研究課題/領域番号 |
22K04514
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23040:建築史および意匠関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
安岡 義文 早稲田大学, 高等研究所, その他(招聘研究員) (20786496)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 古代エジプト / 柱のオーダー / 設計技法 / プロポーション |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、西洋建築史における建築理論の中核をなしている柱の諸様式が古代エジプトにおいてどのように設計されていたかを明らかにする。まず古代地中海文明圏の諸文化の交流が顕著に現れてくる紀元前7世紀以降の類例を対象として、エジプトの柱の設計技法を図面、模型、そして柱の遺構から、文献調査および博物館等における実測調査によるデータの採取を通じて再構築する。次に、エジプトとギリシア・ローマ文化の柱の設計技法がどのような関係性にあるかを見極め、またエジプトの設計技法が紀元前7世紀以前の遺構にも適用できるかどうかを検証する。これにより、未だ誰も成し得ていないエジプト文明とギリシア・ローマ文明の接続を果たす。
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研究実績の概要 |
令和5年度、前年度に行ったエジプト・アコリス遺跡での実測調査により得られた3種類のシストルム柱頭に関するデータを分析し、その結果をまとめた。大きさが異なる3種類の柱頭は、一つが岩窟神殿の岩盤をくりぬいて作られたもの、二つは切石で組積造の柱に用いられたものである。組積造で用いられたものの内、大きい方は装飾・彩色が施されており列柱室やキオスクに用いられ、建造は完成していたと考えられる。小さい方の柱頭と岩窟のものも、成形作業がほぼ終了していたと考えられる。岩窟神殿内部の柱頭のプロポーションは切石の類例から知られるカノンと比べると、ハトホル女神の顔は一致しているが、祠堂と顔の高さ比が異なり、祠堂が低めにデザインされていることが明らかになった。 また、シストルム柱頭の中には、4面型として設計されているにもかかわらず実際に成形されているのは2面か3面である例が確認された。これは一部附柱として神殿のファサードや列柱室の隅柱に用いられたと考えられる。また、同遺跡から発見されている2基のイオニア柱頭に関しても、同様のことが言える。なお、組積造の柱頭の内、小さい方は岩窟神殿の正面のファサードに残る附柱と寸法が合うため、ここに用いられていた可能性が高い。 シストルム柱頭もイオニア柱頭も、女性的性格を有しており、これまでの研究で明らかにされているアメン=ラー神やソベク神といった男神の神殿の他に、女神の神殿の存在が浮かび上がってきた。また、ファラオ様式と西洋古典古代の様式が同一の神殿に用いられていた可能性もあり、ギリシア・ローマ時代のエジプトにおける異文化の融合によって建築のデザインや柱のオーダーの概念や神殿の設計技法にも変化が表れている可能性を見出した。 なお、この研究成果は口頭および論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地調査により独自のデータが入手できており、成果も順次発表できているため。
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今後の研究の推進方策 |
ギリシア・ローマ時代の柱の設計技法は、当時の建築関連資料が比較的残りが良いため正確に復元されつつある。現時点で、グリッドを使う柱頭タイプと使わないものがあることがわかっているが、後者については、依然として不明な点が多く、今後分析に着手していきたい。また両タイプの柱頭が柱身、柱礎、柱間などの寸法にどのように関係してくるのかについて遺構例を厳選して分析していきたい。 一方、中王国時代の柱に関しては、2023年の4月と9月にニューヨーク・メトロポリタン美術館の主催するエジプト・ダハシュールのセンウセレト3世のピラミッド複合施設の調査に参加し、柱の断片を分析した。集められた断片を分析した結果、ロータス柱の正確な復元には、柱下部径や柱頭と柱身の接合部などの特定の部位の断片が欠如していることが判明したため、今後の調査で続け新たな断片を獲得していきたい。 中王国時代の柱は、ギリシア・ローマ時代のシストルム柱と異なり、雛型(カノン)の存在が確認されていないため、柱を一例ずつ丁寧に分析していく必要がある。また、ギリシア・ローマ時代の柱頭の設計方法がいつの時代まで遡ることができるのかを見極めるため、末期王朝時代や新王国時代の柱頭の設計方法の解明にも着手していきたい。
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