研究課題/領域番号 |
22K04729
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26030:複合材料および界面関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
兼子 佳久 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 教授 (40283098)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 電気めっき / ナノ構造材料 / 傾斜組成材料 / 傾斜組成 / 硬さ / 積層構造 / electrodeposition / gradient composition / strength / thin film |
研究開始時の研究の概要 |
成長方向および面内に周期的な濃度勾配を有する合金めっき膜を成膜し,それらの力学的特性を評価するとともに,その強化原理を解明することを目的とする。本課題では電気めっき法を利用して「正と負の濃度勾配を有する傾斜組成層を周期的に配置させた合金膜」という新しい材料の開発を目指す。TEM/EDX法やX線回折法などを用いた微視的構造分析と転位論・弾性論をもとづく強度の理論的評価から強度発現機構を検討する。
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研究実績の概要 |
本課題では,傾斜組成を有するCr-Co合金膜の成膜を目指し,特に休憩電位の条件を検討した。めっき液には塩化クロムと硫酸コバルトを主成分とする電解水溶液を用いた。PC に接続されたポテンショスタットを用いて,基板と対極間に電位を与えた。任意の濃度変動となるように電位を連続的に変化させ,傾斜組成膜を成膜した。傾斜組成膜の厚さを4ミクロンとし,Cr 濃度が線形的に20at.%から80 at.%まで1往復変化するという濃度変動を目標とする電位波形を与えた。傾斜組成めっきをする電位を与える時間と電流が0 となる休憩電位の時間の条件を変化させた傾斜組成膜を数種類成膜した。傾斜組成膜断面をEDSで分析した結果,電位付加時間1s, 休憩時間3sの条件で成膜した場合,目標の組成とのずれが低かった。 また,Cr/Co多層膜の耐摩耗性を調査するために,種々の層厚さを有するCr/Co多層膜に対してすべり摩擦試験を実施した。実験に供した多層膜の層厚さは10/10nm, 30/30nm,100/100nm および300/300nmの4種類である。全体厚さは3ミクロンとした。摩擦試験の結果得られる重量損失速度を多層膜と単なるCoやCr合金膜と比較すると,層厚さ300nmの多層膜を除く多層膜の重量損失速度は合金膜のそれらよりも遅いことが確認された。多層膜間の比較では,層厚さが薄くなるにつれて重量損失速度が低下した。 さらにNi-Cu系については,2種類のパルス電位を組合わせた新しい合金めっき法に新たに着手した。パルスめっきにすることで,表面性状がより平滑になることが期待される。Ni-rich合金が析出する高電位パルスとCuが析出する低電位パルスのパルス比を変化させることで,任意の合金組成の膜が得られることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来の連続的に電位を変化させる傾斜組成膜めっきでは,得られるCr-Co系合金の濃度変動はは目標とする濃度変動に対して大きくずれていた。濃度変動が目標値からずれる原因は貴な金属イオンの枯渇が原因と予想し,イオン濃度を回復させるために連続電位変化の途中に休憩電位の挿入を試みた。休憩電位に関するduty比を適切に設定することで,任意の濃度変動を作成できるようになった。 Cr-Co系濃度変動めっきの実用性を検討するためにすべり摩擦試験を実施した。層厚さが薄い多層膜では非常に優れた耐摩耗性を示すことを明らかにすることができた。 濃度変動めっきを成膜する新たな取り組みとして,2種類のパルスを組合わせる電気めっき法を開発した。パルスの比を変化させることで任意の濃度のNi-Cu合金膜を作製することに成功している。 様々な方法で任意の濃度変動を有するめっき膜を成膜することに目処ができたので,残りはそれらの力学的特性と濃度変動との関係を調査するのみである。
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今後の研究の推進方策 |
Cr-Co系濃度変動膜については種々の濃度変更幅,濃度勾配,平均濃度のめっき膜を成膜し,それらの硬さを調査する。それと平行してXRD等で結構構造の濃度変動依存性を明らかにする。特に非晶質相形成とCr濃度との変動との関係に着目し,結晶/非晶質系の濃度変動膜の強度発現機構について考察する。また,Cr-Co系濃度変動膜の実用性を検討するために,めっき膜の熱処理試験を実施する。高い温度での熱処理ではCrとCoの相互拡散によって濃度変動構造は消失する可能性があり,構造や強度を維持する耐熱温度を明らかにする。 異なるパルスを組合わせるめっきでは,パルス組合せパターンを増やすために,従来2種類であったパルスを4種類程度まで拡張する。2種類の組合せでは任意の濃度を得るために非常に長いパルス数のパスルめっきを行う場合が存在するが,パルス電位の種類を増やすことによって短いパルス数でも任意の濃度が得られ,濃度勾配がより高い傾斜組成膜の成膜が可能になる。
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