研究課題/領域番号 |
22K04841
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分27040:バイオ機能応用およびバイオプロセス工学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
二井手 哲平 大阪大学, 大学院情報科学研究科, 助教 (20802705)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 酵素設計 / 機械学習 / 耐熱化 / シミュレーション / 酵素工学 / タンパク質工学 / 構造モデリング / ドッキングシミュレーション / 合理的酵素設計 / 進化 / 進化学 / 酵素 / バイオインフォマティクス |
研究開始時の研究の概要 |
本申請では、耐熱化と基質特異性改変を目指した酵素設計のプロセス化に挑戦する。そのために、進化情報解析から配列保存度と共進化情報を取得し、これをRosetta設計時の制限パラメータとして活用する。本研究では、複数の酵素を対象に、ドライ実験(設計)とウェット実験(検証)を双方向的に実施することで汎用的かつ堅牢な酵素設計プロセスを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、設計した酵素の代謝工学応用を目指し、ドライ実験(設計)とウェット実験(検証)を双方向的に実施することで汎用的かつ堅牢な酵素設計プロセスを目指すことを目標としている。なかでも、酵素の基質・補酵素特異性を司るアミノ酸残基の同定から変換までのプロセス開発と、酵素の耐熱化を指向したアミノ酸残基の選択からin silicoスクリーニングまでの耐熱化酵素のプロセス開発の2つに取り組んでいる。 プロジェクト2年目はラジカルハロゲン化酵素の耐熱化に取り組んだ。本酵素はFeII-αケトグルタル酸依存酵素であり、不活性なsp3炭素-水素結合にハロゲンを付加することができる稀有な機能を持つが、40°C程度の温度で失活してしまうため、その利用が限定的であった。そこで本研究では、アミノ酸配列データから抽出した進化情報とRosettaソフトウェアによる構造シミュレーションを活用し、対象のラジカルハロゲン化酵素に効率的に変異を導入することで、85°C以上の条件でも変性しない超安定構造へと改変することに成功した。さらに、酵素活性は天然型と同等以上を保持しており、基質特異性も変化していないことを確認した。本研究で開発した手法は、ラジカルハロゲン化酵素だけでなく、構造情報を用意できるすべての酵素に対して適用可能であると考えられるため、汎用性の高いタンパク質の耐熱化手法を開発できたといえる。本研究成果はプロジェクト3年目に学術論文としてまとめて成果を発表する予定である。また同時に、3年目には計画通り、酵素の基質特異性に関わるアミノ酸残基の同定と改変に向けたプロセス化に取り組む計画であり、特に、天然酵素は通常認識しない基質に対し選択性を持つ酵素の開発を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究プロジェクトの到達目標は、酵素活性を低下させずに、耐熱化と基質特異性改変を達成し、汎用かつ堅牢な酵素設計プロセスを提案することである。そのために、相同配列の取得と多重整列の統計解析から得られる変異制約パラメータを、タンパク質の設計プロセスに実装することで配列保存度と立体構造に基づく設計アルゴリズムを開発し、さらにウェット実験での結果を酵素設計プロセスへ還元することに取り組んでいる。 プロジェクト2年目はラジカルハロゲン化酵素をモデル酵素として、熱安定性に関わるアミノ酸残基を進化情報を利用して推定し、Rosettaソフトウェアによる構造シミュレーションを利用して構造安定化を実施する、酵素の耐熱化プロセスの構築を目指した。ウェットラボ実験と比較して効率的に変異体の安定性評価を実施できる構造シミュレーションであるが、タンパク質の配列空間は20のN乗で指数関数的に組み合わせが増えてしまい、探索範囲を絞り込む必要があった。本研究では、生物が進化の過程で保存してきたアミノ酸残基に着目することで、探索する配列空間を限定することで、着実に構造安定化を達成できるアミノ酸の組み合わせを見つける手法論を開発した。この手法は一般化できるため、他の酵素に対しても適用可能であり、応用範囲の手法を提案することに成功したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、当初の計画通り酵素の基質特異性変換のプロセス化に取り組む。これまでの研究で、ラジカルハロゲン化酵素の耐熱化と機械学習によるリンゴ酸酵素の補酵素特異性変換を達成できた。次年度は、まずこれまで培ってきた構造的に相同な酵素群間を比較することにより基質特異性に関わるアミノ酸残基を同定し、それを置換することで基質特異性変換に取り組み、その一般化を目指す。そして、天然には存在しない基質を対象にどうの様に変異をかければ基質特異性が変化するのか、またどれくらい元の基質と近いものであれば認識することができるのかを評価していく。これにより、酵素開発をするなかでの出発点となる酵素の選定ができるようになると見込んでおり、開発の成功の確度を向上させることができると期待している。本研究を遂行するにあたり、酵素の基質ポケットを詳細に調べる手法やタンパク質の柔軟性を考慮したドッキングシミュレーションを実施する必要があると考えており、新しい手法論にも着手する予定である。実際に設計した酵素変異体は、大腸菌にて発現・精製後、酵素活性を評価する。この際、多くの変異体を評価する必要があると考えており、そのために並列タンパク質精製手法の開発やクルード状態でのタンパク質定量法などの手法の開発も目指している。
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