研究課題/領域番号 |
22K04778
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26050:材料加工および組織制御関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
瀧川 順庸 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 教授 (70382231)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 電解析出法 / 深共晶溶媒 / ニッケル / 亜鉛 / 結晶成長 / 塑性変形 / 強度 / 延性 |
研究開始時の研究の概要 |
深共晶溶媒を用いた低温での電解析出法において、結晶成長モード制御による、高強度・高延性合金の作製を目的とする。Ni、Fe合金等において、第一原理計算と実験により、脆化元素除去のための表面平滑化のための添加剤を探索する。得られた添加剤と合金元素を添加した電析浴において、添加元素の吸着により結晶成長が阻害されない電析条件を探索し、ミクロ欠陥のない合金を作製する。これにより、優れた機能性を発現するとともに、脆化元素およびミクロ欠陥フリーの材料創製による延性発現と、固溶強化、結晶粒微細化強化による高強度化を両立した、引張強度1.5 GPa、伸び10%を示す材料の創製を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、深共晶溶媒を用いた電解析出法において、結晶成長モード制御による、高強度・高延性合金の作製を目的として行っている。これまでに深共晶溶媒を用いた合金めっきの研究は実施されているが、塑性変形可能な試料の作製例はない。我々のグループでは、深共晶溶媒の一種であるジメチルスルホン浴からの電析により強度・延性バランスに優れたアルミニウム合金を作製した実績を有している。本研究は、これまでの知見を活かし、結晶成長モード制御により他の深共晶溶媒を用いた合金電析においても高強度・高延性を達成しようという研究である。 2023年度は、深共晶溶媒を用いた電解析出法による作製例が多いNiをモデル材料とし、2022年度に引き続き、機械的特性向上のための電析プロセスの最適化を行った。具体的には、電析温度や添加剤を変えて試料を作製し、機械的特性と微細組織を評価した。 電析温度の検討の結果、100℃以上の温度において延性が発現し、100℃以下では塩素の共析により延性が低下することが明らかになった。100℃において作製した試料の結晶粒径は100nm程度の微細粒と1μm程度の結晶粒の混粒であり、電析温度を120℃に上昇することにより結晶粒径1ミクロン程度の均一な微細組織を示す。120℃で作製した試料は20%の伸びが得られるが強度は400MPa程度と低い。高強度・高延性な材料を作製するためには添加剤の最適化が必要であることが明らかになった。 添加剤として、ホウ酸を添加した結果、結晶粒径300nm程度の均一な組織が得られ、引張試験の結果、強度950MPa、伸び8%を示した。さらなる添加剤の最適化を行い、延性の改善んを図るとともに、合金化を行う予定である。 また、深共晶溶媒を用いたZn電析プロセス最適化を行い、延性を有する試料の作製に成功した。Niと同様に、添加剤の最適化と合金化を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
深共晶溶媒を用いた電析Niについて、脆化元素である塩素の吸着制御に成功し、20%程度の延性の発現に成功している。また、添加剤による微細組織制御および強度・延性の向上にも成功している。さらに、電析Znにおいても、延性の発現まで成功している。現在、合金化のための準備を行っており、これらの結果から、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
合金化による高強度・高延性化とともに、延性発現のための結晶成長モードの水溶液からの電析との違いについての考察を行う予定である。 Ni電析については、純Niにおいて20%を超える伸びを示す材料が得られており、これを合金化することにより、結晶粒を微細化し、高強度・高延性化を目指す。微細化指針については第一原理計算による積層欠陥エネルギーが算出済みであり、これを指標として添加元素を選択する。 Zn電析についても、合金化による高強度・高延性化の可能性を検討する。Zn合金電析においては、水溶液系でも引張試験可能な合金作製の報告はなく、生体材料への応用可能な特性を目指して合金を作製する。 これまでの研究において、深共晶溶媒から電析した試料の配向と延性の関係は水溶液から電析した試料と異なることがわかっている。この違いについても検討していく予定である。
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