研究課題
基盤研究(C)
石油の枯渇は世界的な問題であり、石油に代わる代替エネルギー資源の開発は必要不可欠である。石油に含まれる炭化水素は、主に燃料として利用される脂肪族炭化水素と、石油化学製品に利用される芳香族炭化水素に大別される。ラン藻を代表する微生物において、脂肪族炭化水素(アルカン)の生合成経路が明らかとなって以降、遺伝子組み換え生物によるアルカンの物質生産の研究が行われてきた。一方で、芳香族炭化水素を生合成する酵素はその報告例は1例のみであり、生物による芳香族炭化水素の物質生産の報告例はない。本研究では、世界に先駆け、芳香族炭化水素を生成する酵素を創成し、微生物による芳香族炭化水素の物質生産の実現を目指す。
石油は有限な資源で有り、石油を代替するサステイナブルな資源開発は喫緊の課題である。石油の主成分は炭化水素は、エネルギー資源として利用される脂肪族炭化水素と、化学工業原料となる方向族炭化水素に大別される。2010年にラン藻から軽油に相当する炭化水素(アルカン)を生成する2つの遺伝子が明らかとなり、遺伝子組み換え生物によるアルカンの生成が可能となった。一方で、芳香族炭化水素を生成する酵素は見つかっておらず、生物による芳香族炭化水素の生産は実現できていない。そこで、本研究では、脂肪族炭化水素を生成する酵素の基質認識を改変し、芳香族炭化水素を生成する新しい酵素を創出し、微生物による芳香族炭化水素の生成を実現することを目的とする。初年度は実験室のセットアップ、最低限の実験機器の購入といった、研究室の立ち上げに多くの時間を要した。本年度より、脂肪族炭化水素を生成した際の副産物となるギ酸を感知し、ギ酸の生成量に応じて蛍光を示す「ギ酸センサー大腸菌」の設計と構築が完了した。この「ギ酸センサー大腸菌」の培養液に、外部からさまざまな濃度のギ酸を添加すると、ギ酸濃度に応じた蛍光強度を示すことが確認した。複数の培地条件でギ酸センサー大腸菌のギ酸検出濃度範囲)を調べたところ、培地条件によって、その濃度範囲は異なることが明らかとなった。また、このギ酸センサーとして感知できる濃度範囲は本研究で必要とされるであろう低濃度のギ酸を検知することが難しいことも明らかとなった。そこで、本研究で必要とされる低濃度のギ酸も感知しうる『高感度ギ酸センサー大腸菌』について、センサーとなる転写因子の改良、より高感度の転写因子・プロモーターへの変換など、複数の戦略をもってその構築を進めている。
3: やや遅れている
昨年度、急遽独立し、研究室の立ち上げることとなった。昨年度に引き続き、研究室の研究環境の構築、研究機器の整備、試薬、消耗品の完備、必要なすべての遺伝子の人工受託合成と、発現ベクターの構築に時間を有した。ようやく、研究を進める上で最低限の実験環境が整ったため、年度後半より実験を開始した。遅れてはいるものの、短期間でギ酸の濃度に応じて蛍光を発する『ギ酸センサー大腸菌』の構築完了にいたった。遅れを取り戻すべく、必要な遺伝子については、人工合成遺伝子受託合成を利用し準備することで、時間の短縮を進め、次年度には研究予定の完遂を目指す。
芳香族炭化水素の基質を供給する人工代謝経路と『高感度ギ酸センサー大腸菌』について、人工合成遺伝子の受託合成を利用しその構築を急ぐ。並行して、脂肪族炭化水素合成酵素の大規模な変異体ライブラリを調整し、『高感度ギ酸センサー大腸菌』を用い、進化分子工学的手法による新規芳香族炭化水素生成酵素の創出を進める。本年度、ギ酸生成を検出するGCを購入した。次年度の予算で高感度検出機を購入し、低濃度のギ酸も検出できる測定系を立ち上げ、得られたギ酸生成酵素の性能評価を進める。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うちオープンアクセス 4件、 査読あり 4件) 学会発表 (7件) 備考 (1件)
Activity Report 2022 (Supercomputer Center, Institute for Solid State Physics, The University of Tokyo)
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