研究課題/領域番号 |
22K04628
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分25020:安全工学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
高松 邦吉 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 高速炉・新型炉研究開発部門 炉設計部, 研究主幹 (70414547)
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研究分担者 |
舩谷 俊平 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (50607588)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 安全工学 / 原子力工学 / 格納容器 / 受動的安全性 / ふく射 / 対流 / 高温ガス炉 / 新型炉 / 熱工学 |
研究開始時の研究の概要 |
自然災害により発生した福島第一原子力発電所事故の後、深層防護の観点から炉心損傷の防止対策が重要になった。安全上優れた特性を有する冷却設備に関する研究は、極めて重要なテーマである。一方、外気(大気)の自然循環を用いた除熱方法は、外乱の影響を受け易いため、自然災害が発生した場合、除熱能力が著しく減少する可能性がある。 そこで自然対流や自然循環よりも、できるだけ放射冷却や輻射を用いたRPV冷却設備を開発する。同時に、自然循環RPV冷却設備及び応募者が提案する放射冷却RPV冷却設備の安全性研究を実施する。自然災害発生時でも、放射冷却RPV冷却設備は安全に確実に除熱できることを実証し、安全工学に貢献する。
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研究実績の概要 |
(目的)自然循環冷却方式や放射冷却方式を実用化するためには、通常運転時、及びあらゆる自然災害発生時でも、事故時の崩壊熱を受動的に除去できるのか、安全性を評価する必要がある。 (評価)冷却方式の構造の違いと外部パラメータが冷却に及ぼす影響を検討した。自然循環冷却方式は、通常運転時、外気と共にダクト内に取り込まれた可燃物が熱交換面で熱せられ、低温発火が発生する。可燃物が取り込まれないよう、ダクトの入口にフィルターを設置しても、ビニール袋1枚がフィルターに吸い付けば、ダクトが詰り、自然循環流量はゼロとなり、熱交換面の温度は急上昇する。自然対流熱伝達率に影響する外部パラメータ数が多いため、自然循環の不安定現象や流体振動等が発生すると、除熱能力が低下する。台風や豪雨等の自然災害発生時、自然循環冷却方式は外気の擾乱の影響を受け易いので、除熱能力が低下する。一方、通常運転時及び自然災害発生時も、放射冷却方式は安全に確実に除熱できること、自然循環冷却方式よりも事故時の安全性を高められることを明らかにした。 (解析・実験)実機を等倍縮小したスケールモデル(伝熱試験装置)を用いて実験を行い、実機とスケールモデルのGr数を比較したところ、いずれも乱流であることを確認し、スケールモデルで得られた実験結果は有用であることを確認した。実用高温ガス炉で求められるRPVからの除熱量は3kW/m2である。自然循環冷却方式も約3kW/m2である。放射冷却方式は除熱量3kW/m2を大幅に上回り、除熱量7kW/m2を解析的に達成し、除熱量8.2kW/m2を実験的に達成した。また、実機における熱交換面積の増加は原子炉出力の増加に繋がり、熱交換面積の変化は除熱量のコントロールに繋がる。 (まとめ)本冷却設備の成立性を示し、RPV表面から放出される熱を除去可能であることを明らかにした。今後も積極的に外部発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度の研究実施計画に沿って研究を実施した。自然循環冷却方式や放射冷却方式を実用化するためには、通常運転時、及びあらゆる自然災害発生時でも、事故時の崩壊熱を受動的に除去できるのか、安全性を評価する必要がある。 そこで、冷却方式の構造の違いと外部パラメータが冷却に及ぼす影響を検討した結果、自然循環冷却方式は、通常運転時、外気と共にダクト内に取り込まれた可燃物が熱交換面で熱せられ、低温発火が発生することがわかった。仮に可燃物が取り込まれないよう、ダクトの入口にフィルターを設置しても、ビニール袋1枚がフィルターに吸い付けば、ダクトが詰り、自然循環流量はゼロとなり、熱交換面の温度は急上昇することがわかった。また、自然対流熱伝達率に影響する外部パラメータ数が多いため、自然循環の不安定現象や流体振動等が発生すると、除熱能力が低下することがわかった。さらに、台風や豪雨等の自然災害発生時、自然循環冷却方式は外気の擾乱の影響を受け易いので、除熱能力が低下することがわかった。一方、通常運転時及び自然災害発生時も、放射冷却方式は安全に確実に除熱できること、自然循環冷却方式よりも事故時の安全性を高められることを明らかにした。 平行して解析及び実験も実施した。実機を等倍縮小したスケールモデル(伝熱試験装置)を用いて実験を行い、実機とスケールモデルのGr数を比較したところ、いずれも乱流であることを確認し、スケールモデルで得られた実験結果は有用であることを確認した。本冷却設備の成立性および有用性を解析的にも実験的にも実証することができた。また、実機における熱交換面積の増加は原子炉出力の増加に繋がること、熱交換面積の変化は除熱量のコントロールに繋がることを明らかにした。それらの成果の一部を、日本原子力学会、山梨講演会、ICAPP及びICONEで発表した。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度に実施した詳細解析および実験を参考に、今後もスケールモデルを用いた実験をさらに進める。具体的には、受動的な安全性を最大化するために、放熱材として大きな熱伝導率を持つ銅製のフィンを熱交換面に追設し、熱交換面積を増加させる。放射冷却RPV冷却設備の内部に、銅の繊維を多孔質状に配置し、RPV表面から発生した熱を拡散・発散させることで、放熱効果を高め、RPV周辺部の温度を効果的に下げる。以上により、実用高温ガス炉で求められるRPVからの除熱量3kW/m2に対し、さらなる除熱量の増加及び原子炉出力の増加が期待できる。 また、令和4年度に実施した評価を参考に、通常運転時及び自然災害発生時、自然循環RPV冷却設備よりも放射冷却RPV冷却設備の方が、安全に確実に除熱できること、事故時の安全性を高められることを「実験」で実証する。具体的には、断熱性がよく、水分を含まない多孔質化した木材の繊維を熱交換面に貼り付け、意図的な低温発火を試みる。自然循環RPV冷却設備は、煙突効果をできるだけ促進させるために、熱交換面の温度を250~300℃と高く保っており、低温発火が懸念される。一方、放射冷却RPV冷却設備は熱交換面の温度が100℃以下と低いため、低温発火は発生しない。 学会発表については、令和5年度も積極的に報告する予定である。
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