研究課題/領域番号 |
22K04511
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23040:建築史および意匠関連
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
野口 憲治 日本工業大学, 建築学部, 助教 (30337513)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 近世 / 町家 / 長崎 / 町家模型 / 桟瓦 / 丸桟瓦 / 瓦 / シーボルト / 長崎街道 / 近世町家 / オランダ商館員 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、長崎出島に勤務したオランダ商館員がみた町家の特質を基礎に、地域ごとに異なる近世町家の成立要因を明らかにすることを目的とする。19世紀初め、長崎出島のオランダ商館に勤務した商館員は、日本人と異なる視点で日本の町家を観察・理解し、日誌や模型などで遺した。彼らは、オランダ商館長の江戸参府に同行し、長崎から江戸までの町家・町並みに関する記録を挿図や日記に遺しており、地域によって町家の建築的特徴が異なることを理解していた。本研究では、オランダ商館員らが理解した町家像を基に、地域ごとに異なる近世町家形式形成論を構築する。その成果は、歴史的町並の保存・再生において、学術的正確性を担保する力となる。
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研究実績の概要 |
本研究は、長崎出島に勤務したオランダ商館員がみた町家の特質を基礎に、地域ごとに異なる近世町家の成立要因を明らかにすることを目的とする。19世紀初め、長崎出島のオランダ商館に勤務した商館員(シーボルト、ブロムホフ、フィッセルなど)は、日本人と異なる視点で日本の町家を観察・理解し、日誌や模型などで遺した。なかでもシーボルトは、江戸までの主要都市を訪れ、町家・町並みに関する記録を挿図や日記などに遺している。例えば、江戸参府の帰路では大津の瓦工場に立ち寄り、瓦の製造方法や道具などに注目していた。その様相は、シーボルト『日本』に日誌・挿図として掲載されている。また、オランダ国立世界博物館(以下、ライデン博。2023年10月より、ライデン国立民族学博物館からオランダ国立世界博物館に名称変更)には、瓦や道具の実物が所蔵されている。 そこで令和6年度は、ライデン博に所蔵されている瓦に関するコレクションの調査を実施した。その結果、瓦に関するコレクションは51点所蔵されていることが確認できた。種類別に整理すると実物の瓦は29点(シーボルト・コレクション11点、学芸員収集1点、不明17点)あり、桟瓦と本瓦に大別できる。また、瓦の木型・道具が20点(シーボルト)あり、木型についても桟瓦と本瓦用に分けられる。一部の瓦は丸桟瓦の特徴を示しており、長崎の可能性がある。 つぎに『日本』の挿図「瓦職人と陶工の道具」をみると、瓦の木型・道具などが描かれている。これらは、ライデン博に所蔵されている木型・道具と一致し、丸瓦、桟瓦、鬼瓦、軒平部や瓦当の文様木型、ロクロなどである。つまり、ライデン博に所蔵されている瓦の木型・道具は、シーボルトが大津で訪れた瓦工場で収集し、瓦工の様相はその工場を描いた可能性が高いことを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オランダ商館員が遺した記録のうち、シーボルト『日本』については分析済みであり、瓦に関する日誌、挿図、実物は対応関係があることを指摘した。瓦や道具は、長崎や大津で記録・収集したものと考えられるが、詳細な検討を継続中である。また、比較対象として日光例幣使街道沿いの旧栃木宿の町家の桟瓦について調査し、軒平部の文様からは三河地方の特徴をみることができた。つまり、町家の地域的特徴は瓦の細部までおよぶ可能性を示した。 町家模型のうち、「名主の住まい」模型に着目し、長崎の町乙名の役宅をモデルとしたことを明らかにした。また、他の町家模型も瓦などの特徴から長崎の町家をモデルとして製作された。町家模型は、棟の端部の納め方の違いによる格式表現、2階窓手摺りの外側に一本引き雨戸などの細部意匠が正確に製作されている。近世町家においては、商種・生業と身分・階層の関係が細部意匠に表出されることを、シーボルト・コレクションの模型は伝えていることを明らかにした(日本建築学会計画系論文集 2024年6月 第89巻 第820号に掲載予定)。現在、フィッセルやブロムホフの日誌などを分析中であり、これらの成果とあわせて長崎の町家の地域的特徴を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、以下の分析を推進する予定である。 1.長崎から江戸における江戸参府ルートの都市の町家・町並みの分析:シーボルト『日本』などのオランダ商館員の記録を分析し、長崎から江戸にかけての江戸参府ルート上の宿場町・城下町の町家・町並みの地域的特徴を抽出する。特に、長崎の町家の地域的特質を明らかにする。 2.オランダ国立世界博物館における調査:オランダ国立世界博物館に所蔵されている瓦に関する史料を継続して調査する予定である。
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