研究課題/領域番号 |
22K04763
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26050:材料加工および組織制御関連
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
福室 直樹 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (10347528)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | めっき / 金属水素化物 / 電気化学反応 / 水素侵入 / 水素熱脱離スペクトル |
研究開始時の研究の概要 |
めっき膜中に侵入した水素はひび割れやふくれ、物性の経時変化、および素地金属の水素脆化などの様々な問題を引き起こすが、めっき条件によって複雑に変化する析出過程の水素侵入については詳細な知見が得られていない。本研究では、電解および無電解めっきの電気化学反応における金属中への水素侵入の機構を解明し、これを制御することによってめっきにおける水素の問題を根本的に解決する。また、パラジウム水素化物PdHxの水素濃度xを電解チャージによって制御して合成する条件を確立し、結晶構造と水素の存在状態、および超伝導特性を解析する。さらに、高圧力下での電解チャージによって新規高水素濃度PdHxを合成することを試みる。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は二つあり、①めっきにおける水素侵入の制御と、②超化学量論的水素化物の電気化学合成とキャラクタリゼーションである。 研究目的①では、無電解銅めっき膜中に共析した水素の存在状態を明らかにするとともに、添加剤による水素の共析量の減少と存在状態の変化について解析した。無電解銅めっきに用いられているロッシェル塩浴とEDTA浴のいずれにおいても、銅めっき膜中に共析した水素は格子間水素、空孔-水素クラスター、およびナノボイド中の分子状水素として存在することがわかった。ロッシェル塩浴ではニッケルイオンの添加によって格子間水素が減少し、EDTA浴ではビピリジルの添加によって格子間とボイド中の水素が減少することが明らかにされた。電解パラジウム(Pd)めっき膜については、昇温脱離スペクトル(TDS)と同時に示差走査熱量計(DSC)による測定を行った。その結果、水素脱離とともに発熱が観察され、水素脱離に伴なう格子収縮の進行は空孔の残存に起因することが示唆された。無電解Ni-Pめっきによってアルミニウム(Al)合金中に侵入した水素は、Al母相中の格子間、空孔、粒界、および析出物の周囲などの様々なトラップサイトに存在することがわかり、これらのうち室温放置2週間後も存在する空孔-水素クラスターと粒界にトラップされた水素が水素脆化の原因となることが示唆された。電気化学的水素透過法による電解Niめっき中の水素透過量の測定については、測定前の残余電流を低下させる測定条件を確立し、安定したデータが得られるようになった。 研究目的②では、高圧力下でPd箔に電解チャージを行って高濃度水素化物PdHxを合成した後、電解めっきによってZnまたはAuを被覆して水素脱離を防ぐことを検討した。常圧下ではZnめっきによって水素脱離を抑制できることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的①の無電解銅めっきについては、EDTA浴からの銅めっき膜中に共析した水素の量と存在状態を解析した結果を英文論文にして、学会で発表した。ロッシェル塩浴からの無電解銅めっき膜中の水素の存在状態についても論文投稿の準備をしている。電解Pdめっきについては、Pd膜中の水素の存在状態について解析した結果を日本金属学会誌の論文とし、これを英文化してMater. Trans.誌に投稿した。、現在、その後の研究成果について論文を執筆している。無電解Ni-PめっきによるAl合金中への水素侵入については、軽金属学会誌に速報論文を発表し、その後の研究成果をまとめて論文を執筆している。このテーマについては他大学と共同研究を行っており、共著者として論文2報が出版されている。電解Niめっきについては透過水素の測定が安定して行えるようになったところであり、まだ研究成果の発表に至っていない。 研究目的②については、高圧力容器が故障したため常圧下でPd箔への電解チャージ後の電解めっきを検討し、その成果を学会で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
研究目的①の無電解銅めっきについては、900 Kよりも高温で脱離するナノボイド中の分子状水素の量と圧力を調べるため、比重測定、透過電子顕微鏡観察、およびX線小角散乱測定を行う。また、他の添加剤を用いて銅めっき膜中への水素共析が低減する機構を解析する。電解Pdめっきについても無電解銅めっきと同様に、900 Kよりも高温で脱離するナノボイド中の分子状水素の量と圧力を調べる。電解Niめっきについては、電気化学的水素透過法による電析中の水素透過量の測定とともに、Ni膜中に共析した水素の量と存在状態をTDSによって分析し、めっき浴のpHと濃度、添加剤の種類と濃度などの析出条件による水素の生成量、透過量、および共析量の変化を調査する。また、Ni膜の結晶構造解析と透過電子顕微鏡観察を行って、水素の透過と共析との関係を解析する。 研究目的②では、故障した高圧力容器の修理と改良が近日中に終わる予定であり、容器が戻り次第、高圧力下でPd箔に電解チャージとその後の電解めっきを行って高濃度水素化物PdHx (x > 1)の合成を試みる。また、電解液に入れた還元剤を高圧力下で反応させて水素を飽和溶解させ、水素の化学ポテンシャルを増大させた状態で電解チャージを行って高濃度水素化物を合成することを試みる。
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