研究課題/領域番号 |
22K04861
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28020:ナノ構造物理関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
南 英俊 筑波大学, 数理物質系, 講師 (00190702)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | ジョセフソン効果 / テラヘルツ波 / 高温超伝導 / 固有ジョセフソン接合 / 高温超伝導体 |
研究開始時の研究の概要 |
1ナノメートル程の薄い絶縁体を超伝導体で挟んだ構造をジョセフソン接合と呼ぶ。ジョセフソン接合に直流電圧を印加すると、ジョセフソン効果と呼ばれる、その電圧に比例した超高周波数の振動電流が発生する現象が起こる。絶対温度90度で超伝導状態となるBi2Sr2CaCu2O8+d結晶は、1.5 nmの周期でジョセフソン接合が積層した層状構造をしている。この研究では、電磁界シミュレーションによる素子設計によって、この物質内の多くの層と広い領域で振動電流のコヒーレンスの実現を目指す。放射するテラヘルツ波の強度をミリワット級に引き上げ、また、拡がり角度を数度以下に抑えた極めて高い指向性をもつ放射の実現を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、高温超伝導体Bi2Sr2CaCu2O8+d結晶をメサ型素子の大規模なアレイやフォトニック結晶構造に加工することで、結晶内で生じる超伝導電流、常伝導電流と変位電流の集団励起であるジョセフソンプラズマを、広い領域でコヒーレントに発生させることを目指す。それによって、放射される単色テラヘルツ波を増強することを目的とする。 昨年度の研究で、20個前後のメサ型素子からなるアレイ素子が作製できるようになり、また、大規模アレイ素子を駆動できるパルスバイアス測定システムを構築した。従来比で約10倍の電流を流すにもかかわらず、超伝導転移温度直下での動作や1 THzを超える周波数での発振が得られていた。また、放熱のため載せている高熱伝導性窓板による誘電体共振器アンテナ効果によって高い指向性が得られることを報告した。本年度はアレイ素子作製技術の改良とフォトニック結晶構造素子の試作を行った。また昨年度末に、本素子によって周波数掃引が可能であることを見出したが、本年度はその特性の改善に向けた研究を行った。 アレイの規模が大きくなったため、これまでの素子構成では電気的接続、熱的接触の再現性が難しくなっていた。そこで素子作製法の改良を行い、歩留まり・再現性を向上させることに成功した。これにより研究の効率性が上がり、また、より大規模なアレイ素子を作製するための基礎固めができた。現在のテラヘルツ技術では難しい高速・高繰り返し周波数での周波数掃引が本素子によって可能であるが、周波数掃引時の発振周波数の分裂と強度ムラという課題があった。本年度の実験研究によって、アレイ化による高強度化とアレイ素子における単色性を両立させるために必要な、メサ型素子間の位相同期(広い領域でのジョセフソンプラズマのコヒーレンス)についての知見を得ることができ、上記の課題を克服するための方策を立てることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の研究で、それまで報告のなかった20個前後のメサ型素子からなる大型のアレイ素子が作製できるようになり、広い領域でのジョセフソンプラズマのコヒーレンスを実現できることを見出した。また、このアレイ素子とこちらも我々が最初となるパルスバイアス駆動によって、現在のテラヘルツ技術では難しい高速・高繰り返し周波数での周波数掃引が可能であることを見出した。本年度は、素子構造・構成と作製工程の変更によってメサ型アレイ素子作製の歩留まりを向上させることに成功し、再現性良く高強度なテラヘルツ波放射を得ることができるようになった。より大規模なアレイ素子を作製するための基礎固めができ、また、この作製技術を用いることでフォトニック結晶構造素子の試作に踏み出せたことで、広い領域でのジョセフソンプラズマのコヒーレンスの実現と、それによるテラヘルツ波発振素子としての性能向上に向けてさらに前進した。また、この素子作製技術の開発によって研究の効率性が上がったことで、周波数掃引発振素子の実用化に向けて、アレイ内のメサ型素子間の位相同期について重要な知見を得ることができ周波数掃引特性の改善研究を進めることができた。 したがって、当初計画した研究はおおむね順調に進んでいると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画を進めるために、さらに大規模なアレイ素子の作製を行いメサ型素子間の位相同期について理解を深めるとともに、放射の高効率化を図るためアレイ素子に特化したアンテナ構造を付加することでテラヘルツ放射の高強度化を図る。フォトニック結晶構造素子の作製と研究をさらに進め、これまでにない機構による結晶面方向のジョセフソンプラズマのコヒーレンスの可能性を調べる。 本研究課題の当初のテーマからは外れるが、本素子唯一無二の技術となる高速・高繰り返し周波数での周波数掃引素子の実現に向けて、周波数ギャップの解消と単色化の性能向上を強力に推進する。最終年度であるので、周波数掃引装置の実用化に向けた完全な低温寒剤フリーシステムの構築を行う。
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