研究課題/領域番号 |
22K04684
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
齊藤 元貴 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (00749278)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 電子顕微鏡 / 蛍光体 / ルミネッセンス / 窒化アルミニウム / ドーパント / カソードルミネッセンス / 電子エネルギー損失分光 / 複合分光 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、酸素、カーボン、Si、Euをドープした窒化アルミニウム(AlN)基蛍光体を燃焼合成し、その発光メカニズムを複合電子顕微分光により解明する。従来、局所領域からの発光スペクトルの取得は困難であり、蛍光体中のどこがどのように発光しているかを理解するには限界があった。本研究では、透過型電子顕微鏡で数nmの局所領域からカソードルミネッセンス(CL)スペクトルおよび電子エネルギー損失分光スペクトルを同時に取得し解析する複合電子顕微分光を用いて、結晶粒内、粒界、表面、欠陥など、局所領域の発光スペクトルと、ドーパントの価数や配位状態、結晶構造を同時に分析することで発光メカニズムを解明する。
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研究実績の概要 |
本研究では、白色LEDに適用可能なAlN基蛍光体の燃焼合成、および複合電子顕微分光を用いた発光メカニズムの解明を目的としている。2022年度は、Eu2O3、Si3N4、Al、希釈材AlNを原料として窒素雰囲気で燃焼合成を行うことで、AlNにEuをドープした青色蛍光体の合成に成功した。電子顕微鏡による観察の結果、Euは、AlN内に形成した積層欠陥にドープされ、そこではSiやOの濃度が増加していることがわかった。即ち、EuのドープにはSiとOが必要であることが明らかとなった。 2023年度は、材料組成を最適化するため、添加するSiとEu濃度を変化させて材料を合成した。合成物中のAlとSiに対するEuの割合を0.5%と固定し、Siの割合を5~20%の範囲で変化させた結果、Si濃度を5%から10%に増加させると発光強度が増加した。しかし、Siを20%まで増加させると発光強度は減少し、α-Si3N4が不純物として形成し、青色と黄色の混ざった発光を示した。電子顕微鏡によるカソードルミネッセンススペクトルとEDSの複合分光分析を行った結果、Euがドープされたα-Si3N4が黄色発光を示し、ここでEuはCa-αSiAlONのCaサイトと同様の位置に侵入固溶していることがわかった。次に、Eu濃度のみを増加させた場合は、発光強度は大きく増加しなかった。EuとSiを同時に増加させた場合は発光強度が著しく向上することがわかった。 一方、カソードルミネッセンスとEDS検出器を搭載した走査電子顕微鏡による分析の結果、蛍光体粒子ごとの組成や発光強度のばらつきが大きく、EuやSiがドープされていない粒子も存在していることがわかった。これは、燃焼合成は加熱時間が短時間であるため元素が十分拡散せずばらつきが生じたためと考えられる。この組成のばらつきを評価するとともに、組成を均一化することが今後必要であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
材料組成を最適化し、発光特性に優れたAlN基蛍光体を合成できたため。また、電子顕微鏡によるカソードルミネッセンスとEDSの複合分光により、不純物粒子の組成と構造、発光特性を明らかにすることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度、2023年度はEuドーパントの侵入サイト等、よりミクロな視点から特性の解明を進めてきた。研究を進めていく中で、粒子ごとの組成の違いなど、マクロな観点からの統計的な分析が、特性を制御する上で重要であることがわかってきた。今後は、合成した粒子ごとの組成や発光特性のばらつきを、統計的な手法を用いて評価検討する予定である。さらに、材料をより均質化するために、液相を形成するフラックスの添加を検討する。
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