研究課題/領域番号 |
22K04430
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23020:建築環境および建築設備関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
川井 敬二 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (90284744)
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研究分担者 |
菊池 哲平 熊本大学, 大学院教育学研究科, 教授 (70515460)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 建築環境 / 音環境 / 学校施設 / 保育施設 / 室内音響計画 / 吸音 / 建築音響 / 小学校 |
研究開始時の研究の概要 |
幼稚園~小学校という幼児から児童の教育の場において、建築音響的な配慮は、学習効果に大きく寄与する。また発達障害など聴覚過敏性をもつ子どもにとって、騒音は強いストレス要因となる。しかし、国際的には音環境の重要性は認識され政策等で実現されている一方、わが国では規準等が未整備である。そこで本研究は、わが国における学習空間への音環境設計の普及のために、視察・アンケート調査を通した現状把握、および吸音の効果の実証実験という2つの柱からなる。一地方政令指定都市を対象に、深く詳細な調査と実験を実施することで、信頼性の高いエビデンスを得て、それを全国に発信し、普及への大きな足がかりとなることが期待される。
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研究実績の概要 |
本研究は、幼稚園・保育所、小学校を対象とした、子どものための音環境設計の社会への普及を目的としており、欧米をはじめとする他国に比べてそれが普及していないわが国の現状を背景として、2つの研究課題を掲げた。その課題ごとに実績の概要を述べる。 ① 初等教育施設における音環境の現状と問題の把握: これについて、WEBアンケート「学校の音環境に関する教員の意識調査」を、小中高等学校教員約300名を対象に実施し、児童生徒の声の聞き取りにくさ、喉の痛みについて20~30%の教員が該当すると回答し、また聞こえに困難のある児童生徒がクラスに在籍するとの回答も30%程度みられるなど、学校での音の問題点や重要性を示す結果が得られた。室の響きに関して、幼保施設を対象に自園の残響を体験・回答できるWEB教材を作成した。これは、保育者が実際の保育室で手を叩いて響きを評価するとともに、天井仕上げの写真を調査者に送信することで、響きの体験とともに保育室の吸音材使用の有無を保育者にフィードバックできるものである。回答から園での吸音仕上げの有無を把握するとともに、体験を通した吸音の知識の普及を目指している。 ② 良好な音環境が学習や快適性に及ぼす効果の把握: 一つの幼稚園の協力を得て、室内の喧騒が苦手な子どもが落ち着ける小空間を、吸音仕上げのある室とない室に設置し、小空間の使用状況を観察・比較する実験を実施した。結果、吸音のない室では使用時間が顕著に長い、という結果が得られ、室の残響低減による喧騒感の緩和の重要性が示された。 上記に加え、インクルーシブ教育に関する書籍の執筆・刊行、R6年度実施を予定する子どものための音環境設計に関するシンポジウムの企画など、普及に向けた研究活動を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は①初等教育施設における音環境の現状と問題の把握、②良好な音環境が学習や快適性に及ぼす効果の把握という2項目から成る。R5年度の進捗状況は以下の通りである。 ①に関して、R4年度に実施した実地視察調査、アンケート調査、学校施設整備指針・環境衛生基準の総括に加え、R5年度は新たに小中高等学校教員を対象としたアンケート調査、幼保施設の保育者を対象とした室の残響体験教材の制作とアンケート調査を実施し、音環境や吸音材使用の現状の把握を試みた。R5年度の成果についてはR6年度に発表の予定である。 ②に関しては、コロナ対応の緩和を受け、一幼稚園の協力を得て、喧騒が苦手な子どもが落ち着ける小空間の効果を検証する実験を実施した。実験では人感センサーと小型コンピュータ、およびWi-fiを組み合わせた自動観察システムを研究室で制作して導入した。このシステムは同種の実験に有効であり、広く今後の研究にも活用が期待される。 以上、新たな成果を得るとともに、今後につながるシステム開発ができたことから、研究は順調に進展したと評価している。さらに、実験・調査等の研究活動に加えて、著作物の刊行やシンポジウム企画という、本研究が目指す音環境設計の普及にむけた活動が進められたことは、計画以上の進展と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
①初等教育施設における音環境の現状と問題の把握、②良好な音環境が学習や快適性に及ぼす効果の把握に関して、以下の計画をしている。 ①についてはR5年度までの調査研究で概ね全体的な把握はできたものと考えているが、さらにオープン型の教室を対象とした視察やインタビューの実施、また、R5年度に制作した残響体験WEB教材を使ったアンケートの実施を計画している。この他、R6年7月に日本建築学会において子どものための音環境設計に関するシンポジウムを開催し、普及を図るとともに、建築設計者や保育関係者の視点からの音環境の問題やニーズについて把握する。 ②については、R5年度に実施した「落ち着ける小空間」設置実験の継続に加え、別の園の協力を得て、4月から新たに入園した2~3歳の園児のクラスを対象に、園への慣れや食事の挨拶などの習得が吸音材の仮設により変化するかどうかという、新たな視点の実験を実施する。また、学校の協力が得られれば、小学校での吸音実験、特別支援学校でのサウンドマスキングの試みといった、今後の更なる進展に結びつく研究を実施する。 また、R4~R5年度に得られた成果について、日本建築学会や日本音響学会などの論文誌や会議で発表する。
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