研究課題/領域番号 |
22K04702
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
村田 秀信 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 助教 (30726287)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 層状複水酸化物 / 緻密体 / 水熱ホットプレス法 / 再構築反応 / イオン伝導 / インターカレーション / 再水和 / X線吸収分光 / 遷移金属元素 / インフォマティクス |
研究開始時の研究の概要 |
層状複水酸化物(LDH)は粘土鉱物として天然に産出するものも多く,人工合成が容易で,大気下での安定性が高いため,古くから研究が行われてきた.しかしLDHの機能材料への応用は未だ限定的であり,その殆どが層間へのインターカレーション分子の機能を利用したものである. 本研究では遷移金属のLDHに着目し,電圧印加時の素過程を実験と第一原理計算によって解析したうえで材料探索し,電気化学デバイスとしての実証実験を行うことで新デバイスの創出に道を拓くことを目指す.
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研究実績の概要 |
作製法を確立したNi-Al層状複水酸化物(LDH)高配向緻密体を試料として、緻密体の性状の評価を進めるとともに、LDH内のイオンの拡散に関して熱的および電気的な観点から検討を行った。 作製した緻密帯に関しては、水熱ホットプレス条件と評価方法を精査することにより、結晶構造から計算される密度との相対密度がほぼ100%に達していることを確認した。また、再構築反応を利用することで、選択配向性の低い緻密体も得られるようになり、LDHの水酸化物層の層間、層内に分けて特性評価することができる試料準備を確立することができた。 熱処理および再構築反応による陰イオン拡散の検討については、粉末X線回折、X線吸収端近傍構造、赤外分光を用いることで、Ni-Al LDHでは親和性が高い傾向がある陰イオンでは緻密体では反応が表面のみに留まっており、親和性が低いと考えられているヨウ化物イオンでは内部まで反応が進行するということを明らかにした。これは、親和性の高い陰イオンでは、表面近傍において層間に陰イオンが安定化することで蓋をする形になり、内部まで進行しなくなったと考えられる。 一方、交流インピーダンス法によるイオン伝導率測定では、炭酸型Ni-Al LDHでは層状構造の面間方向、面内方向ともにイオン伝導率が低く、十分なイオン伝導性は発現していないことが確認された。これはLDHとの親和性の高い炭酸イオンが含まれることが原因の一つで有ると考えられ、熱処理および再構築反応から得られた知見とも調和する。 また、Ni-Al以外の陽イオンの組み合わせに関しても検討を開始しており、二元系(Mg-Al, Ni-Mn, Mn-Alなど)に加えて三元系(Ni-Mn-Alなど)に関しても単相試料の合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までにLDH緻密体の作製方法および選択配向の制御方法については確立しており、LDH内の陰イオンの拡散については、親和性が高いと妨げになるため親和性が低いイオンが望ましいといった知見が得られた。この結果はLDHの層間に導入する陰イオン種を変えることで、イオン伝導種を制御することにつながると考えられ、新しい電気化学デバイスの創生へとつながることが期待できる。 一方で、現在までに取り組んできた炭酸型Ni-Al LDH緻密体では、室温近傍のイオン伝導率が低く、電気化学デバイスとして使用が難しいという状況がある。これまでに熱的な観点から分析してきたイオンの拡散に関する知見を活かし、陽イオン・陰イオンの組み合わせを最適化することにより、LDH緻密体の改良が必要であるが当初から想定していたことであり、LDH緻密体を改良するための方策にも取り組んでいる。 以上から、概ね当初の研究計画通りの進捗であると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究において、LDH緻密体の作製や選択配向性の制御、イオン伝導率の測定環境の構築は完了しており、最終年度ではイオン伝導の観点での研究を進めて新しい電気化学デバイスの創生を試みる。 Ni-Al LDH緻密体では室温近傍のイオン伝導率が低いため、陽イオン・陰イオンの組み合わせや多種類への拡張を行うといったLDH自体の改良を進める。 また、選択配向性を制御したLDH緻密帯に関しては様々な特性の異方性が期待できるため、イオン伝導以外の特性評価も進めて成果へとつなげる。
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