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柿タンニンとヨウ素を共固定したウイルス三次元捕捉場をもつ不織布フィルターの作製

研究課題

研究課題/領域番号 22K04809
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分27010:移動現象および単位操作関連
研究機関早稲田大学

研究代表者

斎藤 恭一  早稲田大学, 理工学術院, 客員上級研究員(研究院客員教授) (90158915)

研究分担者 常田 聡  早稲田大学, 理工学術院, 教授 (30281645)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
キーワードウイルス / 捕捉 / 柿タンニン / タンニン酸 / ヨウ素 / 放射線グラフト重合法 / ナイロン繊維 / 不織布 / 不活性化 / 接ぎ木高分子鎖 / 繊維 / N-ビニルピロリドン / 放射線グラフト重合 / ウイルス捕捉 / 不織布フィルター
研究開始時の研究の概要

新型コロナウイルスは、エンベロープ(外被膜)とその上にコロナ(王冠)状の突起タンパク質をもつ、直径が100 nmの球状の粒子である。植物ポリフェノールに属する柿タンニンが突起タンパク質に結合する、そしてヨウ素がエンベロープを構成する脂質二重膜を破壊する能力があることに本研究は注目する。これらの2つの物質を、イソギンチャクの触手のような高分子鎖の集合体(相)に固定して、ウイルスを多層で、すなわち三次元で捕捉する不織布状の材料を本研究では作製する。

研究実績の概要

繊維に付与したグラフト(接ぎ木)鎖がイソギンチャクの触手のような高分子鎖の集合体を形成することに着目し,本研究ではウイルスを三次元で捕捉する繊維を作製する。ウイルスと相互作用して捕捉する化学構造として柿タンニン(PT)とタンニン酸(TA)を選び,グラフト鎖に固定した。比較のため,4級アンモニウム塩基を有するビニルモノマー(ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド,VBTAC)と親水性モノマー(N-ビニルピロリドン,NVP)を共グラフト重合した繊維を作製し,TAを固定した。新型コロナウイルスを使った実験は費用の点から困難であるので,同様の構造をもつA型インフルエンザウイルスを使って実施した。
放射線グラフト重合法を適用して,市販のナイロン繊維を基材(出発材料)としてグリシジルメタクリレート(GMA)をグラフト重合した繊維にPTまたはTAを固定した。さらに,VBTACとNVPを共グラフト重合した繊維にTAを固定した。
本研究で作製した繊維の抗ウイルス活性は,JIS L 1922「繊維製品の抗ウイルス性試験方法」に準じて評価した。抗ウイルス活性値(Mv)を次式から算出した。
Mv = log(Va/Vc)
ここで,VaおよびVcは,それぞれ標準布および繊維のウイルス感染価である。抗ウイルス活性値が大きいほど,その繊維の抗ウイルス作用が強いことを意味する。上記のように作製した繊維の抗ウイルス活性を調べた結果,GMAグラフト重合繊維にPTを固定した繊維もTAを固定した繊維も抗ウイルス活性をほとんど示さなかった。一方,VBTAC/NVP共グラフト重合繊維にTAを固定した繊維は抗ウイルス活性値が4を超えた。4級アンモニウム塩基をもつグラフト鎖が正電荷をもつので,互いの静電的反発力でグラフト鎖が伸長し,その伸長によってウイルスのグラフト鎖相への侵入が促されると推察される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

新型コロナウイルスは,エンベロープ(外被膜)とその上にコロナ(王冠)状のタンパク質をもつ,直径100 nmの球状粒子である。本研究では,ウイルスを捕捉する化学構造として柿タンニンとタンニン酸を選び,グラフト高分子鎖に固定した。柿タンニンは植物ポリフェノールに属し,4種類のカテキンの重合体(平均分子量 11 kDa)である。柿タンニンはタンパク質との凝集作用によってウイルスの活性を著しく低減させることがノロウイルスやインフルエンザウイルスを使って実証されてきた。
本研究では,不織布フィルターへの応用を想定し,市販のナイロン繊維(繊維径 約50μm)を基材に採用して,放射線グラフト重合法によってグラフト鎖を繊維に付与した。まず,ボビン(繊維の集合体)にガンマ線を照射(照射量:20 kGy)し,繊維にラジカルをつくった。つぎに,そのラジカルを開始点としてエポキシ基を有するビニルモノマー(GMA)をグラフト重合させた。そのエポキシ基と柿タンニンとの反応によって,PT含有率1.8%の柿タンニン固定繊維を得た。一方,四級アンモニウム塩基をもつビニルモノマー(VBTAC)と親水性モノマー(NVP)の共グラフト重合繊維にタンニン酸を固定して,TA含有率18%のタンニン酸固定繊維を得た。
本研究で作製した繊維の抗ウイルス活性は,宿主細胞(イヌ腎臓由来細胞)にウイルス(A型インフルエンザウイルス)を感染させ,培養後,遠心分離によって細胞残渣を除去したウイルス懸濁液を使用して評価した。柿タンニン固定繊維とタンニン酸固定繊維とともに,標準布,ナイロン繊維,およびGMAグラフト繊維についても同様に評価した。その結果,柿タンニン固定繊維の抗ウイルス活性値は0.1という小さな値であったのに対して,タンニン酸固定繊維は抗ウイルス活性値4.3という大きな値を示した。

今後の研究の推進方策

放射線グラフト重合法には,基材(出発材料)の材質や形状を幅広く選択できる,そして基材のガラス転移温度より低い温度でラジカルを保存できるという利点がある。こうした利点を生かし,私たちの研究グループは,これまで,ポリエチレン製多孔性中空糸膜を基材としてタンパク質精製用のイオン交換多孔性中空糸膜やナイロン製繊維を基材として放射性セシウム除去用の不溶性フェロシアン化コバルト担持繊維を作製してきた。これらの材料は実用にまでに至っている。
放射線グラフト重合によって形成された高分子鎖の重量はグラフト重合に伴う基材の重量増加から容易に算出できる。一方,グラフト鎖の分子量分布や伸縮特性についての知見は不足している。それは,基材からのグラフト鎖の単離が難しいこととグラフト鎖の形成部位が基材の内部と外部に共存することに因る。
本研究で捕捉の対象である新型コロナウイルスは,エンベロープとその上にコロナ状のタンパク質をもつ,直径100 nmの球状粒子である。柿タンニンやヨウ素といったウイルスと相互作用する化学物質が報告されてきた。そこで,それをナイロン繊維に放射線グラフト重合によって付与した高分子鎖上に固定することには本研究は成功している。本年度のウイルス不活性化の試験結果から,ただ固定するだけでは不十分であり,グラフト鎖を伸長させてウイルスを包含する構造をもたせる必要があると示された。本年度,用いた芳香族の四級アンモニウム塩基をもつビニルモノマーVBTACに代えて,24年度には脂肪族の四級アンモニウム塩基をもつビニルモノマー(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム)を繊維にグラフト重合し,比較検討する。ビニルモノマーの試薬として値段が1/10であるので,ウイルス捕捉用繊維の製造コストの点で有利である。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] Reduction of supercooling of water using silver-iodide-immobilized fiber prepared by radiation-induced graft polymerization2022

    • 著者名/発表者名
      H. Kambara, K. Saito, M. Washio, T. Sugo
    • 学会等名
      RadTech Asia 2022(The 16th International Conference & Expo on UV/EB Curing in Asia
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際学会

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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