研究課題/領域番号 |
22K04689
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
豊田 昌宏 大分大学, 理工学部, 名誉教授 (00290742)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ハイパーコール / 多孔質炭素 / 電気二重層容量(EDLC) / 比表面積 / ミクロ孔 / 表面官能基 / 亜歴青炭 / 賦活処理 / 多孔質炭素材料 / カーボンニュートラル |
研究開始時の研究の概要 |
これまで燃料としての用途だけであった HPC (Hyper Coal)を貧溶媒で沈殿として析出させ粉体を得られる事を明らかにし、その熱処理で多孔質炭素が賦活処理なしで調製できることを見出した。提案では、賦活処理、あるいは鋳型を用いることなく多孔質炭素材料を得る新しい試みで、それらを経ず多孔質炭素を直接得る事ができれば、従来の多孔質炭素の調製手法にない新しいプロセスが確立できる。また,カーボンニュートラルに向けた工程の簡略化にも結びつく。さらに,多孔質材料の形成メカニズムを解明することができれば、これまでの多孔質炭素材料の調製、あるいはその形成概念を根本から置き換えることができる。
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研究実績の概要 |
瀝青炭由来HPC HPC(B-HPC)を出発原料に用いて沈殿法により得た炭素粉末は,市販の活性炭(YP-50F)と比較して比表面積が小さいにも関わらず,EDLC電極材に適用した場合に市販の活性炭と同程度の容量を示したことを報告してきた。また,本研究で用いた低品位の亜瀝青炭由来HPC(SB-HPC)を出発原料に用いた場合,B-HPCを用いた場合と同様に市販の活性炭と比較して比表面積は小さいものの,EDLC電極材に適用した場合に,市販の活性炭およびB-HPC由来炭素粉末を上回る容量を示すことを明らかにしてきた。今年度は,HPC由来炭素粉末のEDLC特性に及ぼす要因を表面特性等から検討した。 SB-HPCおよびB-HPC由来炭素粉末のN2ガス吸脱着等温線とas解析により算出した全比表面積(Stotal),ミクロ孔比表面積(Smicro),外比表面積(Sext.)およびミクロ孔の平均細孔径(Dave)の結果から,いずれの炭素粉末においても低相対圧領域(P/Po = 0付近)での吸着量はSB-900で130 cc/g,B-900で80 cc/gを示し,ミクロ孔の形成が示唆され,SB-900はB-900と比較して吸着量が多いことからより豊富なミクロ孔を有することが推察された。一方,高相対圧領域(P/Po = 0.8 ~ 1)において B-900は吸着量の増加が認められたことから,ミクロ孔だけではなくメソ孔の形成が示唆されたものの,Smicro / Stotal が0.71であることから主としてミクロ多孔性であった.StotalはSB-900で737 m2/gを示し,B-900の400 m2/gと比較して大凡1.8の比表面積を有し,SmicroにおいてもSB-900はB-900よりも大凡1.9倍大きく,as解析からもB-900と比較して豊富なミクロ孔を有することが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SB-HPCおよびB-HPC由来炭素粉末のN2ガス吸脱着等温線とas解析により算出した全比表面積(Stotal),ミクロ孔比表面積(Smicro),外比表面積(Sext.)およびミクロ孔の平均細孔径(Dave)の結果から, SB-900はB-900と比較して吸着量が多いことから,より豊富なミクロ孔を有することが推察された。一方,高相対圧領域(P/Po = 0.8 ~ 1)において B-900は吸着量の増加が認められた。このことから,ミクロ孔だけではなくメソ孔の形成が示唆されたものの, StotalはSB-900で737 m2/gを示し,B-900の400 m2/gと比較して大凡1.8の比表面積を有し,SmicroにおいてもSB-900はB-900よりも大凡1.9倍大きく,as解析からもB-900と比較して豊富なミクロ孔を有することを確認した。また,SB-HPCとB-HPC由来炭素粉末および市販の活性炭(YP-50F)の電流密度50 mA/gにおける充放電曲線の各放電曲線の0.2 V ~ 0.8 Vの範囲から算出した電流蜜50 mA/ gにおける静電容量は,SB-900で284 F/g, B-900で210 F/g,YP-50Fで238 F/gを示すことを明らかにした。さらに,重量あたりおよび体積あたりの静電容量の電流密度依存性を比較したところ,電流密度1000 mA/gにおいてもSB-900は重量あたり,体積あたりの静電容量がSB-900および市販の活性炭よりも大きいことが明らかにした。これらの試料を用い,予定通り電気二重層容量まで測定を行い,その特性の比較も行えたこと,更に,結晶性の比較まで検討が始まったことから,概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針として,以下について検討をおこなう。 ・EDLCの静電容量は,電極表面に形成された電気二重層に基づく電気二重層容量と電極表面の含酸素官能基による疑似容量が存在する。このことから,SB-HPC由来炭素粉末がB-HPC由来炭素粉末と比較して,EDLC電極材に適用した場合に高容量を示した要因を表面含酸素官能基量から検討する。 ・900 oC で熱処理したそれぞれの炭素粉末のN2ガス吸脱着測定おいて,SB-HPC由来炭素粉末はB-HPC由来炭素粉末と比較して高い比表面積を示し,EDLC電極材に適用した場合の容量においても高容量を示したことから,より微細な細孔特性を検討できる Ar吸着測定により細孔特性を検討する。 ・SB-HPC由来およびB-HPC由来炭素粉末をEDLC電極材に適用した場合に,SB-HPC由来炭素粉末が高容量を示した要因を結晶構造の比較から検討する。
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