研究課題/領域番号 |
22K04765
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26050:材料加工および組織制御関連
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研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
松井 良介 愛知工業大学, 工学部, 教授 (00632192)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | 形状記憶合金 / TiNi合金 / ステント / 表面性状 / 耐食性 / 疲労 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では現行ステント同等以上の耐久性を有し,且つ血管拡張力の高い超弾性ステントの開発を目的とする.この目的を達成するため,以下の項目に取り組む. ①熱処理を最小限に抑えた加工プロセスを確立する ②表面の超平滑化および薄く均質な不動態皮膜を形成させる 本研究は,TiNi形状記憶合金を用いた医療デバイスの開発が大きく進展し,社会貢献につながる重要な位置づけにある.
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研究実績の概要 |
本研究は概ね順調に進んでいる.本年度の主な成果は以下の通りである. 1点目は拍動負荷を受けるステントのFEM解析である.ソルバーにMSC. Marcを用い,直径が変動する拍動モード負荷を加えて応力やひずみ等の評価を行った.その結果,拍動モード(直径が変化する実用に近い変形モード)において,直径7mm以下に縮径すると応力誘起マルテンサイト変態に伴うラジアルフォースの水平段が現れることを明らかにした.さらに,本解析モデルはステントの変形特性を精度よく再現できることを示した. 2点目は拍動モードにおける疲労寿命の実験的な評価である.既に本研究で作製している拍動モード疲労試験装置を用い,空気を圧力媒体としてステントの疲労試験を実施した.その疲労破断面観察から,ストラット内側には延性破壊に特徴的なディンプルが存在することを明らかにした.拍動モードにおける疲労き裂はストラットの外側から内側に進展し,ストラット軸に対して垂直に破断する傾向があると言える.これは曲げ応力が支配的に働くためである. 3点目は疲労寿命改善の取り組みの一つに設定している表面性状の改善である.具体的には酸洗いと電解研磨によってレーザーカット後に生成される酸化物の除去と平滑化に取り組んだ.その結果,硝酸メタノール電解液を用いた電解研磨は本ステントの表面改質に有効であり,介在物が明瞭に見られるほどの鏡面を得ることが可能である.ステントの支持にTi線を用いることで,ステント全体に均一な研磨効果が得られる. 2024年度はさらなる疲労寿命の向上に向け,計画に従って研究を推進する.まずFEM解析においては,拍動モードにおいてステント直径とラジアルフォースの関係が実験値とやや乖離が見られるため,この点の改善に取り組む.表面改質においては,さらなる表面性状の改善を目指して電解研磨の条件最適化を行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度の課題としていた下記の3項目について進展がみられた. 1点目は拍動負荷を受けるステントのFEM解析である.ソルバーにMSC. Marcを用い,直径が変動する拍動モード負荷を加えて応力やひずみ等の評価を行った.その結果,拍動モードにおいて,直径7 mm以下に縮径すると応力誘起マルテンサイト変態に伴うラジアルフォースの水平段が現れることを明らかにした.さらに,解析結果の応力集中箇所と実験で得られた疲労破断箇所が一致し,押し込み反力やラジアルフォースも再現できていることから,本解析モデルはステントの変形特性を精度よく再現できることを示した. 2点目は拍動モードにおける疲労寿命の実験的な評価である.既に本申請研究で作製している拍動モード疲労試験装置を用い,空気を圧力媒体としてステントの疲労試験を実施した.その疲労破断面観察から,ストラット内側には延性破壊に特徴的なディンプルが存在することを明らかにした.拍動モードにおける疲労き裂はストラットの外側から内側に進展し,ストラット軸に対して垂直に破断する傾向があると言える.これは曲げ応力が支配的に働くためである. 3点目は疲労寿命改善の取り組みの一つに設定している表面性状の改善である.具体的には酸洗いと電解研磨によってレーザーカット後に生成される酸化物の除去と平滑化に取り組んだ.その結果,硝酸メタノール電解液を用いた電解研磨は本ステントの表面改質に有効であり,介在物が明瞭に見られるほどの鏡面を得ることが可能である.ステントの支持にTi線を用いることで,ステント全体に均一な研磨効果が得られる.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は以下の課題に取り組む.さらなる疲労寿命の向上に向け,ステントの表面性状改善に取り組む必要があると考えている.この点については既に計画に盛り込んでおり,その計画に従って研究を推進する. まずFEM解析においては,拍動モード(直径が変化する実用に近い変形モード)においてステント直径とラジアルフォースの関係が実験値とやや乖離が見られるため,この点の改善に取り組む.現状は,レーザーカット後に拡張した形状が真円形状になるようモデル化しているが,実際にはレーザーカット後(拡張前)の横断面形状が真円になっている.そこでレーザーカット後の形状モデル(横断面が真円形状)を作成し,これを拡張させたり収縮させたりしてラジアルフォースを求める方法を試行する. 表面改質においては,さらなる表面性状の改善を目指して電解研磨の条件最適化を行う.本材料においては表面性状の良否が電解研磨条件に敏感であるため,より詳細かつ高精度に条件設定を行う必要がある.その後,電解研磨品に対して拍動モード疲労試験を実施し,疲労寿命の改善度合いを評価する.
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