研究課題/領域番号 |
22K04812
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分27010:移動現象および単位操作関連
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
銘苅 春隆 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究チーム長 (30321681)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
中途終了 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
|
キーワード | 細孔内物質移動 / メソポーラスシリカナノ粒子 / ドラッグデリバリーシステム / 抗がん剤充填 / 脈動 / 物質移動 / ナノ粒子 / ドラッグデリバリー / メソポーラス構造 / 撹拌 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、マイクロ流路内の層流を利用して、ドラッグデリバリーシステム(DDS)の基材であるメソポーラスシリカナノ粒子(MSN)への抗がん剤の高効率な充填方法を開発する。マイクロ流路内の層流中では、一般的な撹拌で生じる乱流中とは異なり、メソポーラス構造内への効率的な物質移動が行われていると予想され、この特徴をMSNのメソポーラス構造への薬剤の充填工程に利用した新たなファインケミストリーの創出を目論む。また、流路幅、流速、撹拌時間等が薬剤充填率に及ぼす影響を調査し、層流中の物質移動のメカニズムを探る。さらに、MSNにFe3O4コアを導入して交流磁場印加による粒子トラップの効果についても検証する。
|
研究実績の概要 |
メソポーラスシリカナノ粒子(MSNs)をドラッグデリバリーシステム(DDS)の基材として活用するには、MSNsの細孔に効率的に抗がん剤を充填して、1個のDDSが腫瘍まで送達する薬剤の分量を最大化する工夫が低侵襲医療に繋がると考えている。しかし、従来の薬剤充填方法では、最高充填率が50%を越えておらず、より高効率な薬剤充填手法の開発が求められている。本研究代表者は、Milli-Q水内でのMSNsの物理的分解性評価実験の際に発見したポンプ駆動による循環撹拌により、MSNsの細孔に水分子が効率的に取り込まれた可能性を粒径分布測定結果より突き止め、ポンプ駆動によるマイクロ流路内での循環撹拌法をMSNsの細孔内への抗がん剤充填に応用することに思い至った。 評価対象として、Sigma-Aldrich社から購入したMSNsを用いた。商品カタログには粒径200nm、細孔径4nmと記載されている。抗がん剤としては、蛍光特性(励起:485nm、蛍光:590nm)を有するドキソルビシン塩酸塩(DOX)を選択した。溶媒はMilli-Q水(18.2 MΩ.cm)を用い、濃度1mg/mLのMSNs懸濁水と濃度10μg/mLのDOX水溶液を1.5mLマイクロチューブ内で500μLずつ加えて撹拌対象の試料とした。 計10種類(静置、回転ミキサー、ブロックバスシェーカー、水平/垂直置きボルテックスミキサー、攪拌子を伴うスターラー、チュービングポンプ、2ch独立駆動シリンジポンプ、リニア駆動脈動流制御送液ポンプ、スムーズフローポンプ)の撹拌方法で、それぞれ低・中・高の3水準の回転速度/流速で比較を行ったところ、リニア駆動脈動流制御送液ポンプとスムーズフローポンプ駆動による低流速での循環攪拌によって最大で92%近いの充填率を達成したものの、流速の上昇に伴う脈動の影響が無視できなくなり、充填率は70%台まで低下した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は、独自に合成したメソポーラスシリカナノ粒子を評価対象する計画であったが、単分散性は確保できたものの、平均粒径が500nmとドラッグデリバリーシステムの基材として使用するには大き過ぎたことから(理想は≦200nm)、市販されているメソポーラスシリカナノ粒子を使用した。しかし、本質的な目標である高充填のための最適条件の探求では、新たに2種類のポンプを加えた計10種類の撹拌方法において、3水準の回転速度/流速におけるドキソルビシン塩酸塩の充填率を調査し、脈動による影響も考察した上で最適条件を導き出した。特に、本研究課題にて購入した2ch独立駆動シリンジポンプ駆動による循環撹拌においては、脈動の影響が最も抑制されることを明らかにし、流速の他に撹拌時間と充填率の相関も調査した。既に、生化学分解性を有する有機シリカナノ粒子の高単分散性合成法について論文1報が掲載され、現在、ポンプ駆動の循環撹拌による細孔内への高効率物質移動について特許出願と論文投稿準備を進めており、以上のような理由から、おおむね順調に進展している、と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
独自に合成したメソポーラスシリカナノ粒子の粒径を小さくするために、独自開発技術である超音波撹拌によって発生するキャビテーション現象を用いた高単分散性ミセル形成技術を導入し、その効果を確認する。その上で、実際のがん治療への導入を加速するために、ドラッグデリバリーシステムの主流と成りつつあるFe3O4ナノ結晶を磁性コアとしたメソポーラスシリカナノ粒子の合成に着手する。ただし、Fe3O4ナノ結晶がメソポーラスシリカナノ粒子の中央に存在するとメソポーラス構造自体の深度が浅くなり、薬剤充填を阻害する可能性もある。そこで、本薬剤充填手法と磁性ナノ粒子誘導加熱解析システムを組み合わせて、利用実績のある市販のMicronit社製のマイクロ流体チップを交流コイル内に配置し、直線流路と蛇行流路中のメソポーラスシリカナノ粒子@Fe3O4に交流磁場を印加して、交流磁場によって連続流体中で揺らぎを加えることが、メソポーラスシリカナノ粒子@Fe3O4の細孔内へのドキソルビシン塩酸塩の充填率に与える影響を検証する。最終的には、最適なマイクロ流路形状が判明した段階で樹脂材料基板に流路を彫り込んだ独自の薬剤充填システムを試作する。
|