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レーザー誘起改質法による超短時間での電子貯蔵型 WO3/W 光電極の形成

研究課題

研究課題/領域番号 22K04767
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分26050:材料加工および組織制御関連
研究機関長岡工業高等専門学校

研究代表者

平井 誠  長岡工業高等専門学校, 電気電子システム工学科, 准教授 (00534455)

研究分担者 藤田 直幸  奈良工業高等専門学校, 電気工学科, 教授 (90249813)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
キーワードレーザー誘起改質法 / 光電気化学的水分解 / 電子貯蔵型光電極 / 酸化物半導体 / 水素生成 / 光電気化学 / 結晶構造 / 配向制御
研究開始時の研究の概要

本研究の目的はレーザー誘起改質法によって、超短時間で W 基材から電子貯蔵型 WO3/W 光電極を作製することである。従来は、成膜装置や電気炉を用い高温環境下で複数のステップが必要なために、最低でも 5 時間以上を要した。本研究では、大気圧・室温下における In-situ (その場) でのレーザー処理のみにより、W の表面を WO3 層に改質させる。酸化物層の形成はレーザー光が金属により吸収され、W 表面の温度が局部的に上昇することで起こる。これにより、時間を要する真空排気・成膜や電気炉による焼成といったプロセスを除ける。さらに WO3/W の結晶・配向性を制御し、電子貯蔵機能も発現させる。

研究実績の概要

令和4年度の研究において、λ = 532 nm と355 nm の波長の異なる2種類のパルスレーザーを用いて、タングステン (W) 基板の酸化の度合いを見積もることができた。令和5年度は、単斜晶構造の酸化タングステン (WO3) 膜の配向性の制御が電子貯蔵機能に与える影響を中心に調査した。真空蒸着およびスパッタリング法を用い、フッ素ドープ酸化スズ (FTO) がコーティングされているガラス基板上にW膜を成膜し、熱処理によって酸化した。WO3 膜の厚さを 0.42 ~ 5.6 μm の範囲で変化させることで、結晶配向を (200) 結晶面から (002) 結晶面に移行させた。X線回折 (XRD) 法において、(200) 結晶面に対する (002) 結晶面の強度比を rp として定義した。(002) 優先配向の高いWO3 光電極では、60秒間の光照射後、入射光が完全に遮断されても光電流が流れ続けた。これは、水素タングステンブロンズ (HxWO3) 相の形成により、光遮断後、貯蔵された電子が水素生成に寄与していると言える。rp = 42 の WO3 光電極の光電流密度は、72秒後に入射光が遮断される前の値の10分の1になった。この貯蔵電子の解放時間は、(200) 優先配向および非配向のWO3 光電極と比べて、著しく長かった。実際、rp = 2.0×10-3 ~ 1.0 の範囲である WO3 光電極においては、貯蔵電子の解放時間が1.0 秒程度であった。従って、WO3 結晶の欠陥を通した水素イオンの拡散は [002] 結晶方向において起こり易いと考えられる。また、(002) 優先配向の増加により、膜全体において WO3 相から HxWO3 相への構造変化が促進される。これにより、多くの電子が膜内に貯蔵されるため、暗所での水素生成が改善されたと言える。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度の研究では、WO3 結晶相の配向を膜厚によって制御することと、(002) 結晶面に優先配向した WO3 膜の電子貯蔵機能を明確することに注力した。WO3 光電極に光を照射すると、光電流密度は J = 0.13 mA/cm2 で一定となり、水素が安定して生成できた。光照射によって WO3 光電極内で励起した電子は、電解液中においてPt対極に移動して水素を生成する。また、水素イオンの一部が WO3 の結晶構造に取り込まれ、水分解中に HxWO3 相が形成される。水素イオンが WO3 格子に入ると、電子が非局在化して結晶構造全体に広がって貯蔵される。一方で、ランダムに配向した多結晶構造を有する WO3 膜では、光照射中にHxWO3 相がほとんど形成されない。従って、WO3 光電極における HxWO3 相の効果的な形成過程を解明することは、非常に意義深いことと言える。本年度の研究では、WO3 膜の膜厚が0.42 ~ 3.5 μm の範囲において、膜厚が増加することによって励起電子量が増加した。しかし、3.5 μm を超える膜厚では、十分な光が届かない不要な膜厚が励起電子の移動の妨げになったと考えられる。XRD測定の結果から、作製した WO3 膜のピーク強度比は、rp = 2.0×10-3 ~ 91 の範囲であった。そして、WO3 の膜厚が約 1.3 μm を超えると、(002) 優先配向が実現された。WO3 光電極に貯蔵した電子の解放時間は rp = 42 で 72 秒の最大値を示し、その後は rp が増加しても 40 秒程度で飽和する結果となった。これより、膜厚によって WO3 膜の配向を制御できることと、(002) 優先配向を有する WO3 光電極は優れた電子貯蔵機能を有することがわかった。

今後の研究の推進方策

令和6年度は、高い電子貯蔵機能を有する WO3 膜を、レーザー誘起改質法を用いて効果的に形成することを目指す。これまでの研究から、レーザー照射による酸化の度合いと、配向が膜厚によって制御された単斜晶構造の WO3 膜の電子貯蔵機能を明確にした。高温での熱処理は、FTO 層の導電率低下やガラス基板の変形といった重大な問題を引き起こす。従って、熱処理では実現できない、高度に局所化された熱源としてパルスレーザーを用い、より性能の優れた WO3 光電極の作製に繋げる。レーザー誘起改質法を用いた本システムはガルバノスキャナを備えており、レーザー光をピンポイントで膜表面に照射できる。これまでに熱処理のみによる WO3/W 光電極の作製も試みており、XRD測定の結果から、600 °Cから単斜晶系 WO3 に起因した結晶相が現れ始め、W 基材表面が WO3 層で一様に覆われるのは 800 °Cからであることがわかった。さらに、900 °Cで熱処理した WO3/W 光電極においても光照射による水素生成が確認できた。上記より、低温において高い水素生成機能を実現するには、局所化した熱源を効果的に用いることが必要不可欠である。また、レーザー照射の利点には、WO3 膜の比表面積が向上できる点も挙げられる。レーザー照射により形成が予想される膜内の結晶粒界や欠陥は、WO3 膜の不連続性に繋がる。これまでの研究から、WO3 結晶の欠陥を通した水素イオンの拡散は [002] 結晶方向で起こり易いと言える。従って、レーザー照射により形成された優先配向を有する WO3 膜において、これまで以上に光電流密度が向上することも期待できる。そこで、電子顕微鏡を用いて、レーザー照射後の表面状態を調べ、WO3 膜の電子貯蔵機能との相関についても明確にする。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (2件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Relationship between crystal orientation and energy storage capacity in WO3 photoelectrodes for water splitting2024

    • 著者名/発表者名
      Makoto Hirai, Keita Tsuzuki, Fumihiro Tamura and Naoyuki Fujita
    • 雑誌名

      Journal of Applied Physics (under revising)

      巻: -

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Crystal facet engineering for WO3 photoelectrodes with energy storage ability2023

    • 著者名/発表者名
      M. Hirai, I. Hanyu, F. Tamura and N. Fujita
    • 学会等名
      The 1st KOSEN Research International Symposium, KRIS No. 28 (2023).
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際学会

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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