研究課題/領域番号 |
22K04856
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28010:ナノ構造化学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
豊木 研太郎 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (90780007)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | カイラリティ / 貴金属アルミナイド / Rashba-Edelstein効果 / スピン流 / カイラル結晶 / スピンカロリトロニクス |
研究開始時の研究の概要 |
高効率な熱電変換のために,熱伝導に対するスイッチやダイオードと言った素子が求められている.本研究では,これらの素子に応用可能な,空間群P213に属する貴金属アルミナイドに着目する.空間群P213はカイラリティを有し,電流-スピン結合・フォノン-スピン結合に必要な対称性を満たす.しかし,左右カイラリティでその結合係数が符号反転するため,デバイス応用のためにはカイラリティの制御方法が必須となる.そこで,本研究では空間群P213に属するPtAl, Au4Al, Cu4Alに関して,薄膜系におけるカイラリティの制御方法として,既にカイラリティを有する水晶基板上での成長というアプローチで検討する.
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研究実績の概要 |
本研究では,カイラリティ選択的な合金薄膜の作製法の確立を目的として研究を進めている.このための手法として,カイラリティを持つ基板として水晶基板を選定し,水晶基板上での貴金属アルミナイドの成長様式に関して検討している.本年度は,特に貴金属アルミナイドのうち,Au4Alに着目して研究を進めた. まず,薄膜としてのAu4Al相の安定性に関して検討するために,石英ガラス基板上にAu/Al薄膜を作製し,熱処理を施すことで,相安定性に関して検討した.その結果,Au4Al相の生成には少なくとも,200 ℃以上の温度が必要なことがわかった.100 ℃以下の低い温度ではAu8Al3相およびFCC固溶体に相分離することがわかった.また,この相分離および,Au8Al3相の生成反応に関しては室温においても進むことが示唆された.すなわち,Au4Al相に関しては低温安定性が低く,室温においても年単位の時間経過によって,分解が進む可能性が示された. 水晶基板上における成長に関しては,特に基板前処理方法に関して検討した.このため,フッ酸処理および真空中・大気中熱処理などに関して検討した.その結果,水晶基板上において多結晶であるものの,Au4Al相の得られる条件として,フッ酸処理後の大気中熱処理が最適である可能性が示された.ただし,より詳細なフッ酸処理におけるpH,時間および,その後の熱処理の条件に関しては未だ検討の余地がある.また,エピタキシャル成長した薄膜が得られなかった原因としては,界面エネルギーが高いことなどが可能性として挙げられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的としている貴金属アルミナイド合金の一例としてAu4Alに関して検討し,その成長条件に関して明らかにすることが出来た.得られた知見において重要な点のうちの一つはAu4Al相の室温安定性の低さがある.これは,従来までの研究で一部は明らかにされていたものの,その観点はFCC相を出発として,金属間化合物相の生成に関してのみであった.一方で,本研究ではその逆反応に関しても僅かであるが確認した.これは,貴金属アルミナイドのカイラリティ制御という観点で非常に重要な知見である.また,基板処理条件に対して敏感に相構成が変化したことを合わせて考えると,極めて小さい界面エネルギー変化も相安定性に影響を与えうることという知見が得られたと言える.これは貴金属アルミナイドのカイラリティ制御が基板との界面エネルギーによって可能であることを示唆するものである.これらを総合して考えると,本研究は概ね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
本年度得られた研究成果として,Au4Al相の室温安定性の低さおよび水晶基板との界面エネルギーの高さが挙げられた.すなわち,より高品質な,特に水晶基板上でのエピタキシャル成長した,貴金属アルミナイド膜の作製においては,この課題に関して取り組む必要があることがわかった.そこで,今後の方針として,Ag-Al系のA13 Ag3Al相に関して取り組むこととする.この取り組みにおいて重要な点は,Au系と比べてAg系が差は小さいながらも,基板との濡れが改善する可能性があることにある.すなわち,Ag系の方が水晶基板との界面エネルギーが低いことが予想される.この観点に基づき,貴金属アルミナイドのカイラリティ制御という最終目的を見据え,以下の方針で研究を進める. まず,Au4Al相と同様に相安定性に関して検討するために,石英ガラス基板上での,組成と相構成の関係に関して検討する.これは,薄膜系においてA13 Ag3Al相の生成条件の検討に資することとなる.Au4Al系との大きな違いは,Au4Al相が所謂ラインコンパウンドである報告されていたのに対して,A13 Ag3Al相は一定の組成幅を許容するため,その組成幅を薄膜系において決定することは重要である. また,水晶基板の前処理条件に関してはAu4Al系で取り組んだ実験においてある程度明らかになっているが,前述の通りエピタキシャル成長のためには改善の余地がある.この点に関してより詳細に検討していく.特に,フッ酸処理条件におけるpHに関して詳細に検討していく予定である.
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