研究課題/領域番号 |
22K04724
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26030:複合材料および界面関連
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
高橋 紳矢 岐阜大学, 工学部, 助教 (40377700)
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研究分担者 |
武野 明義 岐阜大学, 工学部, 教授 (70227049)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | メソポーラスフィルム / 窒化ホウ素ナノチューブ / 親水性カーボンナノチューブ / 動的ぬれ性 / はっ水湿潤性 / 異方ぬれ / 油水分離膜 / 周期メソポーラスフィルム / セルロースナノファイバー / 大気集水性 / ローズペタル効果 / はっ水付着性 / ぬれの異方性 / ナノサイズ粒子 / 複合ポリプロピレンフィルム |
研究開始時の研究の概要 |
高いぬれの異方性と撥水だが付着性も同時に有する高分子フィルムを開発するための発現機構の解明とその機能制御手法について検討する。 いわゆるバイオミミック材料の中には主に特徴的な表面形態を創り出すスマート界面材料がある。我々も水滴などの液滴付着性や滑落性に異方性のある、イネの葉表面に似た構造を高分子フィルム表面で形成させることに成功しているが、接着機能の強弱を方向で制御することに加えて、ペタル効果と呼ばれる撥水だが水を付着する特徴的な表面機能を発現する機構の解明と用途開発に関しては途上である。 そこで、その鍵となる特異的ぬれ性を学術的な機構解析から探り、撥水付着性の発現機構と用途を検討する。
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研究実績の概要 |
1.ナノ材料を埋め込んだポリプロピレン複合材の作製と評価 ポリプロピレン(PP)フィルムにクレーズ複合を施し、ナノ材料埋込用の微多孔フィルムを作製した。続いて、このフィルムに基準となるカーボンナノチューブ(CNT)以外のナノ材料を埋め込んだ複合材試料を調製した。 2.種々のナノ材料を埋め込んだ同複合材の界面化学特性 埋込ナノ材料として、カルボキシル基付与CNT(CNT-COOH)、ポリオキシエチレン鎖導入CNT(CNT-PEG)および窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)を用いた。CNT-COOH、CNT-PEGおよびBNNTの表面自由エネルギー(SFE)と表面酸素濃度を測定したところ、CNT-PEG、CNT-COOH、CNT、BNNTの順に低い値を示したことが確認され、埋込材の界面化学特性を考慮したPP複合素材の総合ぬれ性の検討が可能となった。一方、PP複合素材表面の走査電顕像を比較観察したところ、CNT-COOH/PPやCNT-PEG/PPとBNNT/PPでは、微多孔相内の埋込形態に明確な相違があり、ぬれ性に対する表面形状効果も確認された。動的ぬれ性を評価したところ、セルロースナノファイバーを埋込材とした前年度の結果と同様、ナノ材料の外殻表面の極性と上述の表面形態に依存した対水ぬれ性、水滴付着力を示すことが判明した。反して、高い疎水性をもつ無機材料を埋込材としたBNNT/PPの動的ぬれは、他の複合素材のそれらとは異なっており、結果として上記の埋込形態の差異に依存したことが明らかとなった。前年度で示唆されたように、ナノ材料の埋込集合構造に起因した凝集力が、複合素材の特異的ぬれ性にとって重要であることが分かった。 3.CNT/PP複合材の油水分離能 油水分離膜としての利用を目的とした評価を開始した。膜表面の親・疎水性や埋込形態に依存した分液性能を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1) 総合的な動的ぬれ性の評価において、当初の予定であった液滴の形態評価(滴形状や滴の上面観察)やそのダイナミクス検証がある程度可能になったが、確実な手法の確立には至っていない。 2) カーボンナノチューブ(CNT)が水相環境で内包固定すると言われている極微量の水の定量的解析手法がまだ確立できていない。これに関係して、水付着性の増大がCNT内包水によるものであるという当初の予測と異なる結果が得られてきたのも理由の一つである。これにより、CNTなど、ナノ材料の微多孔相内凝集構造と水付着性との関係性の検証が必要となったので、目下、電子顕微鏡やプローブ顕微鏡を用いて最適な評価を行っている。 3) 大気集水性の検証において、新たに微多孔相作製工程の見直しが必要となり、クレーズ複合を多方向から行う工夫等を検討したが、一般材料との比較で、集水の優位性が見出せなかったため、本複合素材の応用について再検討が必要となった。 4) 当初予定した大気集水フィルムへの応用の代替として、油を含む工業廃水向けの分離膜(分液膜)の性能評価を開始した。最終年は、油水分離膜としての能力評価と改良に向けた検討を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度と同様に、今年度でも、埋め込むナノ材料のもつ極性に依存した界面化学特性が発現するという新たな知見が得られたこと、異方ぬれや水付着性が微多孔相内に埋め込まれたナノ材料の凝集形態に大きく依存することがほぼ確実になってきた。一方、本材料の大気集水能においては、フィルムへの着滴性に幾つかの特異性はあったものの、他の比較材料に対する優位性が見出せなかった。ゆえに、新たな応用先を、その表面特性から考え着いた。以上を踏まえて、最終年度は以下の方針で本課題について研究を実施する予定である。 A)これまで埋込み材のカーボンナノチューブ(CNT)は市販品を用いてきたが、今回から表面処理を施した親水・疎水化CNTを供試することとした。この利点は、表面処理程度によってCNTのグラフェン骨格への官能基導入率をある程度調整できることである。このナノ材料の埋込み濃度を考慮した試料群の界面化学特性、表面形態、最表面の化学組成解析をさらに進めて、発現する動的ぬれ性との関係性を確立する。とくに、水付着性とナノ材料の表面凝集構造の関係、接触角などに反映される材料表面の化学的寄与程度などの検証を進めていき、得られた総合的な動的なぬれ性から、はっ水湿潤性および異方ぬれとの機構的相関性を見出す。
B)本課題材料の新たな応用先として、油水分離(分液)膜の性能評価を行い、場合によっては分離効率の改善手段の確立を進める。具体的には、親水膜(透水性)、疎水膜(透油性)に分けた膜素材の改質と、その後の油水分離評価まで進め、有効性の決定を行う。可能ならば、分離機構に関して、膜表面での着滴における滴形成過程のin-situ観察・解析も行いたい。
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