研究課題/領域番号 |
22K04527
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23040:建築史および意匠関連
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
藤田 勝也 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (80202290)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 平安貴族 / 住宅 / 修理 / 修造 / 皇居 / ライフサイクル / 前近代 / 住宅観 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の概要は、前近代日本の建築の竣工から終焉にいたるライフサイクルの解明にある。とくに支配者層の住宅として古代に初発する公家の住宅、中世以降は武家の住宅について、ライフサイクルの実態を詳細に検証・分析する。課題は第一に、寿命=存続期間とライフサイクルの関係を読み解き、時代的傾向の全体像を明らかにすること。第二に、修理・改修あるいは改変の履歴が個々の住宅に特有の事情や性格にいかに関わるのか、ライフサイクルの分析を通して検証することである。建物の物理的要因に加え、文化性、社会性を投影するライフサイクルという視角から前近代の住宅を見直すことで、日本住宅史を再構築するための基礎的知見を得たい。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、前近代日本における建築のライフサイクルの実態解明にある。とくに支配者層の住宅として古代に初発する公家の住宅を中心に、中世以降の武家の住宅も射程に入れ、詳細に検証・分析する。木造という物理的要因に加え、都市に立地する住宅としての文化性、社会性を投影するライフサイクルをもとに住宅の歴史を再考する。これまでの様式史とは異なる新たな視角によって、寺社の建物などとは異なる住宅独自のあり方を見いだすとともに、日本住宅史を再構築するための基礎的知見を得ることを目指す。具体的な論点は、おもに以下の2点である。 第一に、住宅の寿命=存続期間とライフサイクルの関係を読み解き、時代的傾向の全体像を明らかにすること。第二に、大小様々に行われる修理・改修の履歴が、個々の住宅に特有の事情や性格にいかに関わるのか、ライフサイクルの分析を通して検証・分析することである。 上記の目的遂行のため、関係史料の博捜・整理の作業をすすめている。とくに第2の論点にかかわる宮廷貴族の修理のあり方について、具体的な事例収集を行っている。その際、修理は幅広く多様であることから、原則、「修理」「修造」と明記される事例に限定した。修理の「契機」に注目すると、とくに皇居化・非皇居化が修理の「契機」として普遍的であったことを確認した。 2022年度の研究成果報告として、まずは皇居化の際の修理の実態について、2023年度日本建築学会近畿支部研究発表会(2023年6月開催)にて「平安貴族の住まいの修理について1」と題して発表予定である。また天皇退去や譲位による屋敷の非皇居化にともなう修理、さらに皇居(天皇)とは関連しない居住者の異動にともなう修理の実態について、2023年度日本建築学会大会(2023年9月開催)にて「平安貴族の住まいの修理について2」と題して引き続き発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的にてらして設定した課題の一つ目は、住宅のライフサイクルがその性格を反映することから、とくに居住者の階層性に注目すること。二つ目に、寿命を決定付ける住宅の終焉について、外的要因として火災(自火・放火)の頻発、内的要因として移築・転用のための解体があり、各々の実態を詳細に検証すること。三つ目に、ライフサイクルと平均寿命の関係性の究明。四つ目に、ライフサイクルを通して、前近代の住宅観を読み解くこと。そして五つ目として、ライフサイクルをめぐる寺社の建物との比較検証である。住宅の寺院化はライフサイクル上の大きな転換だが、住宅史でこの事実はあまり注目されていない。詳細な実態把握が必要である。 上記の課題に応えるためには、公刊史料の博捜・整理・分析が中心となる。とりわけ史料の収集は本研究の前提となる。古代・中世については日記類がすでに活字化され、また近年の研究であらたに翻刻・活字化されたものもある。いっぽう近世以降については貴族や寺社の日記類をはじめ、なお未公刊の史料がある。また当該研究に関連する史料として古文書もその対象として欠かせない。収集作業と併行して、蓄積した関係史料をもとに分析と考察を継続的に行っている。中近世については未確認の史料が少なからずあり、また古代の関係史料についても見直しの作業が必要で鋭意行っている。新型コロナウイルスの影響により、予定していた史料収集を制約される場面が無かったとは言えない。しかし2023年度以降は制約が解消されるものとみられるので、引き続き研究に取り組む。
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今後の研究の推進方策 |
関係史料の調査・収集をさらに継続、深化させる。またそれら関係史料をもとにした検証と考察の作業を行う。 本研究の目的遂行のため、第一に、住宅の竣工・移徙から終焉に至る存続期間=寿命をもとに、終焉の要因やライフサイクルマネジメント(LCM)の実態について、個別具体的に把握することが必須の作業となる。第二に、ライフサイクルの差異の背景・要因、ライフサイクルにもとづく個々の住宅に特有の性格の解明、ライフサイクルをめぐる言説の収集と解読・分析の作業が必要である。 これまでの研究経過を踏まえ、2023年度は住宅のライフサイクルにおいて重要な画期となる修理に焦点を絞って集中的に研究を推進する。ただし修理は大小様々であり、記録上の表現も一律でない面がある。そこで、修理の「契機」に注目することで実態に迫る。とくに以下2点について検証する。 第一に、修理の「契機」の全体像の把握を目指す。修理の「契機」もまた多様である。居住者が異動する場合と、異動しない場合がある。前者には居住者の交代、居住者の地位の変化、空き家の活用にともなう修理など、後者には儀式にともなう修理のほか、自然災害、経年劣化、不具合による修理などが想定される。このような修理の「契機」の全体像の把握を目指すが、同時にこの枠組み自体の妥当性についても繰り返しの検討が必要である。 第二に、修理の「契機」からみた「住宅観」の抽出である。前記の異動にともなう修理はリフォームあるいはリノベーションに近似し、後者は不具合箇所の補修、単なるリペアである。そして実態として後者は前者より記録に少ないようにみえる。しかし寺社の建物では後者が主流である。これが事実とすると、直接的には建物の寿命に関わり、住宅の修理の実態は短命の反映ともみられる。さらにそれは当時の「住宅観」に迫るヒントになり得る。そこで関連する言説の史料収集につとめる。
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