研究課題/領域番号 |
22K04523
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23040:建築史および意匠関連
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
栢木 まどか 東京理科大学, 工学部建築学科, 准教授 (10453820)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 鉄筋コンクリート造 / 社寺建築 / 近代和風建築 / 大谷派本願寺函館別院 / 称名寺 / 伊藤平左衛門 / 木田保造 / 伝統様式 / 不燃化 / 災害復興 / 近代和風 / 寺院建築 / 神社建築 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、近代における伝統様式建築の鉄筋コンクリート造化を、近代和風建築の枠組みから捉え直し、その技術革新について明らかにすることである。木造の伝統様式を表現した鉄筋コンクリート造建築が、近代における「和風」様式の変遷においてどのように捉えられるか、様式の近代化と構造の変化が建築家・施工業者の職能にどう影響したか、施工上どのような技術的工夫があったのかを検証する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、近代における伝統様式建築の鉄筋コンクリート造化を、近代和風建築の枠組みから捉え直し、その技術革新について明らかにすることである。 これまでの調査を通じて、戦前期の鉄筋コンクリート造社寺建築の多くは設計者・施工者とも事例ごとに異なり、木造意匠の再現方法や屋根構造を支える大架構等、独自性が高い一方で、木田保造・木田組における全国での鉄筋コンクリート造寺院建設もあり、その手法が地方にどのように広まったかも確かめていきたいと考える。 2023年度は、北海道函館市における鉄筋コンクリート造寺院の代表的初期事例である大谷派本願寺函館別院の保存修理現場を見学し、既往研究の内容を確認できたのに加え、同じく函館に残る称名寺についても調査、図面の閲覧を行った。重要文化財である大谷派本願寺函館別院は9世伊藤平左衛門と吉太郎(10世平左衛門)親子が設計し、施工を木田保造が担当した。木田は函館別院の後、福岡に明光寺、函館に称名寺と、大正時代に鉄筋コンクリート造寺院の設計・施工を行っており、函館別院での経験を生かして実績をあげている。 また、鉄筋コンクリート造神社として、長崎県端島(軍艦島)の端島神社(金毘羅神社)本殿について現地調査を実施した。古写真と比較し、木造社殿の中の本殿部分であったと考えられる小祠が、鳥居(倒壊状態)とともに一部残存している。狭小敷地における高密度居住を目的とした鉄筋コンクリート造集合住宅の成立から技術が進歩し、島における氏神をまつる神社本殿の鉄筋コンクリート造化が実現したと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年は、北海道函館市における鉄筋コンクリート造寺院の代表的初期事例である大谷派本願寺函館別院、また同じく函館に残る護念山摂取院称名寺の調査を実施した。大谷派本願寺函館別院では現在、耐震補強を含む保存修理事業が進行中であり、本堂では仕上材を剥がした構造や、柱位置と梁位置の関係を確認できたほか、小屋裏の鉄骨構造を確認した。各事例において小屋組、垂木の構法には特徴があると考えられ、明光寺(2021年調査)と今回同時に調査した称名寺との比較を進めているほか、鉄筋コンクリート造社寺建築の軒裏の意匠、垂木の構法についての整理を進めている。 また昨年度は関東大震災から100年という年であり、関東における復興建築や都市計画に関する催しやシンポジウム、学会誌等を通して、研究成果の一部を還元できた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの調査成果を踏まえ、滞っている山形県長源寺における調査研究成果のとりまとめ、また東京における社寺建築の不燃化に関して、引き続き調査を進め、報告したいと考えている。具体的には、最初期事例が曖昧である神社建築について、各種資料より改めて初期のものを調査していくほか、寺院建築については、関東大震災前後の国、東京府・市条例を参考に、墓地の移転および納骨堂建築の不燃化についても整理していく。地方事例では、東北において戦前期に実現している事例の調査を計画している。 木造以外の社寺建築は邪道であるという意識、もしくは近代和風建築としてはその後の展開の前段階であると評される状況から、改めて、建築史上において、近代和風建築として位置づけ、技術的評価をすべく成果をまとめる。
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