研究課題/領域番号 |
22K04832
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分27030:触媒プロセスおよび資源化学プロセス関連
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
今井 裕之 北九州市立大学, 国際環境工学部, 准教授 (70514610)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | ゼオライト / 脱水素 / 脱水素環化 / アルカン / 金属複合体 / 遷移金属元素 / 貴金属 / ルイス酸 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、ゼオライトが持つ酸性質と金属との相互作用を利用して金属複合体を形成し、酸性質が金属に及ぼす効果や複合により発現する触媒機能の解明を目指す。特に、ゼオライト中に高分散した金属種に由来する特性に着目し、様々な構造や複数の金属を導入したゼオライトを開発して酸性質を制御することで、様々な性質を持つ金属複合体を合成する。そして、複数の機能が必要となるアルカンから芳香族化合物の合成において触媒性能を解明することで、酸性質に基づいて物性・触媒機能を制御した新たな金属材料の開発へと繋げる。
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研究実績の概要 |
本研究では,金属元素をゼオライト中に単原子状で導入して,さらに第二金属を複合させた金属複合体の形成を目指す。そして,アルカンの脱水素反応/脱水素環化反応に応用することで,金属元素のゼオライト中への導入および金属の複合により発現する触媒性能を評価する。本年度は,昨年度に引き続き,亜鉛含有ゼオライトと白金の複合体を基にして,ゼオライト触媒の合成条件が触媒の物性および触媒性能に及ぼす影響を検討した。 亜鉛含有ゼオライトに白金を複合させるため,様々な白金の錯体で複合を行い,錯体の電荷や構造が複合に及ぼす影響を検討した。n-ペンタンの直接脱水素反応に応用したところ,白金の錯体が正電荷を帯びていて,立体的なかさ高さが小さい化合物であるジニトロジアミン錯体やテトラアンミン錯体で高い脱水素活性を示した。電子顕微鏡を用いた分析から,脱水素活性が低い触媒では亜鉛と白金が均一に混合した粒子が観測されたが,一方で高い触媒性能を示す触媒では亜鉛と白金が独立に微粒子を形成して,それらが近接して複合した形状が観測された。亜鉛と白金の複合では,白金錯体の物性が複合体の形成に影響を及ぼし,均一に混ざるほど粒子サイズが巨大化することを見出した。また,亜鉛と白金が完全に融合・配列した粒子表面よりも,亜鉛と白金の界面が高い脱水素能を示す反応サイトになると推測される。 亜鉛含有ゼオライトと白金の複合の後,水素で還元することで高い脱水素活性を示す複合体が形成される。水素還元の条件による触媒性能への影響を検討したところ,高い水素濃度,長い水素流通時間(水素と触媒の長い接触時間)で,高い脱水素活性が発現したことから,水素還元を通して脱水素活性を示す複合体が形成されることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,金属元素のゼオライト内への導入と続く第二金属との複合を通して金属複合体を形成して,アルカンの脱水素/脱水素環化反応に応用することを目的としている。本年度は,亜鉛含有ゼオライトと白金との複合において,複合条件がゼオライト触媒の物性および触媒性能に与える影響を検討した。 白金源として4種類の白金錯体を用いて亜鉛含有ゼオライトとの複合を行い,また,金属の複合化のための水素還元条件(特に,水素濃度および水素流通量(接触時間))について,n-ペンタンの脱水素(環化)反応における触媒性能に及ぼす影響を検討した。その結果,白金錯体の物性(電荷,構造)により亜鉛と白金の複合粒子の物性(複合状態,粒子サイズ)が変化し,また,水素還元が高い触媒活性を示す複合体の形成の重要因子であることを見出している。ゼオライト合成におけるシリカ源,亜鉛源の影響の検討結果に本年度の結果を合わせることで,ゼオライト触媒の合成条件と触媒性能の相関関係の理解および設計指針を与えるための重要な情報となる。一方で,合成条件の各項目がゼオライト触媒のどの物性にどのように作用しているか,また,それらの物性と触媒性能との相関関係についても正確に把握するためにより詳細な検討が必要になる。 また,ゼオライト触媒の触媒作用を解明するために,n-ペンタンの脱水素(環化)反応における反応条件(温度,流通量)を変化させて反応速度に関する検討を行った。n-ペンタン,ペンテン,ペンタジエン,シクロペンテン,シクロペンタジエンと反応が進むこと,また,n-ペンタンの脱水素およびペンタジエンの環化で反応の障壁が高くなっていることを見出した。 以上のように,ゼオライト触媒の各種合成条件の検討により触媒設計に係る重要な情報が得られたことから,全体的に概ね順調に進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度において,ゼオライト触媒の合成条件である白金源の種類および水素還元条件が,亜鉛と白金との複合化および直鎖アルカンの脱水素(環化)反応における触媒性能に影響を与えることが見出された。これまでの結果を踏まえて,ゼオライト触媒の合成条件の各項目(亜鉛源,シリカ源,白金源,水素還元)がゼオライト触媒の物性(粒子サイズ・組成)および金属の複合化(金属の電子状態・粒子サイズ・分散度)にどのように作用しているのか,様々な分析装置を用いて分光学的に分析を行う。特に,電子顕微鏡観察が金属の複合化に関して重要な情報が得られることが分かったので,引き続き,ゼオライト触媒の物性解析のためにも電子顕微鏡での分析を行い,合成条件の違いによる比較検討を行う。また,直接的な分光学的分析に加え,プローブ分子をゼオライト触媒に吸着させた後のプローブ分子および金属の観察を通して分析を行う。 また,ゼオライトに導入する金属元素の拡充と触媒性能の制御のため,引き続き,亜鉛以外で,ゼオライト中への導入によりブレンステッド酸性を発現せず,ルイス酸性を発現するゼオライトの合成を行う。そして,第二金属を複合させて,金属の種類・組み合わせにより形成される複合体の物性の変化を分析・比較検討を行う。 合成したゼオライト触媒は,n-ペンタンの脱水素(環化)反応に応用して,脱水素能および環化能に関する触媒性能について解析を行う。さらに,n-ペンタンの脱水素(環化)反応における反応速度の検討結果を踏まえ,同じ炭素数で分岐構造を持つイソペンタンを用いて脱水素(環化)反応における触媒性能を引き続き検討する。これにより,直鎖と分岐の違いによる脱水素および環化における反応進行度への影響を明確にする。
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