダンパが効果的にエネルギー吸収を行うこと、また接合部を含む各部が想定通りに挙動することなどを実証することを主な目的として研究に取り組む。同時に、通し面材を導入する建物の構造設計法や構造計算法についても検討も行い、実用化に向けてハード・ソフト両面からの環境整備も進める。振動台加振実験については、9月に実施することですでに実験準備に取り掛かっている。実験結果を模擬するための解析モデルの作成にも着手しており、本研究課題の申請当初の予定通りの成果が得られるものと考えている。設計法や計算法の整備については、昨年度の理論的・解析的検討の成果を活用して、実務的に有益な略算式や表形式での検討方法を提案したいと考えている。
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