研究課題/領域番号 |
22K04871
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28030:ナノ材料科学関連
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
日原 岳彦 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60324480)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ナノ粒子 / 燃料電池 / 触媒 / ナノコンポジット / 交換結合 / Pt / Ce / FePt / 形態制御 / 固体高分子形燃料電池 / ナノコンポジット磁石 |
研究開始時の研究の概要 |
ナノ粒子の気相合成プロセスであるプラズマ・ガス凝縮(PGC)法を用い、燃料電池の電極触媒の作製と触媒特性の評価、および、交換結合磁石のモデル物質の作製と磁気特性の評価を実施する。PGC法は、スパッタリング法と希ガス中凝縮法を組み合わせたユニークなプロセスであり、高融点金属元素など気化しにくい材料にも適用可能なこと、スパッタリング電力やAr分圧をパラメータとして合金粒子の組成やサイズ制御が容易であることに特徴がある。さらに、雰囲気ガスを用いるプロセス制御によりナノ粒子の表面層を精密に制御し、ナノ粒子を電場で加速させて堆積し、粒子の充填率をコントロールすることにより、革新的機能材料の創製を目指す。
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研究実績の概要 |
気相合成プロセスのプラズマ・ガス凝縮法により作製したナノ粒子混合堆積膜に、粒子界面の制御による新たな機能を付与することを目的として、2年目の研究を実施した。 (1)燃料電池の電極触媒に使用されるPtの代替材料として4、5族遷移金属の酸化物に注目した。作製したPt/NbOx複合ナノ粒子のTEM像から、Nb組成の減少に伴い、Pt-Nb合金ナノ粒子の表面に形成されていた酸化物が消失し、合金ナノ粒子の表面が露出した。これにより、最大電力密度が大きく向上した。また、I-P測定からNbとOの比と最大電力密度に相関がみられ、Nb:O = 1:2に近くなるほど性能が飛躍的に向上した。Arイオンを照射した担体に堆積したPtナノ粒子は格子収縮が見られ、酸素種との吸着が弱まることで最大電力密度が向上した。 (2)本年は、FePt/Fe系にCoを加えた三元系ナノコンポジット磁石(H相:L10-(Fe-Co)Pt、S相:Fe-Co)を作製し、磁気特性の評価を行いながら、最適な試料作製条件を特定することを目的とした。S相とH相の交換結合を制御するため、バイアス電圧Va = -2kVを印加した基板ホルダー上の石英基板に両相を混合堆積させた。L10規則相を得るために熱処理を行うと、粒子が凝集して保磁力が低下する。この問題を解決するため、RTA処理(Rapid Thermal Anneal:短時間熱処理)を行った。粒子の凝集を最低限に抑えながら、規則化が進行する短時間の熱処理条件を調査した結果、昇温速度が75℃/minより速い場合は規則化が不十分であり、75℃/minより遅い場合は粒子の凝集による保磁力の低下が確認された。本研究で得られた試料のうち最大エネルギー積が最も大きな試料は、基板バイアスVa = -25kVの試料で、その値は4.1MGOeであり、Va = 0kVの試料に比べ、約2.5倍の向上を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題の目的は、コア・シェル粒子の形成機構を明らかにし、コア・シェル粒子の設計と合成を確実に行えるよう気相合成プロセスを深化させること、また、異種粒子の混合堆積と粒子界面の制御により、ナノ粒子に機能を付与することである。 (1)コア・シェル粒子の作製と燃料電池電極触媒特性の評価では、Pt触媒の代替材料として4、5族遷移金属の酸化物に注目したが、4、5族遷移金属の酸化物は、Ptよりも酸性下での耐久性に優れており、特にNbOxは優れたORR特性も持つためである。本研究では、Pt/NbOx コア・シェル粒子の作製条件を明らかにし、さらにNbOx 被覆率の制御に成功した。これにより、最大電力密度が大きく向上した。また、当初の研究計画では想定していなかったが、担体であるカーボンペーパー(CP)にArイオンを照射することで欠陥導入を行い、触媒機能を向上させることに成功した。 (2)軟磁性と硬磁性のコア・シェル型ナノ粒子、あるいは各磁性粒子の混合堆積膜から構成される交換結合磁石のモデル物質の作製と磁気特性評価では、粒子の凝集を最低限に抑え、且つ、規則化を進行させるRTA処理による熱処理条件を詳細に調査した。その結果、熱処理温度が500、及び600℃では規則化が不十分であり、800℃では粒子の凝集が確認された。昇温速度については、75℃/minより速い場合は規則化が不十分であり、75℃/minより遅い場合は粒子の凝集による保磁力の低下が確認された。保持時間については、10 minで磁化曲線に肩がみられるものの保磁力が最大となることが判明した。 以上、当初の研究目的を十分に達成し、次の段階に研究を進めさせることができたため、当初の研究計画以上に研究が進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況で述べたように、本研究課題は当初計画以上に進展している。このため、申請時の研究計画と並行して研究遂行中に着想を得た以下の研究を実施する。 (1)コア・シェル粒子の作製と燃料電池電極触媒特性の評価では、カソード触媒としてPt触媒よりも発電性能や耐久性に優れているFe-Coに第3元素を添加すること、また、カーボン担体にイオン照射で欠陥を誘起することで、さらなる機能向上を目指す。Pt-Co合金ナノ粒子では、Coの不均一性を制御しながら触媒機能との相関を明らかにし、余力があれば、第3元素を添加した際の酸化耐性を調査する予定である。さらに、カーボン担体に替えて、グラフェン転写膜上に触媒を担持させ、炭素表面のπ共役系電子との相互作用により、Ptの電子状態を制御した試料の評価を行う。 (2)軟磁性と硬磁性による交換結合磁石のモデル物質の作製と磁気特性評価では、発展研究として量産化を視野に入れ、昨年計画を立てたメカニカルミリングによるL10-FePt以外の硬質磁性ナノ粒子の合成を継続する。これまで、Fe14W2N2の合成を塩化アンモニウムと硝酸アンモニウムを窒素源としたメカノケミカル法で試みたところ、Feの窒化物形成は確認されたが、Wとの合金化が困難であった。原料粉末の硬度差がミリングによる合金化を阻害していると考えられたため、本年は出発原料をFe-W合金として窒化物の合成に挑戦する。研究が計画通りに進まなかった場合に備え、メカニカルミリングによるL10-FeNiの合成プロセスの検討を並行して行う。FeNiの規則化温度は320℃以下と低く、拡散を伴う規則化は天文学的な時間が必要なため困難であるが、ミリングにより非平衡に格子欠陥が導入されると拡散係数が大きくなる。さらに、第3元素の添加により誘起される格子歪みも同様の効果が得られる。この方針の下で規則化の可能性を検討したい。
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