研究課題/領域番号 |
22K04561
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分24020:船舶海洋工学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
辰巳 晃 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (60736487)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 船体縦曲げ崩壊 / 座屈崩壊 / 延性破壊 / 損傷モデル / 流力弾塑性解析 / 座屈 / 損傷 / 破壊 / 縦曲げ崩壊 / リスク |
研究開始時の研究の概要 |
波浪荷重が船体の縦曲げ最終強度を超過した場合,船体が2つに折れ曲がる縦曲げ崩壊が生じる.その変形量が大きいと,船体表面にき裂が生じ,浸水・沈没に至る重大な事故に発展する.本研究では材料的な損傷・破壊を考慮しながら,船体の構造部材(防撓パネル)の座屈・最終強度後の挙動を数値シミュレーションおよび実験により明らかにする.これら部材レベルの解析・調査から得られる知見を活かし,波浪中における船体桁の縦曲げ崩壊を対象とした実用的なリスク評価法の開発を行う.
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研究実績の概要 |
船体が縦曲げ崩壊する際に,圧縮側の部材(防撓パネル)には座屈が生じる.座屈変形がさらに進むことでき裂が発生し,進展することで,最終的に船体は破断に至る.本研究の目的は座屈を伴う防撓パネルの延性破壊挙動を明らかにすることである.2022年度のFEM解析による考察から,板部材が座屈したあと,それを支持する桁材との交差部で塑性ひずみが集中することで延性破壊が生じ,桁材に沿ってき裂が成長する可能性が示唆された. 2023年度は,上述の座屈後の延性破壊挙動を実験にて再現するため,中空の四角柱を設計し,その材料(SS400材)の破断試験を行った.延性破壊は溶接部近傍で生じる可能性が高いため,母材のみならず溶接による熱影響部(HAZ)や溶接金属の材料特性も調べる必要がある.HAZや溶接金属から試験片を取り出すことを想定し,板厚が0.2mmの微小試験片を採用した.破断ひずみの応力三軸度依存性を明らかにするため,母材のノッチ無し引張試験片,ノッチ有り引張試験片,せん断試験片を準備し,破断試験を行った.材料の応力-ひずみ関係は降伏棚と指数則を組み合わせて表現し,そのパラメタを材料試験の結果から同定した.さらに,Modified Mohr-Coulomb(MMC)モデルを延性破壊のクライテリアに採用し,パラメタの同定を行った.材料試験の結果,応力3軸度の大きさが小さい領域(=せん断状態)であっても,一軸引張状態よりも破断ひずみは低下しないことが確認された.同定した材料パラメタを用いた微小試験片のFEM解析を実施し,材料試験と良い一致を得た. 同定した母材のMMCクライテリア用いて四角柱の座屈試験体のFEM解析を行った.試験体はシェル要素でモデル化し,き裂が発生しうる試験機のストロークを算定した.ただし,HAZの材料特性の考慮,FEモデルメッシュ依存性についての検討が必要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
鋼材(SS400)の材料試験を実施し,材料および損傷に関するパラメタを同定した.そして,座屈試験に用いる中空の四角柱の設計を行い,試験の実現可能性についてFEM解析により確認した.これらは当初の計画通りであり,2024年度に座屈試験を執り行う予定である.よって,研究はおおむね順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は微小試験片を用いて材料のHAZおよび溶接金属の破断試験を行い,MMC破断クライテリアのパラメタを同定する.その後,船体構造における板と桁材の交差部を模擬した中空の四角柱の座屈試験を行い,座屈後の延性き裂の発生の再現を試みる.平行して,MMCクライテリアを導入したFEM解析を実施し,実験の再現解析を行う.FEM解析にあたっては座屈試験体をソリッドモデルあるいはシェルとソリッドの混合モデルで表現する. 一方,材料の延性が高い場合,座屈試験を安全に実施できる範囲ではき裂が発生しない可能性も考えられる.この場合は,引張の逆負荷を与えることで,き裂を発生させる.波浪中での船体の縦曲げ崩壊の場合,大きな圧縮を受ける部材は,その後の揺り返しによって,大きな引張を受ける可能性が高く,その荷重履歴を再現した実験となる.残留座屈変形を持つ板が大きな引張荷重を受けた場合の延性破壊挙動に関する知見が得られると期待される. 以上の実験および数値解析より得られる知見に基づき,板や防撓パネルなどの単位構造の巨視的な挙動,例えば荷重-変位関係(平均応力-平均ひずみ関係)から,延性き裂の発生を推定するクライテリアを考案する.このような巨視的なクライテリアは,解析対象が貨物ホールドや船体全体など大きくなった場合に,座屈後のき裂の発生を簡易的に推定する手法として活用できると考えられる.
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