研究課題/領域番号 |
22K04865
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28020:ナノ構造物理関連
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
根岸 良太 東洋大学, 理工学部, 教授 (30381586)
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研究分担者 |
有江 隆之 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (80533017)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | グラフェン / 結晶成長 / 酸化グラフェン / 多層グラフェン / 乱層積層 / 還元 / 表面増強ラマン散乱 / ナノギャップ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、乱層積層した多層グラフェンのナノギャップ構造からなるメタマテリアルの形成法を確立し、局所プラズモン効果を利用したテラヘルツ帯の表面増強ラマン散乱(SERS)デバイスを開発する。ナノギャップ構造は、局所的な電場勾配により、SERSシグナルを単分子レベルまで増強できる特徴を持つ。この目標達成に向けて、申請者が開発した要素技術である、(1)超高温装置による乱層積層した多層グラフェンの合成法および、(2)分子リソグラフィーによるナノギャップ形成法との技術融合を図る。テラヘルツ帯の超高感度SERSデバイスを創成することで、分子の高次構造の分析が可能なバイオセンサーへの応用・発展が期待される。
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研究実績の概要 |
本研究では、乱層積層した多層グラフェンのナノギャップ構造からなるメタマテリアルの形成法を確立し、局所プラズモン効果を利用したテラヘルツ帯の表面増強ラマン散乱(SERS)デバイスを開発する。2022年度では、反応性ガス雰囲気における超高温加熱装置を開発した。これにより、次の2つのアプローチから乱層積層した多層グラフェンの合成を検討した。実施項目(1)固体テンプレートを用いた気相-固相成長による多層グラフェンの合成、実施項目(2)酸化グラフェンの還元・構造修復による多層グラフェンの合成。 実施項目(1)において、固体テンプレートとしてグラフェンと同じ周期構造を有する六方晶窒化ホウ素フレークを固体テンプレートとして、エタノールガスをカーボン原料とした1300℃の加熱処理により、直径100nmを超えるグラフェンの2次元の成長に成功した。2次元島の形状が六角形であることからジグザグ型のエッジ終端面を構成しており、単結晶であることを示唆している。六方晶窒化ホウ素上にヘテロファンデルワールスエピタキシーにより初めてグラフェンが結晶成長することを明らかにした。項目(2)では、酸化グラフェンの加熱還元処理により、多層グラフェンの薄膜の合成を実施した。ここで、項目(1)に対して1/10以下の低濃度のエタノールガスを供給することにより、酸化過程で生成した欠陥構造が効率的に修復することを見出した。その結果、還元したグラフェン電界効果型トランジスタの移動度が300cm2/Vs以上を示し、極めて優れた伝導特性が得られることを明らかにした。角度分解型光電子分光測定による還元型酸化グラフェン薄膜の電子構造解析から、線形性の分散特性を確認した。これらの結果は、本研究の目指す多層グラフェンがテラヘルツデバイスへの応用に有効であることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、合成した多層グラフェン薄膜を、ナノギャップを有するメタマテリアル構造へと成型する技術を開発する。これらをアレイ化したSERSデバイスの光学特性や局所表面プラズモンを観察することで、テラヘルツ帯の(局所)プラズモン特性とデバイスの幾何学や材料の物性との相関を明らかにする。これにより、テラヘルツ帯SERSデバイス応用に向けた材料と構造の設計指針を獲得する。この目標達成に向けて以下の2つの研究項目を設定し、それぞれの項目で問題点を精査し、フィードバックすることで効率的に研究を推進する。 項目1:乱層積層した多層グラフェンの合成 項目2:乱層積層した多層グラフェンSERSデバイスの作製、およびデバイスの特性評価 2022年度では、反応性ガス雰囲気での赤外線高温加熱炉を開発して、固体テンプレートによる気相-固相成長および、酸化グラフェン薄膜の還元による2つのアプローチにより多層グラフェンの合成を検討した。その結果、いずれの手法においても、高結晶性の乱層積層した多層グラフェンの合成に成功し、当初の計画通り、順調に研究を進めることができた。とりわけ、計画当初にはなかった六方晶窒化ホウ素フレークを固体テンプレートとして用いることで、グラフェンがファンデルワールスヘテロエピタキシー成長することを見出した成果は、想定以上の結果である。六方晶窒化ホウ素は絶縁材料のため、電子デバイス応用に向けて大きな可能性を秘めた結晶成長法と言える。
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今後の研究の推進方策 |
固体テンプレートを用いた多層グラフェンの結晶成長や、酸化グラフェンを利用した還元型多層グラフェンの合成、いずれの手法においても、グラフェンのエッジ端の活性化が重要であることを見出している。そこで2023年度では、ガスの供給システムにエッチング工程を導入し、アモルファス構造などを選択的に除去することで、多層グラフェン薄膜の更なる高結晶化を進める計画である。多層グラフェン薄膜をチャネルとした電界効果型トランジスタの特性から、線形性分散に由来した量子伝導の観察を実施する。また、当初の計画通り、得られた多層グラフェン薄膜の表面増強ラマン散乱素子構造への成型技術の開拓も着手する。ここでは、長年当研究室で開発してきた分子リソグラフィー法を利用したナノギャップ構造を鋳型に利用する。課題は、金属材料とカーボン材料との密着性であり、APTMS処理など密着性を向上させるための表面処理を導入する。
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