研究課題/領域番号 |
22K04711
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26030:複合材料および界面関連
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
中村 仁 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 准教授 (30771513)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 骨修復医療 / 生体材料 / ケイ酸カルシウム / 医用無機イオン / 骨芽細胞 / 医用材料 / ケイ酸 / 分子構造 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究提案では、分子構造を制御したケイ酸イオン種を作り上げ、その分子構造と、骨芽細胞による取り込み挙動との相関を調べる。これにより、ケイ酸イオン種の骨形成促進作用の基礎科学を明らかにすることを目指す。このケイ酸イオン種は、ソルボサーマル手法によるケイ酸塩セラミックスの精密合成プロセスを駆使して作り上げる。骨芽細胞がケイ酸イオン種を取り込む際に分子構造が与える効果を、細胞培養試験と計算科学的手法を組み合わせて解析する。さらに骨芽細胞の増殖挙動と骨形成マーカー遺伝子の発現量を調べ、ケイ酸イオン種の取り込み挙動との相関を明らかにする。
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研究実績の概要 |
セラミックスから溶け出た水溶性のケイ酸イオン種は、無機化合物でありながら骨芽細胞の遺伝子発現を活性化し骨の形成を促進する。従来の研究では、 Bioglass45S5と呼ばれる特定組成のケイ酸塩ガラスからの溶出物について、濃度依存的な細胞応答が調べられてきた。一方で、ケイ酸イオン種は多様な分子構造 を取りうるが、その分子構造を軸に骨芽細胞への寄与を検討した例は他に見ない。 本研究では規則的な分子構造を持つケイ酸イオン種の創出に向け、その鋳型となる化合物として層状ケイ酸カルシウム水和物(CSH)に注目した。CSHは直鎖状のケイ酸を含む層状化合物であり、シラン分子を出発原料に添加することで任意の量の有機官能基を導入できる。 咋年度までに、プロピル基を導入したCSHを合成し、材料からは1~3量体のプロピル修飾ケイ酸イオン種が溶出されることを明らかにした。さらに、このイオン種を含む培地中ではマウス骨芽細胞様細胞の骨分化マーカーの発現量が多くなることを突き止めている。 この種の細胞応答が、ケイ酸イオン種を溶出する足場材料においても同様に発現するか確かめるために、本年度はCSH、またはそのプロピル修飾体とポリカプロラクトンからなる有機-無機複合足場材料を作製し、マウス骨芽細胞様細胞の細胞接着性を調べた。 これらの足場材料上で7日間細胞培養し、骨分化マーカーの発現量を調べた際、足場材料間で有意な差は見られなかった。一方、21日間培養した際の生細胞数をCCK-8アッセイにより調べた結果、有機修飾割合の高い試料において細胞増殖が促進される傾向が見られた。これらの足場材料から培地へのケイ酸イオン種の溶出は浸漬7日間までにほぼ完了し、それ以降の培養期間ではケイ酸の溶出が極めて少量であることも突き止めている。これらの結果は、有機修飾ケイ酸イオン種による骨分化の促進効果が濃度依存的に生じることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、当初の予定であった有機修飾ケイ酸と細胞応答との相関について、イオン種含有培地およびイオン種溶出型足場材料の2つの系での比較を行うことができ、イオン種の構造と濃度が共に細胞応答に寄与するとの知見が得られた。これらに加え、有機修飾ケイ酸カルシウムへの薬剤担持に関する基礎検討も実施でき、得られた成果を1報の論文として報告している。よって、当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度で確立した手法をもとに、イオン種含有培地およびイオン種溶出型足場材料の2つの系での細胞応答を調べるとともに、RT-PCRを用いた骨代謝関連遺伝子の発現量の解析に着手し、ケイ酸イオン種による細胞の骨分化促進の機序の解明をめざす。
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