研究課題/領域番号 |
22K04484
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23030:建築計画および都市計画関連
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研究機関 | 呉工業高等専門学校 |
研究代表者 |
下倉 玲子 呉工業高等専門学校, 建築学分野, 准教授 (50510442)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
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キーワード | アクティブ・ラーニング / インクルーシブ教育 / 学習空間整備 / 小学校 / オーストラリア / 小中高等学校 / インクルーシブ / 学校 / 発達障害 / 学習環境 / 自閉症 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、小中学校において障害のある者とそうでない者が共に学ぶインクルーシブな学習環境を整備するためのプロセスを、O:観察、0:状況判断・方針決定、D:意思決定、A:行動の順に可視化し、発達障害児等の個別学習支援空間のOODA(ウーダ)ループ整備プロセスを明らかにする。そのために、インクルーシブ教育のシステム確立と同時に空間整備も進めてきたオーストラリアの小中学校を事例とし、問題発見から空間整備に至るまでの過程に関わる。その後、日本の小中学校でもOODAループ整備プロセスを活用した空間整備ワークショップなどを行い、汎用性の広いものとしていく。
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研究実績の概要 |
本年度の2023年度は、2023年2月に実施したオーストラリア・パースでの小中高等学校でのデータを整理し分析を行なった。視察調査校6校のうち、2日間終日観察調査を行なったセントジョセフ小学校、カンブーン小学校、ホーリークロス総合学校については、家具の配置をイラストレーターで描き起こし基礎的な資料とした。まずは最初の小学校2校の授業展開について、撮影した写真とビデオ、ヒアリングの録音、子どもの居場所スケッチなどから捉えた。内容が膨大なため、詳細分析をするのはセントジョセフ小学校に絞り、家具等の種類と機能、家具配置によって生まれる教室の構造、教室の構造を活かした授業の展開を明らかにした。教室の家具等には、ソファやスツール、クッション、ぬいぐるみなど柔らかい素材がありそれが児童の安心と吸音効果をもたらしている。机類は、長方形を基本とし、台形や月形などの変形は教員から好まれない傾向が分かった。家具の配置は、前方に空き空間を設け床座で集合するスペースとし、中央に一つのテーブルの塊、壁面に幾つかのテーブルの塊を置き、中央のテーブルの外周を巡りながら教員は児童の活動を見れるようになっている。家具の高さは前方から後方に行くほど高くなり、雛壇式で全体が見やすい構造になっている。授業の展開を見ると、幾つかのクラスでは、集まると散らばる、物を取り出すと片付けるといった行動が何度も出てきてメリハリのある授業を行ない、人も家具の移動も多かった。この傾向は、教室内に回遊できるスペースを作っているクラスで見られ、従来の机を整列させただけの教室では見られなかった。これにより人も家具も動きやすい教室の構造が明らかになった。 以上の内容は、日本建築学会大会、招待講演、申請者のYouTubeチャンネル「子ども学び空間」で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の申請を行った時は、コロナ禍の影響が色濃かったため、海外調査に行けるまで時間がかかると予想されたが、1年目にオーストラリアの小中高等学校の視察調査を実施することができた。1年目の調査は、まだ帰国前後のPCR検査など規制が厳しく、調査協力者の帯同ができなかったが、2年目では完全に規制はとけ、調査協力者2名を帯同することができ、視察で記録できるデータ量が増えた。また、作業に関しては、アルバイトをしてくれる人員を確保できたため、膨大なデータの整理を見せるための図の作成が捗った。
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今後の研究の推進方策 |
2023年2月にそれぞれ2日間の終日観察調査を行なった3校のうち、2校はまだ詳細な分析ができてない段階なので、2024年度はそれら2校についてセントジョセフ小学校と同様に、授業展開を分析することでインクルーシブ教育のための教室の構造と授業の運営方法を明らかにする。特にカンブーン小学校では、進みの遅い子どもや友達とペースが異なる子どもを個別に取り出して学習する場面が多く、教室の中の一角、教室からすぐのテラス、隣接するコモンスペース、別の教室などが利用されている。これら個別対応のために活用されているスペースのそれぞれの機能を明らかにしていく。 新しく視察調査も実施する予定である。2022年と2023年のオーストラリアのパースでの学校施設調査では、現地の学校施設コンサルタントのリップマン氏に協力いただいたが、彼と情報交換を行なっており、彼が現在従事しているカトリックの学校でインクルーシブに対応した学校づくりを行なっている所があり、それらの学校に訪問する予定である。その際には、学校の教室の構造だけでなく、そこに行き着くまでのプロセスもヒアリングし、研究を補完していく。
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