研究課題/領域番号 |
22K04820
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分27020:反応工学およびプロセスシステム工学関連
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研究機関 | 奈良工業高等専門学校 |
研究代表者 |
林 啓太 奈良工業高等専門学校, 物質化学工学科, 准教授 (10710783)
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研究分担者 |
中村 秀美 奈良工業高等専門学校, 物質化学工学科, 教授 (70198232)
島内 寿徳 岡山大学, 環境生命科学学域, 准教授 (10335383)
亀井 稔之 奈良工業高等専門学校, 物質化学工学科, 准教授 (70534452)
石井 治之 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授(テニュアトラック) (80565820)
岩崎 智之 愛媛大学, 学術支援センター, 助教 (50808847)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 自己集合体 / シリカ粒子 / 相分離 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は,ベシクルテンプレート法を用いたメッシュ状中空シリカ粒子の調製とリソソーム病への応用である.テンプレートにはDDAB/SDSベシクルを用いる.TEOS重合反応は塩基性条件下で進行する.負に帯電するヒドロキシイオンはDDAB相に集積しやすいため,重合反応はDDAB相で選択的に進行すると考えられる.これによりメッシュ状中空シリカ粒子の調製が可能であると考えられる.また,相の大きさを制御することで貫通細孔の大きさの制御が可能である.メッシュ状中空シリカ粒子にβ-Galを封入することで,タンパク質分解酵素によるβ-Galの分解を抑制しつつ,多糖の分解を促進することが可能となる.
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研究実績の概要 |
本年度は主にシリカ粒子のテンプレートとなるベシクルの特性解析と,このテンプレートを用いたメッシュ状中空シリカ粒子の調製に関して検討を行った.研究当初はdidodecyldimethylammonium bromide (DDAB)とsodium dodecyl sulfate (SDS)から構成されるDDAB/SDSベシクルを用いて検討を行う予定であった.しかし,DDAB/SDSベシクルは安定性が低く,本研究で行った条件では目的とする粒子が得られなかった.そのため,カチオン脂質として1,2-dioleoyl-3-trimethylammonium-propane (DOTAP)を用い,1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphocholine (DSPC),cholesterol (Chol)と混合してDOTAP/DSPC/Cholリポソームをテンプレートとした.蛍光プローブを用いた検討でDOTAP/DSPC/CholリポソームはDOTAP-rich相とDSPC-rich相に相分離することが明らかとなった.また,coumarinを用いた検討で,DOTAP-rich相界面は周囲の環境よりも塩基性であることが明らかとなった.このDOTAP/DSPC/Cholリポソームにtetraethyl orthosilicate (TEOS)を添加したところ,界面pHの違いによってTEOSの重合はDOTAP-rich相において選択的に進行することが明らかとなった.つまり,DOTAP/DSPC/Cholリポソームを用いることで,特定の部分のみがシリカ膜に覆われたメッシュ状中空シリカ粒子の調製に成功した.今後,このメッシュ状中空シリカ粒子にβ-galactosidaseを内包してタンパク質キャリアとして応用可能であるか議論する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DDAB/SDSベシクルを用いてシリカ粒子を調製した場合,非常に大きな粒子が形成された.明確な原因は明らかではないが,DDAB/SDSベシクルの安定性が寄与していると考えられる.TEOSが疎水領域に入り込み,形成された粒子同士がさらに結合することによってこのような大きな粒子が形成されたと考えられる.そこで,より安定性の高いDOTAP/DSPC/Cholリポソームを用いた.より詳細に検討するために,まずジャイアントユニラメラベシクル(GUV)を用いて検討した.GUVに1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N-(7-nitro-2-1,3-benzoxadiazol-4-yl) (ammonium salt) (NBD-DSPE)と1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N-(lissamine rhodamine B sulfonyl) (ammonium salt) (Rho-DOPE)を添加して共焦点レーザー蛍光顕微鏡により観察したところ,相分離が観察された.このGUVにTEOSおよびcoumarinを修飾したTEOSを添加して観察したところ,Rho-DOPEの蛍光が観察された相で選択的にcoumarinの蛍光が観察された.また,NBD-DSPEとRho-DOPEをそれぞれ光褪色後蛍光回復法により評価した.TEOSを添加していない場合,NBD-DSPEとRho-DOPEで回復に要する時間にあまり違いは観察されなかった.一方でTEOSを添加した場合では,NBD-DSPEは蛍光が回復したが,Rho-DOPEは回復が非常に遅かった.つまり,DOTAP-richで選択的にTEOSの重合が進行していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
次年度においては,DOTAP/DSPC/Cholリポソームをテンプレートとして,β-Galの封入を中心に検討を行う.液滴移動法を用いて内水相をβ-Gal水溶液とし,GUVを調製する.GUVにTEOSを添加することでシリカ粒子を調製する.内包するβ-Galは蛍光ラベル化することにより,どの程度内包されているか評価することが可能である.また,このGUVをガラス基盤に固定化してfluorescein di-β-D-galactopyranoside (FDG)および5-dodecanoylaminofluorescein di-β-D-Galactopyranoside (C12-FDG)を添加する.FDG,C12-FDGはβ-Galの基質として働き,分解されることで蛍光を示す.これにより,シリカ粒子に内包されたβ-Galの活性を測定することが可能となる.しかし実際には細胞が取り込みやすいサイズに調整する必要がある.GUVで検討した結果をもとに,ラージユニラメラベシクルをテンプレートとして同様にシリカ粒子を調製し,内包されたβ-Galの活性を測定する予定である.
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