研究課題/領域番号 |
22K04677
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26010:金属材料物性関連
|
研究機関 | 久留米工業大学 |
研究代表者 |
江藤 徹二郎 久留米工業大学, 工学部, 教授 (70322295)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | マンガン化合物 / MnCoGe / マルテンサイト変態 / 相転移 / 磁気熱量効果 / 高圧力 / MnM'X系化合物 / 圧力効果 / 3d強磁性化合物 |
研究開始時の研究の概要 |
現代の冷凍技術には、気体冷凍方式と呼ばれる産業革命期の古い技術が主に用いられている。しかし気体媒体によるオゾンホールの形成や、決して高くない冷凍効率による地球温暖化への影響から、高冷凍能力を備えた固体媒体材料の開発が望まれてきた。本研究では、マンガン系磁性化合物を対象に、コストと環境の両面に優しい“固体磁気冷凍材”の実用化に向けた知見を得ることを目的とする。さらに結晶構造と磁性の相関、その相転移の熱力学などにも研究領域を広げ、圧力をパラメータとして詳細に上記化合物の磁気熱量効果に関する基礎物性を検証する。また実用化に向けた新たな試みとして、複合化材料の評価も実施する。
|
研究実績の概要 |
Mn系遷移金属化合物MM’X(M,M'=3d遷移金属元素、X=s,p元素)で表されるMn系遷移金属化合物 MnM'Xは、巨大な磁気熱量効果 (MCE) を示す物質系として近年注目を集めている。その中でMnCoGeはキュリー温度~345 Kの強磁性体で、約650 Kにて六方晶オーステナイト相から斜方晶マルテンサイト相構造へ変態(M変態)する。本研究の第一の目的は、このM変態のメカニズムを結晶構造、磁性、電子状態、および熱特性の観点から明らかにすることである。第二に、室温付近に大きなMCEを得るための知見(元素置換、組成比最適化)を得ることである。2022年度の実績を以下に述べる: 1.MnCo1-xGeの相転移現象の観測 Coの空孔効果を確認するため、x =0.0~0.25の範囲で磁化測定を実施した。x増に伴いM変態温度とキュリー温度が減少傾向を示したが、前者の減少が大きく、x~0.08にて両者の特性温度がほぼ約230 K近傍で一致した。2つの相転移が同時に発現することで、巨大な磁気熱量効果が見込まれる。磁気転移とM変態が結合した磁気構造結合(MSC)が現れているのかを今後検証する。 2.電気抵抗測定装置の開発 次年度での磁場下電気抵抗率測定システム開発に向けた第一ステップとして、100 K~450 Kの広温度域で測定可能な電気抵抗測定装置を製作した。真空装置と測定機器(定電流源、デジタルマルチメータ)以外のクライオスタット、真空配管、および温度調整システムは手作りで、LabVIEWによる全体の制御を行う。次年度以降にマグネットと組み合わせたシステムを開発予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MM’X系マンガン化合物の研究は、MnCo1-xGe合金でCo空孔効果を検証した。磁化測定は順調に進み、T-x相図を概ね完成することができた。来年度は磁気構造結合が起きているかを確認し、磁気熱量効果の測定を試みる予定である。 また、広温度域での電気抵抗測定装置の開発も順調に進捗した。温度制御でややばらつきが出る傾向があるが、PID制御パラメータの最適化で抑制できないか確認する。
|
今後の研究の推進方策 |
MnCo1-xGe合金において、構造相転移(M変態)と磁気転移(キュリー点)の一致がみられたので、磁気-構造結合型相転移が発現していないか2023年度以降に検証を実施する。同時に磁気熱量効果を測定し、磁気冷凍材としての可能性を見極めたい。またこれまでの研究で組成変化に伴う効果を測定できたものの、格子欠陥による副次的効果の影響を除去するのは困難である。2023年度下半期には圧力を連続的に制御することで、格子定数や原子間距離と、電子状態や磁性との直接的な関連性を調査したい。 広温度域での電気抵抗測定装置を作製したので、2023年度から磁場下での測定システムを開発し、磁気熱量効果との関連性を調査する。 また、MM’X化合物以外の磁気熱量効果材料として、強磁性ホイスラー合金Ni2MnGaにも着目している。理由は高価で希少な希土類元素を含まずに大きな磁気熱量効果が期待できるためである。本系については、Ni2-xMnGa1+x系やNi2Mn1-xVxGa系合金における組成依存性、および圧力依存性を検証している。2023年度から2024年度の間に基礎物性の調査を完了させ、現象論の立場から本系の相転移について知見を深めていく計画である。
|