研究課題/領域番号 |
22K04593
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分25010:社会システム工学関連
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研究機関 | 小樽商科大学 |
研究代表者 |
加地 太一 小樽商科大学, 商学部, 教授 (60214300)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 組合せ最適化問題 / メタヒューリスティクス / 確率的解析 / 極値統計 / 近傍 / AR(1)プロセス / 局所探索法 / AR(1) プロセス |
研究開始時の研究の概要 |
組合せ最適化問題は,スケジューリング問題,配置問題など様々な意思決定問題で利用されている.これらの問題を解くための手法としてメタヒューリスティクスと呼ばれる一群の近似解法がある.そしてメタヒューリスティクスが経験的に良い解を導き出すことは多くの研究でも示されている.しかし,“なぜ,メタヒューリスティクスが良い解を導き出してくれるのか?”は一つの謎でもある.そこで本研究では,組合せ最適化問題の解空間に特徴的な性質が存在する仮定のもと,その解空間および解の探索過程を数理的にモデル化し,求まる近似解のコスト値などを推定する.特に,初年度は,解の移動の特徴を明らかにし研究の基盤を築く.
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研究実績の概要 |
組合せ最適化問題は,システムの設計,計画,運用など様々な意思決定の問題で利用される.この組合せ最適化問題は,現実的な時間で最適解を得るのが困難な難しいクラスに属し,そのため,実用的な時間内でより精度が高い近似解を求める研究が行われている.この近似的な解を求める手法として遺伝アルゴリズム,タブーサーチ,アニーリング法などを主とするメタヒューリスティクスがある.メタヒューリスティクスの解法は,解の移動を反復することが基調となっている.この解の移動操作のベースを作り上げているものが近傍であり,得られる解の良し悪しが近傍により決定される. そこで本研究では,近傍の解コストの最小値を推定し,解の移動の性能の解析を試み近傍の良し悪し,特性などに関して検討する.効果的な近傍の構築はより質の良い解を探索することを可能とする.この近傍の特徴を明らかに出来れば,メタヒューリスティクスの開発において有益な知見となり得る.そこで,本研究では近傍の確率分布,各種の統計量を明らかにし,近傍の特性,能力を明らかにしたい.近傍の最小値を推定することにより,近傍の探索能力が判明し,かつメタヒューリスティクスの解析へと繋がることとなる. 特に,本年度は,その1つの方法として,極値統計学の考えに基づき,近傍の最小値を推定し近傍の解析への応用をはかる.極値統計学は,極端な現象,すなわち,母集団分布の端(裾)に対する推測を行うことを対象とし,災害における極端な自然現象や,ファイナンスなどでのリスク評価のために応用される統計手法である.この考えを用い,近傍集合の分布の端(裾)における値を推定し,近傍の最小値に関して検討する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近傍の性能を解析することはメタヒューリスティクスの能力を明らかにすることに繋がる.近傍に対する汎用的な解析は,現在の解とその近傍集合の平均値における関係を論じたものに限られ,近傍の探索能力の解析には至っていない.しかし,本研究では近傍の最小コスト値を汎用的に推定し近傍の能力を解析しつつある.その知見を用いて,アルゴリズムにより求まる局所解(近似解)のコスト値を,あらゆる問題に対して確率的に導出できれば,メタヒューリスティクスの性能に関して解明できると考えている.そのためにも,解析の基盤となる近傍構造をモデル化し数理的に解析を行う必要がある. 本年度においては,多くの組合せ最適化問題の解空間の構造がAR(1)プロセス(first order autoregressive process) で支配されるという仮定 を用いて解空間の統計量を導き出すモデルに関して検証した.すなわち,AR(1)であり,かつそのプロセスにおいて定常過程が成立するか確認し、解空間の解コストの期待値,分散,および任意の解とその近傍解との相関係数を導出するモデルの有効性を数値実験により検証しその精度を明らかにした. さらに,それらの統計量を用いて極値統計の考えに基づき近傍の最小値を検討した.極値統計における1つの方法として,最小値の分布の確率密度関数をモデル化して,その確率密度の最頻値を求め極値を推定する方法がある.その考えを用い,各近傍解を同一な独立である確率密度関数に従う分布と仮定し,近傍の最小値の推定に応用した.また,その精度を検証するため,幾つかの事例に対して数値実験を行った結果,十分実用的な範囲の推定値を得られた.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度,極値統計における1つの考えを用いて近傍の最小値の推定モデルを構築した.そのモデルは,最小値の分布の確率密度関数をモデル化して,その確率密度の最頻値を求め最小値を推定する方法である.ここでは,各々の近傍解は独立であるガウス分布として仮定したが,最小値の推定としては良好な結果が得られ,実用に十分耐える推定が行えるものであった. ただし,実験対象は,TSP の2 例に対し2-opt近傍を用いた検証のみであり,今後はさらに異なる近傍,異なる問題に実験対象を広げ解析の性能,特徴を明らかにしなければならない.そこで,さらに実践的な問題(TSPLIB),3-optなどの他の近傍に対して数値実験を行うなど多くの事例に対する検証を行い,その有効性を調査していく予定である. さらに,極値統計における別途な極値の推定方法として,逆関数法により極値を導くための方法があり,その考えを用いて近傍の解析を試みたい.逆関数法は,累積分布関数の逆関数を用いて,標準一様分布に従う確率変数から,対象とする分布に従う確率変数を生成させる方法である.この考えを用い対象とする分布の極値を導くことが可能となる.この新たな推定方法を検討し,近傍の最小値の推定方法をさらに拡充し,近傍の解析方法の充実をはかるものである.また,最頻値による推定では,数値計算により最終的な値を導き出したが,別途,解析的な方法を検討しその有用性を確かめる.さらに,幾つかの事例に対して,数値実験を行い各手法での結果を示し,提案した推定方法による性能,特徴を明らかにする.
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