研究課題/領域番号 |
22K04667
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26010:金属材料物性関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
藤浪 眞紀 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (50311436)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 陽電子消滅 / 格子欠陥 / オペランド計測 / 水素脆化 / その場分析 |
研究開始時の研究の概要 |
従来の水素脆化に関する研究は,個々の研究は完結していても,相互にみると矛盾点がある。また,外部因子の影響を大きく受けるため水素感受性と相関がとれず,普遍的な結果が得られなかった。本研究は,応募者の近年の水素誘起欠陥検出の経験から課題解決するための計測法の着想と解決策を提案したものである。水素脆化現象は,水素により空孔-水素複合体形成が促進され,それらが局所ひずみ場に高密度集積することで塑性不安定化を引き起こすという仮説を立て,その仮説実証に必要な陽電子消滅法による欠陥挙動の計測課題を解決し,その実証に迫る。
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研究実績の概要 |
本研究では,水素脆化支配欠陥を明らかにするため,陽電子消滅法におけるオペランド計測法を開発して,水素環境下かつ応力負荷状態での欠陥分析をすることにある。開発したオペランド陽電子消滅法により純鉄に応用した。その結果から,4%,6%,10%ひずみ量ともに水素添加・応力負荷状態で空孔-水素複合体が形成,応力負荷状態では水素添加を停止しても空孔-水素複合体は安定に存在,6%ひずみで応力除荷により空孔クラスター形成開始,空孔-水素複合体の形成には転位に伴う転位運動が必要といった成果をあげた。また水素の拡散係数が5桁も小さいオーステナイト系ステンレス鋼においても,本オペランド計測が応用できることを確認した。その成果としては,純鉄と同様の挙動を示すことがわかり,フェライト系でもオーステナイト系でもその素過程は同じことを示唆したことがあげられる。 また,破面直下の空孔分析として陽電子プローブマイクロアナライザーを応用する。それにより,水素脆化支配欠陥の成長過程を考察するうえで非常に重要である。試料として,水素添加Niの粒界破面直下および焼戻しマルテンサイト鋼の破面直下の分析を行った。その結果,Niの粒内破壊で破断面直下での空孔クラスター形成,Niの水素添加時の粒界破壊で空孔形成の高密度化を検出,焼戻しマルテンサイト鋼の水素脆化(弾性領域)での粒界破壊における空孔の関与をといった成果をあげた。 以上の結果を日本鉄鋼協会の秋季大会学生ポスターセッションで学生二名が発表したところ,一人は優秀賞,もう一人も奨励賞を受賞し,その成果を評価していただいた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初のマイルストーンにしたがって研究計画は順調に進んでいる。オペランド計測においては,あわせて水素添加のみのその場計測も組み合わせて,データの確からしさを担保していく。陽電子プローブマイクロアナライザーでは加速器を陽電子源として使用しているため,そのマシンタイムや装置の不具合による使用停止も考慮し,計画に支障の無いよう対応している。
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今後の研究の推進方策 |
オペランド陽電子消滅計測における今後の展開としては,SCM435など実用鋼への応用がある。合金元素の影響をどのように見積もるかが重要となるが,まずは検出欠陥と力学特性の因果関係を実測して,すべきことを検討していく。ステンレス鋼においてもフェライト系であれば,水素の拡散係数も高いので,実用鋼のモデル試料として候補となる。もう一つは純鉄で加工履歴を制御することで生成欠陥を制御して,水素脆化因子となる水素誘起欠陥を決定していく予定である。 陽電子プローブマイクロアナライザーによる破面直下空孔分析における今後の展開においては,Niにおいて破面全面が水素脆化粒界破断面になるようにすること,試料サイズを1 mm幅程度に広げることで空間分解能を補填していく。さらに空孔の種類を確定するため,アニールによる欠陥回復温度を求めていく予定である。焼戻しマルテンサイト鋼の破面では,粒界破面・擬へき開破面・粒内破面(延性破壊)を同一面上で識別可能なものを調製し,応用していく。さらなる応用として,純鉄の破面,フェライト系ステンレス鋼の破面などを検討する予定である。
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