研究課題/領域番号 |
22K04857
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28010:ナノ構造化学関連
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
大谷 政孝 高知工科大学, 理工学群, 教授 (20585004)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 配位高分子 / 金属有機構造体 / 原子分解能電子顕微鏡 / 電子線回折 / 電子線損傷 / 電子線結晶構造解析 / ホスト-ゲスト相互作用 / 照射損傷 / 原子分解能分析電子顕微鏡 / 局所構造解析 / マイクロ電子線回折 |
研究開始時の研究の概要 |
配位高分子(PCP)は金属イオンと有機配位子の組み合わせから様々な多孔質空間を創生することが可能であり、新たな多孔性材料として期待されている。一方、実際に合成されるPCPは、その合成過程の違いで結晶サイズや形態は異なり、表層近傍あるいは内部に様々な構造欠陥を含む。そのため、PCPのガス吸着特性や触媒性能の本質的理解には、局所的かつ過渡的な空間構造が結晶全体の特性にどのような影響を与えているかを明らかにする必要がある。本研究では、原子分解能電子顕微鏡を駆使し、局所的・過渡的に変化する分子空間の構造解析手法を確立することで、PCP結晶の分子空間の物理的・化学的性質の起源を明らかにすることを目指す。
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研究実績の概要 |
本申請課題では、原子分解能電子顕微鏡を駆使し、局所的・過渡的に変化する分子空間の構造解析手法を確立することで、配位高分子/金属有機構造体(PCP/MOF)結晶の分子空間が示す物理的・化学的性質の起源を明らかにすることを目指している。これまでに、低線量電子線照射下でのPCP/MOFナノ結晶の電子線回折測定における加速電圧・電子線照射量の影響を系統的に評価し、細孔空間の大きさ(被占有体積)と電子線照射損傷に伴う結晶崩壊速度の関係性を明らかにした(Chem. Commun. 2023, 59, 5039-5042, DOI: 10.1039/D3CC00506B)。特に、耐熱性の高い結晶であっても細孔容積の大きなPCP/MOF結晶では、低分子化合物の分子結晶よりも結晶崩壊速度が顕著に速いことが課題であった。2年目では、多孔性結晶における電子線照射損傷の低減または遅延を目的に、種々の化合物が結晶の細孔空間内へ充填された際の影響を詳細に調べた。具体的には、結晶形成過程での混合または含浸法により、低分子から分子量20,000程度の種々の化合物を結晶細孔内にゲストとして包接し、その電子線照射損傷速度を定量的に評価した。その結果、結晶内に包接された分子種やその充填量により、多孔性結晶の電子線照射損傷速度は変化することがわかった。一方、充填したゲストに含まれる元素の種類やゲストの充填量によっては、電子線回折像における非弾性散乱由来のバックグラウンドが顕著となった。一連の成果を踏まえ、次年度以降に多孔性結晶へのゲスト包接による電子線照射損傷低減の効果を明らかにすることで、電子線結晶構造解析への応用を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究計画の鍵となる原子分解能電子顕微鏡を駆使した配位高分子・金属有機構造体(PCP/MOF)ナノ結晶の局所構造解析において、結晶崩壊の低減・遅延は分析の成否を左右する重要な課題である。初年度から2年目での検討により、PCP/MOFを含む種々の結晶性材料に対する電子線照射条件の最適化はほぼ達成された。2年目の検討では、電子線照射により経時的に起こる損傷・結晶崩壊を低減・遅延する手法の確立を目指し、ゲスト分子の包接の効果に関して一定の成果が得られた。特に、包接した分子の種類やその充填量によって、多孔性結晶の結晶崩壊速度に顕著な違いが現れた点は、研究開始当初に想定していない重要な発見であったことから、当初計画以上の研究成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた成果を踏まえて、PCP/MOFナノ結晶に対する電子線照射の影響をさらに精査する。特に、電子線結晶構造解析に適用可能な汎用的手法を目指し、多孔性結晶における電子線照射損傷を低減・遅延する新たな手法の開発を目指す。これまでの検討から、PCP/MOFのような多孔性結晶において、電子線損傷を起因とする結晶崩壊速度が包接する分子種の影響を強く受けることが分かっている。この理由として、結晶内の金属イオン-有機配位子間の配位結合が周囲の包接ゲストとの相互作用により安定化または不安定化していることが考えられる。今後、ゲスト包接条件等のさらなる最適化・検証により、電子線損傷速度の低減・遅延の効果を明らかにすることができれば、電子線照射耐性の低い多孔性結晶に対して電子線結晶構造解析を適用可能とする新たな手法の開発につながると期待される。
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