研究課題/領域番号 |
22K04827
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分27030:触媒プロセスおよび資源化学プロセス関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
市橋 祐一 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (20362759)
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研究分担者 |
谷屋 啓太 神戸大学, 工学研究科, 助教 (30632822)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 光触媒 / 有機半導体 / 過酸化水素生成 / 抗菌作用 / 抗ウィルス作用 / 可視光応答性 / 有機半導体光触媒 / 過酸化水素生成反応 / 量子化学シミュレーション |
研究開始時の研究の概要 |
本提案では、可視光応答型有機半導体を光触媒として新規に合成し、それら光触媒による可視光照射下での水と酸素による過酸化水素生成反応活性について評価し、さらにその抗菌・抗ウィルス性能についても検討を行う。これら有機半導体光触媒の開発には量子化学シミュレーションを用い、得られた結果から最適な有機半導体光触媒を合成し、その有効性を検証する。
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研究実績の概要 |
可視光応答型有機半導体を光触媒として新規に合成し、それら光触媒による可視光照射下での水と酸素による過酸化水素生成反応活性について評価し、さらにその抗菌・抗ウィルス性能についても検討を行うことを目的とする。有機半導体であるピセンおよび、より安価なアントラセンやピレンに置換基を導入した誘導体を開発し、これらを光触媒とする可視光照射下での水と酸素による過酸化水素生成反応について検討した。DFT計算の結果から、可視光を吸収し、水の酸化反応を起こしうる触媒を探索し、5,8-ジシアノ-ピセンと13-カルボキシル-ピセン、2,7-ジシアノピレン、9-シアノアントラセン、9-ニトロアントラセン、9,10-ジシアノアントラセンの6種類を候補とし、合成を試みた。これら合成されたこれら触媒を用い、実際に可視光照射下での水の酸化による過酸化水素生成量について検討を行った。また、種々のキャラクタリゼーションの結果から、より効率的に可視光照射下で水を酸化し、過酸化水素を生成する触媒の探索を行った。さらに、高い過酸化水素生成活性を有する有機半導体光触媒を用い、可視光照射下での大腸菌の死滅効果について検討を行い、その活性発現についても種々のキャラクタリゼーションから、反応中に形成する活性酸素種が大腸菌を死滅させることが明らかとなった。さらに、最も大腸菌の死滅効果が高かった、9,10-ジシアノアントラセンを用い、インフルエンザウィルスに対する抗ウィルス作用についても検討し、可視光照射下はもちろん室内光下でも、高いウィルス死滅効果を有することを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度までの実験により、可視光照射下で効率的に過酸化水素を生成する有機光触媒の探索をDFT計算により行い、5,8-ジシアノ-ピセンと13-カルボキシル-ピセン、2,7-ジシアノピレン、9-シアノアントラセン、9-ニトロアントラセン、9,10-ジシアノアントラセンが条件に適応する触媒であると予測し、それぞれを合成し、5,8-ジシアノピセン<2,7-ジシアノピレン<13-カルボキシルピセン<9-シアノアントラセン<9-ニトロアントラセン<9,10-ジシアノアントラセンの順に可視光照射下で大腸菌の死滅速度が増加することを明らかとしてきた。これら触媒の抗菌活性の比較は過酸化水素生成量と同じ順であり、過酸化水素生成量と抗菌活性をプロットすると、極めて良い相関関係があることを明らかとしてきた。そこで、最も大腸菌の死滅効果が高かった、9,10-ジシアノアントラセンを用いて、インフルエンザウィルスに対する抗ウィルス性能について検討を行った。結果、可視光照射下で効率よくインフルエンザウィルスが死滅することが明らかとなった。さらに、室内光を用いる実験においても、効率よくインフルエンザウィルスが死滅した。 また、上記の触媒に加えDFT計算よりアクリジンも可視光照射下で抗菌・抗ウィルス作用を示しうることが推測されたため、可視光照射下で大腸菌の死滅実験を行った。結果、きわめて死滅させる速度が大きく、室内光での実験では、これまで最も活性の高かった9,10-ジシアノアントラセンの約3倍の速度であることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
アクリジンが大腸菌に対して高い抗菌作用を有することが明らかとなったが、より詳細な反応条件について検討を行うこととする。また、アクリジンを用いた抗ウィルス実験についても検討することとする。さらに、これまで開発してきた有機光触媒による活性発現の機構に関しても調査する。 本年度は、アルコール処理に弱いエンベロープを持つインフルエンザウィルスに対しての有機光触媒による抗ウィルス性能の検討を行ったが、アルコールに耐性のあるコクサクキーウィルスなどのノンエンベロープウィルスに関しても、開発した有機光触媒が可視光照射下で死滅さえることが可能であるかについて検討を行う。
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