研究課題/領域番号 |
22K04611
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分25020:安全工学関連
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
本島 邦行 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (30272256)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 広帯域電磁波 / 金属配管検査 / 群遅延 / 電磁波伝搬 / 群遅延特性 / 金属管探傷 / 遠隔検査 / 円形導波管 |
研究開始時の研究の概要 |
大規模プラントで使用される金属配管の異常を事前に検出することは非常に重要であるが、プラント内に複雑に張り巡らされた長大な金属配管全てを検査することは困難である。 そこで本研究テーマでは、①多数の湾曲部を有し長大な長さを持つ金属配管に生じた異常(配管内部の異物の存在、配管に生じた変形やき裂、配管接続部の緩み)を容易に検出、②容易に人が近づけない場所に存在する金属配管に対する遠隔異常検出、③金属配管の異常位置特定、の3点を可能にする電磁波を用いた新たな計測方法の確立を目的とする。 そして、この独自計測方法を提案および実証し、安全工学における新たなる計測分野を開拓・確立する。
|
研究実績の概要 |
従来の金属配管異常検出試験では、計測媒体として電磁波を検査に用いることはなかった。しかし、金属配管を“電磁波用円形導波管”とすると、電磁波は金属配管内部を良好に伝搬するため、金属配管全体を対象とした異常検出法として最適な媒体である。そこで本研究テーマでは、広帯域電磁波の金属管内における群遅延特性を異常検出法として利用した。これは、広帯域電磁波の位相情報から得られる群遅延特性は、金属配管内の各所(湾曲部、分岐部など)で生じる反射波の影響を受けにくく、本研究テーマで目的とする計測方法として最適なためである。 令和4年度には、多数の分岐部を有する金属配管内の広帯域電磁波群遅延特性の基本的な解析をおこない、それらが群遅延特性に及ぼす影響について定量的に評価した。そこで令和5年度には、金属配管内に異常が存在する場合の広帯域電磁波群遅延特性の解析をおこなった。金属配管の異常として、異物(金属製異物(欠落部品等)、絶縁性異物(配管内部に析出した水垢等))、変形(外力による金属管の潰れ、経年変形)、配管接続部の緩みを想定し、これらによって生じる金属配管の遮断周波数変化や金属管内における波長短縮率の変化、特定周波数における位相変化などを広帯域電磁波群遅延特性変化として計測評価した。また、計測の高精度化により、従来使用していた被測定金属管の真円度が計測誤差に与える影響が無視できなくなってきたため、令和5年度は真円度精度の高い金属配管を新たに特注し、実験系の金属配管を全て更新した。これによって、より高精度な計測評価が可能となった。 さらに、本研究テーマ申請時には予定していなかったが、複数の異物が金属配管中に存在する場合の電磁波伝搬特性の解析も開始した。複数の異物間距離によって電磁波伝搬強度に特徴的な特性が現れることが新たに発見されたため、令和6年度も併せて複数異物による計測を継続する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度の研究実施計画では、金属配管内に異常が存在する場合の広帯域電磁波群遅延特性の解析であるが、予定していた研究内容はほぼ実施済である。金属配管の異常として、異物(金属製異物(欠落部品等)、絶縁性異物(配管内部に析出した水垢等))、変形(外力による金属管の潰れ、経年変形)、配管接続部の緩みを想定し、これらによって生じる金属配管の遮断周波数変化や金属管内における波長短縮率の変化、特定周波数における位相変化などを広帯域電磁波群遅延特性変化として計測評価した。 しかし、計測精度の向上により、被計測対象の金属配管の真円度が計測誤差に与える影響が無視できなくなり、従来から用いていた金属配管が計測に適さなくなってしまった。そこで、令和5年度は真円度精度の高い金属配管を製作するメーカを新たに探して特注し、本研究テーマの実験で用いる全ての金属配管を真円度の高いものに置き換えた。これによって、一時実験が停止したが、特注先を急いで探して発注した結果、研究の進捗にはあまり影響を与えずに済んだ。 また、研究実施計画には含まれていなかったが、複数の異物存在による広帯域電磁波伝搬特性の解析も開始した。まだ実験データの蓄積が多くないために断定的な結果は得られていないが、複数異物間の距離によって特徴的な電磁波伝搬特性が現れることが発見されたため、令和6年度も引き続き計測・解析を行う予定である。なお、この計測では、電磁波伝搬強度を測定するのみで解析が可能であるため、本来の計測実験と並行して実施しても当初の研究実施計画のスケジュールにはほとんど影響しない。 以上のように、実験の計測精度向上によって実験環境(金属配管)の更新などが必要となったが、高真円度金属管の特注先を迅速に見つけ出せたことで、当初予定していた研究内容がほぼ順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究テーマの申請内容に沿って予定通りに研究を進める。 令和6年度には、本手法における金属配管異常検出精度の評価と高感度化を行う予定である。これは、本計測法における金属配管異常検出精度の評価であり、金属配管長が異常検出感度に及ぼす影響の評価と、配管に存在する分岐部による検出感度の低下を評価する。そして、検出可能な異物やき裂サイズの評価も行う。ここでは、令和4年度に導入した統計学的な異常判定方法が効果を発揮することが期待できる。さらに、金属配管異常検出の高感度化のために、異常検出に最適な金属管内電磁波伝搬モードの検討や、最適な計測周波数帯域の検討も行う。さらに、今まで計測誤差に影響を与えていた真円度が低い金属配管は、令和5年度中に全て高真円度のものに置き換えられているため、令和6年度はより高精度な計測実験が実施出来る見込みである。 そして追加の実施内容として、令和5年度の計測実験中に発見した、複数異物による広帯域電磁波伝搬特性強度の特徴的な変化も併せて探求する予定である。本研究テーマの申請書では、単一の異物が存在する場合のみを研究対象としていたが、本研究目的である実際の工場プラントで用いられている金属配管検査では、異物が単体であるとは限らないためである。この複数異物による広帯域電磁波伝搬特性の解析結果が得られれば、本研究テーマが目的とする電磁波を用いた金属配管保守管理における有効性が大きく広がることになる。 そして、金属配管異常検出の高感度化のために、異常検出に最適な金属管内電磁波伝搬モードの検討や、最適な計測周波数帯域の検討も行う。このために、電磁波シミュレータの導入も検討している。これは、金属管内に存在する異物近傍の電磁波伝搬モードは実験では分かりづらいため、電磁波シミュレータによる電界・磁界の分布を可視化し、本研究における実験結果解析のための一助とする予定である。
|