研究課題/領域番号 |
22K04604
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分25010:社会システム工学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
山本 零 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (40756376)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | オルタナティブデータ / Transcript / 入出金情報 / 深層強化学習 / 資産運用 / 信用力評価 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、近年利用可能になってきた新しいデータであるオルタナティブデータを用いて企業の魅力度を計測する研究と企業の信用力評価の研究を行う。それらの研究成果を活用し、年金運用のような運用規模の大きい資産運用の効率を向上させる方法を検討する。 具体的には、企業の魅力度を計測する研究として外国企業の決算報告会の議事録データとヘッジファンドの保有株式情報を利用し、信用力評価の研究では金融機関への入出金データと証券会社アナリストのレポートデータを利用する予定である。
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研究実績の概要 |
本研究は規模の大きい年金基金などの資産運用と親和性の高いオルタナティブデータを解析し、グローバル市場での資産運用の効率性を改善させること目的とし、資産運用方法の研究と信用リスク計測方法の研究を行うものである。 2022年度は、1点目として決算報告会の議事録データ(Transcript)を用いた資産運用手法の提案、深層強化学習を用いた最適ポートフォリオ構築に関する研究を行い、2点目として入出金情報を用いた信用リスク管理手法に関する研究を行った。 1つ目の議事録データについては、決算報告会での経営者の発言には公表される数値情報以上の将来業績に関する情報が含まれていることを想定し、議事録データの文字解析により、経営者の強気度を計測する方法を提案した。米国市場で実証分析を行った結果、標準的な数値情報に比べ非常に高い効果が確認された。 2つ目の深層強化学習を用いた最適ポートフォリオ構築に関する研究では、大規模のオルタナティブデータを入力としたAI投資の可能性を検討するものである。深層強化学習を使用したポートフォリオ最適化は既存研究でもいくつか行われているが、学習時間がかかることから少数銘柄を対象にしたものしか存在しない。本研究では転移学習を使用して3000銘柄を対象とすることができる手法を提案した。また国内株式市場で実証分析を行った結果、他の機械学習手法に比べて極めて高いリターンを得ることを確認した。 3つ目は銀行の入出金情報というオルタナティブデータを用いて企業の信用力を計測するモデルの提案を行った。国内の中小企業で実証分析を行った結果、標準的な信用リスク推計モデルに比べ高い有効性を確認できた。本研究は以前から取り掛かっていたものではあるが、論文の内容をより洗練させ、国際ジャーナルに掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、2022年度は資産運用方法の研究を2件と信用リスク計測方法の研究を1件行った。本研究の成果は議事録データを用いた運用戦略の研究が国際ジャーナルに掲載、深層強化学習に関する研究は国内ジャーナルに受理、信用リスク計測方法の研究に関しては国際ジャーナルに掲載された。 またサプライチェーン情報というオルタナティブデータを用いた運用戦略に関する研究を国際学会で発表し、決定係数最大化ポートフォリオという新しいポートフォリオ構築方法に関する研究を国内学会で発表している。これらの研究成果より、当初の計画は順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は引き続きオルタナティブデータを使用した運用戦略の開発を行っていく予定である。具体的には運用手法の開発として、決定係数最大化ポートフォリオというポートフォリオ構築手法の研究を行う。このポートフォリオは入力値であるオルタナティブデータを最も有効に活用するものであるため、その効率的な構築方法に関する研究を進めていく。信用リスクに関する研究については、企業間の取引情報というオルタナティブデータを用いた信用リスクモデルの開発を進めていく予定である。これらの研究を行っていくことでよりオルタナティブデータの資産運用への活用が進展し、資産運用の効率性が向上することが期待できる。
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