研究課題/領域番号 |
22K04777
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26050:材料加工および組織制御関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
高橋 智 東京都立大学, システムデザイン研究科, 准教授 (80260785)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 遮熱コーティング / ガスタービン / 結晶構造 / 透過型電子顕微鏡 / 温度推定 |
研究開始時の研究の概要 |
電力の安定供給を図るためにガスタービンの高温運転による高効率化が積極的に進められており,高温部品の使用環境は一段と厳しくなっている。高温部品には遮熱コーティング(TBC)が必須となっており、TBCの劣化を的確に把握し、余寿命を予測するためには、運転時のTBC表面温度を把握することが必要不可欠である。本研究では、TBCのトップコートとして代表的なZrO2-8mass%Y2O3(YSZ)コーティングについて、熱時効による結晶構造の変化に着目し、単斜相の割合ー熱時効温度ー熱時効時間との関係式を導き、使用済TBC施工部品における単斜相の割合に基づく新たな温度推定方法を開発する。
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研究実績の概要 |
高効率ガスタービンの高温部品には、遮熱コーティング(以下、TBC)が必須の構成要素となっている。TBCは金属のボンドコートと、遮熱性に優れたセラミックスのトップコートから構成され、トップコートとしてZrO2-Y2O3(YSZ)が利用されている。高温部品の使用環境は極めて厳しく、高温部品の損傷劣化診断や余寿命評価技術の確立が求められている。これらを実現するためには、高温部品の運転温度、すわなち、TBC表面温度を合理的に推定する技術が不可欠である。 本研究では,トップコートであるYSZコーティングについて,熱時効による変態挙動を調べ、単斜晶の生成メカニズムを解明する。さらに熱時効によって増加する単斜晶の割合に着目し,単斜晶の割合ー熱時効温度ー熱時効時間との関係式を導くとともに,この関係式を展開し,TBC表面温度を推定可能な温度推定方法を新たに開発することを目的とする。 TBCの代表的な成膜方法であるプラズマ溶射法を用い、Y2O3の割合が異なる数種類のYSZコーティング試験片に対して、温度と時間を変化させた熱時効を施し、学内の原子分解能分析電子顕微鏡(TEM)などを利用して観察・分析を行い、構造変化を調べた。その結果、高温で熱時効を施すと、YSZコーティングのスピノーダル分解によってYが弾性的に変形し易い特定の結晶面に自発的に拡散し、正方晶と立方晶へ相分離した変調組織を形成し、さらに熱時効が進むと正方晶の一部が単斜晶へ変態することを明らかにした。このような現象は、Y2O3の割合に依存し、Y2O3の割合が少ないYSZコーティングでは熱時効の早い段階で認められる一方、Y2O3の割合が多くなると単斜晶への変態が起き難くなることも確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単斜晶の生成メカニズムの本質を究明するために、TEM観察に取り組んでいる。観察試料作製にはノウハウが必要であり、さらに撮影した格子像などの結晶構造解析には,結晶学に関する専門的な知識が必要である。しかし、継続して粘り強く取り組むことによって、観察試料の作製技術が向上し、様々な結晶学的方位から観察した高分解能像なども得られ、さらに複数の解析ソフトを用いた結晶構造の解析も進むようになった。このように様々なノウハウを蓄積し、有意義な結果が得られつつあり、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きTEM観察等を実施し、単斜晶の生成メカニズムの解明に取り組む。さらに,単斜晶の割合ー熱時効温度ー熱時効時間との関係式を導出し、この関係式を展開し、TBC表面温度を推定可能な温度推定方法を提案する。これらの推定方法を使用済み実機TBC部材への適用を試みる。これらの成果を学会発表等を行い、提案手法の有効性をアピールする。
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