研究課題/領域番号 |
22K04747
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26040:構造材料および機能材料関連
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
染川 英俊 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究センター, グループリーダー (50391222)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | マグネシウム / 極低温 / 変形双晶 / 力学特性 / 変形機構 / 偏析 |
研究開始時の研究の概要 |
水素社会到来を控え、安心・安全な軽金属材料の開発は必須である。本研究では、純マグネシウムと粒界や双晶界面に溶質元素偏析した二元系合金を対象としている。塑性変形中に新たな双晶が形成しない独自試験片を使用し、マイクロクラック法にて粒界/界面破壊に対する偏析元素の役割を理解し、『極低温環境下で壊れにくいマグネシウム合金』の組織設計指針を明示することを目的としている。
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研究実績の概要 |
汎用Mg合金と二元系Mg合金を対象に下記二件について実施した。 汎用Mg合金の極低温特性評価:<c>軸引張双晶を含んだAZ31合金を対象に、極低温引張特性に及ぼす双晶含有率および双晶界面偏析の影響について調査した。detwinning挙動(双晶収縮)に起因し、各試料の極低温降伏応力は、双晶を含まない押出材の降伏応力と比較して低下した。一方、引張応答は双晶含有率に影響を受け、高密度化にともない降伏応力が低減し、加工硬化が増大することが分かった。また、溶質元素が双晶界面に偏析することで、明瞭な降伏点が発現することを確認した。TEMを用いた変形組織観察から、detwinning界面近傍には多数の<c>成分を有する非底面転位が存在することを究明した。この転位痕跡は降伏後の大きな加工硬化挙動を指示し、極低温であっても延性付与の可能性を示唆する結果といえる。 二元系Mg合金の室温、極低温特性評価:昨年度創製した各種二元系希薄合金双晶含有材を対象に、室温および極低温引張特性を評価した。加えて、元素効果を検証するため、純Mg双晶含有材に関する特性も調査した。前記AZ31合金の結果と同様に、双晶を含んだ二元系合金と純Mgの降伏応力は、添加元素や試験温度に関係なく低減することを確認した。また、従来の塑性応答と同じく、試験温度の低温化にともない降伏応力、流動応力が上昇した。他方、二元系合金は類似した微細組織からなる(結晶粒サイズや双晶含有率がほぼ同じ)にもかかわらず、双晶界面に偏析する元素によって降伏応力や破断伸びが異なることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度報告時の研究計画では、①二元系希薄合金双晶含有材の極低温力学特性に関するデータ取得と破壊、変形機構を理解すること、②添加元素依存性の有無や特異性を識別するため、純Mg双晶含有材の室温・極低温応答を調査すること、③微小き裂核生成に着目した局所粒界・界面塑性評価を開始すること、を予定していた。①、②について、計画通り実施し、それぞれ有益な知見を取得した。③について、試験片形状と寸法決定に時間を要し、着手段階にある。しかし、当初計画に挙げていなかった汎用材:AZ31合金を対象に、極低温塑性応答に対する双晶界面および偏析元素の役割に関する知見を取得することができた。本研究の考察や総括の際に、極めて重要な結果であることから、「概ね順調に進んでいる」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度実施計画していた局所粒界・界面塑性評価を実施し、極低温環境下における微小き裂核生成とdetwinning挙動を調査し、偏析元素との相関性について検討する。また、二元系合金の変形組織観察によって、双晶界面近傍の組織変化(亜粒界の形成や非底面転位運動など)を調査し、破壊、変形機構に対する界面偏析元素の役割を理解することに努める。他方、界面偏析は極低温延性の阻害因子になり難いことが分かってきた。延性能付与に寄与する元素指針を明示するために、計算科学を援用し、twinning-detwinning頻度に及ぼす影響因子の探索にも挑戦する。 次年度は本研究課題の最終年度となる。研究総括はもとより、学会発表や学術誌発表などの成果発信に注力する。
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