研究課題/領域番号 |
22K04595
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分25010:社会システム工学関連
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
吉田 昌幸 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (90533513)
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研究分担者 |
小林 重人 札幌市立大学, デザイン学部, 准教授 (20610059)
宮崎 義久 仙台高等専門学校, 総合工学科, 准教授 (60633831)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | デジタル決済システム / ゲーミフィケーション / 地域経済循環 / シミュレーション&ゲーミング / デジタル地域通貨 / デジタル決済 / 地域経済 / コミュニティ形成 / ゲーミング・シミュレーション / デジタル化 / 地域通貨 / 使用感 / 実証実験 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、デジタル化に伴う地域通貨の変容を利用者の「使用感」という点から分析を行い、デジタル化することによって地域通貨の「使用感」はどのように変容するのか、そしてこの使用感は運営・決済・流通のそれぞれのレベルでどのように制御できるのかという問題について、現地調査、ゲーミング・ シミュレーション分析、流通実証実験という複合的な研究手法を用いて検討していく。
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研究実績の概要 |
2023年度は、デジタル技術が支払システムの「使用感」にどのような影響を与えることができるのかについて様々な実験を行うために、ゲーミング・シミュレーションである「地域経済循環シミュレーション(Local Economic Circulation Simulation; LECS)」を開発した。このゲーミング・シミュレーションでは、参加者は地域内の工場となって、必要な原材料を地域内外から仕入れたり、生産する際に地域内外から労働者を雇用したり、生産した製品を地域内外の住民へと販売していく。参加者には地域経済のヒト・モノ・カネの循環を促すように冒頭で指示しており、参加者は地域内の工場の視点から、工場の利潤の確保と地域経済循環という2つの課題について他の工場と連携して様々な取引ルールを作っていく。 このゲーミング・シミュレーションの実施において重要な役割をもたらすのが、支払システムとして開発したCom-Payである。このシステムはFujiwara and Kobayashi (2019)において開発されたものである。本ゲーミング・シミュレーションでは、このシステムを支払システムとしてだけでなく、取引履歴に基づく情報のフィードバックをいくつか行った。フィードバック情報は大きく分けて2種類あり、1つはゲームで設定した地域全体での支出流出率を示す情報であり、もう一つは地域内での個々の工場の支出流出率を示す情報である。この後者の情報はさらに、各工場の支出流出率のランキングという形でも示した。ゲーミング・シミュレーションの実践の際に参加者に対してゲーム中に参考とした情報として、各工場の支出流出率のランキングをあげる者が多くおり、フィードバック情報については、自らのふるまいに直接関わる情報、そして他の類似した主体との比較という点が行動に影響を与えることが見えてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、デジタル決済システムの利便性と利用を通じた発行組織の理念や価値の認知という2つの要素を「使用感」という用語で表している。本年度は、地域経済循環シミュレーションを作成することによって、そこでの決済システムの仕様として特に、地域内部でのお金の循環を促すという発行組織の理念や価値の認知をいかに効果的に行うことができるのかという観点から検討を行ってきた。本年度行った実験では、各参加者のふるまいに直接関わる指標の表示によって、地域内部での仕入れや購入を促す結果となったことが見て取れた。 この成果は、本研究における課題の第1「デジタル化によリ利用者はどのような『使用感』を得るのか、そしてその『使用感』が地域通貨の流通や運営にどのような影響をもたらすのか」という点に対して次のような回答を得ることができた。すなわち、デジタル決済システムを活用すること自体が地域循環を促すことに貢献しうるということである。取引履歴を適切にフィードバックすることを考えることそれ自体が、イベントなどの外部からの地域通貨の流通促進とは異なる、内部からの流通促進策となるということである。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、デジタル決済システムにおいて取引データの利用者への効果的なフィードバックがすなわち、内部からの流通促進策であるということが明らかになった。次年度は、第2の課題である、「『使用感』の変更が運営面や流通面にどのような影響を与えるのか、そしてそれを持続的流通に活用する方法をさらに開発する」という点を小樽市のデジタル地域通貨Tarcaの制度再設計を通じて行う予定であった。しかし、Tarcaの活動が現在停止状態であり、ここでの調査が難しくなった。その代わりに山形県最上町で来年度行われる予定の流通実験にCom-Payを用いることで、利用者の利便性と発行組織の理念や価値の伝達という課題解決を図るシステムを構築し、それを通じて運営面や流通面についての検討を行っていく予定である。
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